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2023年4月4日事例を知る

社会課題解決こそ事業の原点—NTTデータのサステナビリティ経営への取り組み—

近年、企業には事業成長だけではなく、社会課題の解決や地球環境への貢献が求められるようになった。こうした中、サステナビリティ経営を推進するNTTデータは、テクノロジーを活用して社会全体のサステナビリティを加速させる取り組みに力を入れている。本稿では、『日経ESG』発行人の酒井耕一氏を招いて最新のサステナビリティ経営の傾向を紹介するとともに、NTTデータのサステナビリティ経営の考え方や、企業のサステナビリティをご支援する事例を紹介する。
目次

2023年サステナビリティ経営の傾向

近年、企業はサステナビリティへの取り組みが強く求められるようになった。『日経ESG』発行人の酒井耕一氏は、2023年のサステナビリティ経営の傾向として3つのポイントを挙げた。

1つ目は、企業の評価が決算数値だけではなく、持続可能な社会への取り組みを含めた総合評価に変わってきている点だ。

株式会社日経BP 酒井 耕一 氏

株式会社日経BP
酒井 耕一 氏

「企業や投資家は従来、財務諸表から読み取れる売上や利益などを重視していました。しかし近年は事業活動におけるCO2排出量の削減や再生可能エネルギーの利用、人的資本を活かす取り組みなど、非財務指標が評価の対象になっています。官公庁や証券取引所も企業を総合評価する方向に舵を切っており、今後、こうした動きはさらに加速していくでしょう」(酒井氏)

2つ目は、企業が全社横断での社会課題解決に向けた取り組みを求められるようになっている点だ。

「サステナビリティ推進は事業部ごとではなく、各事業部が協力し、全社横断で社会課題解決に取り組むことが重要です。従来は拠点数の多さや規模の大きさが企業の信頼の証でしたが、今後は国内外、本社支社問わず、どれだけ全社一丸となってサステナビリティに取り組んでいるかによって評価されるようになっていくと思います」(酒井氏)

そして3つ目は、自社の存在意義(パーパス)を重視し、独自のイノベーションを生み出す企業が増えている点だ。

「企業にとってはサステナビリティに取り組むこと自体が目的ではなく、それを通して社会課題を解決したり、イノベーションを起こしたりして、世の中に貢献することがゴールとなります。自社の存在意義に立ち返り、どんな社会課題を解決するために、何をしていくべきかを考えていくことが必要です。今後は独自のイノベーションを起こすための方式を、各社が真剣に考えて生み出していく流れが強まっていくでしょう」(酒井氏)

図1:2023年 サステナビリティ経営の傾向

図1:2023年 サステナビリティ経営の傾向

NTTデータが掲げるサステナビリティ経営

人口問題、気候変動、災害、感染症…。社会を取り巻く環境は大きく変化している。気候変動問題は深刻さを増し、社会のグリーン化が重要な社会課題となっている。社会を襲ったコロナ禍は、デジタル化の遅れや、サプライチェーンの課題など様々な問題を浮き彫りにした。

社会トレンドも変化している。人々の生活スタイルや価値観は多様化し、技術の進化を受けて「個」を捉えたサービスの展開も加速している。一方で「つながるモノの拡大」「地球環境の保全」など、企業が対応すべき課題やニーズは複雑化、多様化していく。解決すべき社会課題が蓄積していく中で、企業は変革を求められている。

2022年、NTTデータはサステナブルな社会の実現を目指し、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンを掲げた中期経営計画を打ち出した。これを実現するために「サステナブルな社会を支える企業の成長」「未来に向けた地球環境保全」「誰もが健康で幸福に暮らせる社会の実現」の3つを軸とし、そのうえでより具体的な9つの重要課題(マテリアリティ)を設定。社会、お客様に提供する価値を明確にし、事業を通じた価値創出をはじめとする様々な活動に取り組んでいる。

図2:NTTデータが目指すサステナブルな社会

図2:NTTデータが目指すサステナブルな社会

図3:事業を通して取り組む9つのマテリアリティ(重要課題)

図3:事業を通して取り組む9つのマテリアリティ(重要課題)

こうした背景について、NTTデータのサステナビリティ経営推進部長 冨岡洋子は次のように語る。

執行役員 コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部長 冨岡 洋子

執行役員 コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部長
冨岡 洋子

「企業はその企業ならではの価値を打ち出して社会課題の解決に貢献していかなければなりません。IT、デジタルの分野はあらゆる社会課題の解決を支える業種なので、NTTデータとして事業に注力するほどに社会に貢献できるという思いで取り組みを進めています。デジタルを活用した『つくる力』と『つなぐ力』でお客様の事業に貢献し、その事業を通して社会に貢献していくことが、我々の役割であると考えています」(冨岡)

DXを通じたサステナブルな社会の実現に向けて、NTTデータは大きく2つのアプローチで取り組んでいる。1つはDXの「つくる力」でお客様のサステナビリティを加速させること。もう1つが、DXの「つなぐ力」で社会全体のサステナビリティを加速させることだ。

企業の脱炭素を可視化する2つのソリューション

まず、企業のサステナビリティをDXで加速させる取り組みとして、冨岡はNTTデータが提供しているCO2排出量を可視化するソリューションの事例を紹介した。

企業が脱炭素に取り組むためには、まずは自社がどのくらいのCO2を排出しているかを把握しなければならない。こうした中で近年、企業のニーズが高まっているのが、サプライチェーンを含めた企業活動全体でのCO2排出量を知り、企業価値の向上につなげることと、自社製品やサービスに関わるCO2排出量を知り、製品競争力の強化につなげることだ。

図4:「CO2排出量可視化」2つのニーズ

図4:「CO2排出量可視化」2つのニーズ

NTTデータはCO2排出量に関する2つのニーズに対応するソリューションを提供している。

まず、企業全体のCO2排出量を可視化するソリューションの「C-Turtle」だ。サプライチェーン全体の中で自社がどのくらいCO2を排出しているかを自動的に計算して可視化。例えば、サプライチェーンの上流にある企業がCO2排出量を削減した場合、その製品を購入している自社もCO2排出量を削減できるなど、サプライチェーンの複雑な相関関係を反映できる。見えにくい部分までプラットフォーム上で管理できる点がメリットだ。

図5:CO2可視化ソリューション「C-Turtle」

図5:CO2可視化ソリューション「C-Turtle」

一方で、自社の製品やサービスがどのくらいのCO2を排出しているかを可視化するソリューションとして提供しているのが、「製品カーボンフットプリント管理基盤」だ。調達原料や外注加工を含んだ最終製品あたりのCO2排出量原単位をデジタルアセット化して一元管理し、連結ベースでリアルタイムに可視化することができる仕組み。旭化成と共同で開発し、2022年4月から旭化成で運用をスタート。旭化成は現在、約1万点の製品をこのプラットフォームで管理しているという。

図6:製品カーボンフットプリント管理基盤

図6:製品カーボンフットプリント管理基盤

こうした取り組みについて冨岡は「NTTデータはDXを活用したソリューションを提供し、企業が自社のサステナビリティを推進していくための支援をしていきます」と語る。

DXで社会全体をつなぎ、サステナビリティを加速させる

サステナビリティは企業単体ではなく、社会全体で取り組むべきテーマだ。社会全体のサステナビリティを加速させていくためには今後、様々なステークホルダーがつながることが重要で、テクノロジーがそのカギを握る。テクノロジーの進化が、個社だけでは実現できなかった課題解決、価値創出を可能にしている。では、テクノロジーを活用してつながることで、具体的にどのような価値を創出できるのか。

テクノロジーでステークホルダーをつなげ、社会課題解決に取り組んでいる事例として冨岡が紹介したのが、千葉県にある柏の葉スマートシティでのヘルスケアやウェルビーイング領域の取り組みだ。

柏の葉スマートシティでは、病院、企業、大学、行政などのステークホルダーが連携し、生活者の健康情報を共通のプラットフォーム上でシームレスに管理、活用する仕組みを構築。生活者の同意のもとにデータが共有され、研究開発や、病院での治療時、健康増進のための食事指導といったサービスに生かされている。

図7:柏の葉スマートシティでのデータ連携の事例

図7:柏の葉スマートシティでのデータ連携の事例

このほか、冨岡は「DXで社会がつながることで業務効率化や働き方改革にも寄与することができる」と語る。こうした事例の1つが、NTTデータが展開する行政と金融機関をつなぐサービス「pipitLINQ」だ。

行政と金融機関の間ではこれまで、年間約6,000万件もの預貯金照会の問合せを書面でやり取りしており、業務の負担になっていた。長年、デジタル化へのニーズは高かったものの、金融機関によって預貯金残高や取引履歴などのデータのフォーマットが異なっていたり、行政側も照会書面のフォーマットや運用ルールが違っていたりしたため、金融機関と行政を横断した統一的な照会・回答のデジタル化の実現は難易度がとても高かった。こうした状況を改善するために、NTTデータは行政、金融機関をはじめとする様々なステークホルダーと連携し、それぞれの要望を取り入れながら「pipitLINQ」というサービスを構築。「pipitLINQ」はセキュアな環境で統一フォーマットを用いて電子データによる預貯金などの照会ができるようにした。これによって行政で最大55%、金融機関で最大99%の作業時間削減を実現したという。

図8:行政と金融機関をつなぐ「pipitLINQ」

図8:行政と金融機関をつなぐ「pipitLINQ」

また、DXによって社会がシームレスにつながることは、災害時の対策強化や防災にも役立つ。NTTデータが提供するデジタル防災プラットフォーム「D-Resilio」では、中央省庁、地方自治体、医療機関、インフラ事業者、メディアといったあらゆるステークホルダーのデータやサービスをシームレスに連携。必要な情報の収集や意思決定を迅速に行い、すみやかに災害復旧に取り組めるようにサポートする。冨岡は、「災害時への対応も、サステナビリティを広く考えたときにデジタルで貢献できる価値の1つだと考えています」と語る。

図9:デジタル防災プラットフォーム「D-Resilio」

図9:デジタル防災プラットフォーム「D-Resilio」

こうしたNTTデータの考え方や取り組み事例を聞いた酒井氏は、「テクノロジーがサステナビリティに組み込まれていくことで社会課題の解決が加速していくと思います」と期待感を語った。

ガバナンスと価値創造のバランスを保ち、AIを積極的に活用

DXによるサステナビリティ推進に欠かせないのが、AIの技術だ。

「AIの活用領域は、金融、製造、流通サービスなど、ありとあらゆるところに広まってきています」(冨岡)

ただ、ビジネス、生活のあらゆるシーンでAIが活用されるようになる一方で、AIを活用することの課題も現れている。活用の仕方によっては、例えばマイノリティに差別的な判断をしてしまう、誤認逮捕、ディープフェイクによる偽情報の拡散など、人権侵害につながるリスクもある。AIを活用する当初は想定もしなかったようなことが起こり得るので、このような問題を回避するためにも、自主的に統制しなければならない。冨岡は、「ガバナンスをきかせたうえで、品質、倫理の観点から公平かつ健全にAIを活用して価値創造につなげることが大切です」と語る。

この点を踏まえ、NTTデータは2019年にAI活用指針を策定。2021年には「AIアドバイザリーボード」を立ち上げ、外部有識者の知見を取り入れてAIに関する様々な課題を議論している。冨岡は「ガバナンスがあってこそ、積極的な活用ができます。その両面を見据えながらサービスを提供していくことが、企業が果たすべき社会に対する責任です」と語る。

DXを活用して企業、社会全体のサステナビリティ推進を加速させていく。そのためにNTTデータとしてはサプライチェーン全体に対する働きかけや支援の提供を行っていく必要がある。冨岡は次のように述べた。

「NTTデータで設定した9つの重要課題には、それぞれリスクと機会があります。リスクを拡大しないように企業活動を進める必要がありますし、機会を活かすことができれば企業にとっては事業拡大につながるだけでなく、取り組むほどに社会が良くなっていきます。NTTデータは事業を通してお客様の成長と、その先にある社会課題の解決にしっかりと取り組んでいく考えです」(冨岡)

これを受けて、酒井氏は次のように締めくくった。

「Realizingは良い言葉ですよね。現状の把握、認識からすべて始まると思いますので、そこを起点に様々な社会課題の解決につながることを期待しています」(酒井氏)

本記事は、2023年1月24日、25日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2023での講演をもとに構成しています。

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