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2023年1月11日技術ブログ

Decision Intelligence ~データ活用による未来の意思決定~

最善な意思決定を実現するためのフレームワークと活動はDecision Intelligenceと呼ばれ、最新のITトレンドである。本稿では、その概要や解決する課題、効果を解説し、未来の意思決定の姿について考察する。
目次

Decision Intelligenceとは何か?

Decision Intelligenceは、Lorien Pratt氏(※1)が提唱した概念で、最善な意思決定を実施するためのフレームワーク、およびそのベストプラクティスとなる活動が含む、データサイエンスを社会科学、意思決定理論、経営科学などの理論で補強する新たな工学分野と言われています。

図1:人間の意思決定の仕組みのイメージ(出典:Quantellia LLCをもとに作成)

図1:人間の意思決定の仕組みのイメージ(出典:Quantellia LLCをもとに作成)

一般に、人は行動がどのように結果につながるのか、外部要因や中間指標を踏まえて思考し、その結果に基づいて様々な選択肢から意思を決定します(図1)。Decision Intelligenceでは、この一連の意思決定プロセスについて、人間とデータ、人工知能(AI)や機械学習(ML)を接続することで、人、または機械(AIやシステムなど)による最善の意思決定を実現します。

(※1)Lorien Pratt博士

Quantellia Inc.の創設者兼チーフサイエンティスト
Machine Learning Transfer と Decision Intelligenceという2つの分野を発明したアメリカのコンピュータ科学者。1988年以来、学者、教授、業界アナリスト、実践的なデータサイエンティストとして、機械学習の利用に関する研究を行ってきたソートリーダー。TEDxなどの講演多数。

人工知能と意思決定の関わり

意思決定の高度化を目的の一つとして、データサイエンス技術は進化してきましたが、Decision Intelligenceとの違いは何でしょうか。
データサイエンスの先端技術であるAI/MLは、優れた予測結果を出力するコンポーネントです。しかし単独のコンポーネントによる予測結果だけでは、複雑な要素が絡み合った事象に対して適切な判断を下すには限界があります。最善な意思決定を実施するためには、AI/MLや人、システムといった意思決定に関わる一連のコンポーネント間の相互作用を洗い出し、因果関係を踏まえ、選択肢を求め、いずれかに決定するというプロセスが重要となります。

この意思決定プロセスを、工学的フレームワークを用いて透明化を図り、AI/ML、数理モデルなどによる自動化処理まで行うという一連の活動がDecision Intelligenceの全体像と言えます。

Decision Intelligenceにおける意思決定の設計

では、Decision Intelligenceの実現の1st Stepとされる活動は何でしょうか。
Decision Intelligenceでは、対象とする意思決定に関わる最初の行動から結果までの一連の連鎖について、外部要因を踏まえてモデリングすることで、因果関係を設計します。さらにその要素間のつながりについて数学的な関係性を用いてモデリングしたり、従業員の士気、知的資本、ブランド認知など、従来の定量モデルや財務モデルでは捉えられない「ソフト」な要素をデータからモデリングしたりすることで、因果関係を正確にしていきます(図2)。

図2:意思決定における因果関係のリンク(例)(出典:Quantellia LLC)

図2:意思決定における因果関係のリンク(例)(出典:Quantellia LLC)

因果関係のモデルが確からしくなった時点で、アウトカムに至る一連のデータや予測処理、確率モデルらを接続するIT基盤を整備し、アウトカムをシミュレーションし、最適な選択肢を決定します。
繰り返し発生する意思決定ケースであれば、これら意思決定プロセスを支える一連の処理を可能な限り自動化することで、意思決定の精度とスピードを向上することが可能になります。

企業活動におけるDecision Intelligenceの提供価値

Decision Intelligenceの活用範囲はどう考えられているでしょうか。Decision Intelligenceは商品のリコメンドといった問題から企業のサステナブル経営といった複雑な問題の意思決定の多くを解決すると期待されています。
図3に示すように、企業活動における意思決定は戦略的、戦術的、業務上のデシジョンに大別できます。

経営層によってなされる戦略的デシジョンは、一度の決定による金額的インパクトが大きく、高いビジネス価値がありますが、反復性がなく、機械による意思決定の自動化は困難であるため、Decision Intelligenceは経営層の意思決定を部分的に「支援する」位置づけとなります。

一方、業務上のデシジョンは、一度の決定によるビジネス価値は高くはありませんが、業務量が多ければ高いビジネス価値を生みます。また、反復性が高いため、機械による「自動化」に適していると言えます。

その中間である戦術的デシジョンは双方の要素を併せ持っています。すなわち、反復頻度はある程度ありますが、複雑性があり、完全な自動化は困難です。この場合、Decision Intelligenceは意思決定者を「拡張する」位置づけとなります。

Decision Intelligenceを導入する上では、対象となる分野の意思決定レベルとビジネス価値などに応じて、「自動化」「拡張」「支援」を選択することが重要と言えます。

図3:意思決定レベルによる違い

図3:意思決定レベルによる違い

Decision Intelligenceでどのような課題解決ができるのか?

Decision Intelligenceは最善な意思決定の実現だけが価値でしょうか。
多くの企業では、どの意思決定に使うデータなのかの見極めなく、ビッグデータ収集にコストをかけ、ワンショットの分析をしてしまうことは珍しくないと想定されます。Decision Intelligenceでは意思決定プロセスに必要なリソース(データ)を明確にするため、データマネジメントについてもコストパフォーマンス向上が期待できます。
また、因果関係のモデル化を通じて、データドリブン思考でビジネス課題の解決に資するデータ活用を推進し、分析活動の付加価値を高めることも可能であると考えられます。

Decision Intelligenceにより、データ活用をし、企業の様々な人材が一体となって複雑な意思決定にも自在に対応できる未来がすぐそこに来ています。

Decision Intelligenceをより詳しく知りたい方へ

新たなAIとデータ活用のトレンド、Decision Intelligenceの世界にご興味・ご関心をお持ちになられた方は是非、詳細を記した以下のホワイトペーパー(※2)をお読みください。

また、2022年11月にDecision Intelligence提唱者Lorien Pratt氏と筆者金子は、「第4回AI/IoTシステム安全性シンポジウム」にてDecision Intelligenceの活用について講演(※3)いたしました。講演の内容は以下よりご確認いただけます。

(※3)

「第4回AI/IoTシステム安全性シンポジウムWebサイト」(NTTデータ共催)
https://ai-iot-system-safsec.connpass.com/event/246280/
Lorien Pratt氏の招待講演資料:
【AIS11-01】Introduction to Decision Intelligence,
the 21st Century Technology From Automated Systems to Human / Computer Collaboration
https://ai-iot-system-safsec.connpass.com/event/246280/presentation/

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