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2023年4月7日事例を知る

“金融×非金融”で新たな価値を創出するプラットフォームの可能性

地域社会、ひいては地域の中小企業が抱える多種多様な課題に対し、地方銀行・信用金庫といった地元の金融機関に求められる役割は大きい。中小企業が直面する課題は、そのまま地域の金融機関が直面する課題といって過言ではないだろう。
法人ビジネスプラットフォームは、地域金融機関が中小企業の課題を解決する提案活動を支援する。このプラットフォームに参加する三菱UFJ銀行、Business Tech、NTTデータ3社のキーパーソンに、同プラットフォームの意義と実現できること、そして、今後の展望について聞いてみたい。
目次

法改正を機に、パーパスに基づく地域活性の取り組みを促進

いま、銀行を取り巻く環境は急速に変化している。日本では低金利が長期化し、預金と貸出を中心とした伝統的ビジネスモデルでの成長は難しい。その一方で、デジタルシフトの波は金融機関にも押し寄せ、異業種からの参入が増加。顧客の行動やニーズも大きく変わり、従来の商品・サービスだけでは事業の発展が見込めない状況だ。

対して、地域の中堅中小企業は人手不足やコスト面の課題からデジタル化の波に乗り切れず、対応に苦心している。「当行も地域金融機関も、お客さまから業務デジタル化の相談を受ける機会が多くなっています」と、三菱UFJ銀行 法人・リテール企画部の大山 洋平 氏は語る。

株式会社 三菱UFJ銀行 法人・リテール企画部 企画グループ 調査役 大山 洋平 氏

株式会社 三菱UFJ銀行
法人・リテール企画部 企画グループ 調査役
大山 洋平 氏

こうしたなか、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2021年4月、あらゆる活動の指針となる「MUFG Way」を制定し、このなかで新たに「世界が進むチカラになる。」というパーパスを設定した。

さまざまな課題に悩む地域の活性化も、パーパスに基づきMUFGが積極的に取り組む活動の一つだ。代表的な施策には、「ALL-JAPAN観光立国ファンド」への出資や、大阪に開設した観光産業の会員制イノベーション創出拠点「MUIC Kansai」における産官学との連携がある。

これらに加え、2021年に施行された銀行法の改正による金融機関における非金融サービスの取り扱いが可能になったことが追い風となり、MUFGにおいては2021年11月、企業の多様なビジネス課題の解決を手掛けるBusiness Techをグループに迎え入れた。銀行法改正対応の第1弾案件として、Business Techが提供する非金融領域の問題解決プラットフォーム「ビジクル」の活用に取り組むことになった、と大山氏は解説する。

金融機関はお客さまのデジタル化はもちろん、事業承継、施設・設備の老朽化など、経営者の切実な悩みに接する立場にある。とりわけ地方銀行・信用金庫といった地域に根ざす金融機関は、日頃から多くの事業者の課題に関する相談を受け、解決につながる提案を行う立場だ。

ビジクルは、その解決に取り組む金融機関の行員を支援するプラットフォームである。仕組みとしては、経営課題を解決するソリューションをSaaSベンダー、コンサルティング会社、士業などがビジクルに“出品”。金融機関行員はお客さまのヒアリングをもとに、出品されたソリューションを活用して解決に向けた提案を行う。Business Tech CEOの三浦 一大 氏はこう説明する。

株式会社 Business Tech CEO 三浦 一大 氏

株式会社 Business Tech
CEO
三浦 一大 氏

「ビジクルのコンセプトは“経営課題を解決する提案クラウド”。デジタル技術は常に進化しており、情報のキャッチアップは大変な作業ですが、ビジクルを使えばお客さまの課題に合わせた最適なソリューションを提案することが可能になります」(三浦氏)

一方、スタートアップ企業やベンチャー企業はWebを駆使してユーザーに働きかけるのは得意だが、地域にはWebで接点を持てない企業も数多く存在する。ビジクルなら出品側も、自ら開拓できないところに金融機関のネットワークを活用してアプローチでき、地域企業の経営課題と出品事業者のソリューションのマッチングを実現できる。

NTTデータのポータルサービスを活用したビジネスプラットフォームが始動

このビジクルと、三菱UFJ銀行の対面・非対面チャネルの運営ノウハウ、さらに金融機関とお客さまをつなぎ多彩なサービス提供を可能とするNTTデータの法人向けポータルサービス「BizSOL_Square」、Salesforceの顧客関係管理(CRM)システムの連携により、非金融領域も含めた新たな総合金融サービスを実現するために立ち上がったのが、4社協業の地域金融機関向けビジネスプラットフォームだ。地域金融機関は4社のサービスやソリューションを同ビジネスプラットフォーム上から一括して活用することで、お客さまの課題解決に向けた提案活動強化が可能となる。

図1:ビジネスプラットフォームの構成

図1:ビジネスプラットフォームの構成

同プラットフォームの基点となるBizSOL_Squareが生まれた背景や概要について、NTTデータ e-ビジネス事業部の平井 裕介は次のように語る。

第三金融事業本部 e-ビジネス事業部 e-ビジネス営業統括部 e-ビジネス商品企画営業担当部長 平井 裕介

第三金融事業本部 e-ビジネス事業部 e-ビジネス営業統括部
e-ビジネス商品企画営業担当部長
平井 裕介

「厳しい事業環境のなか、コロナ禍を受けた行動変容もあり、金融機関・顧客企業ともにデジタル化が求められています。本サービスにより、金融機関とお客さま企業の接点としてオフラインの対面だけではなく、オンラインの非対面という選択肢の提供が可能になり、顧客体験の向上が実現できます。さらに、金融機関は業務のデジタル化により、店舗における事務処理削減や人的資源の有効活用を実現できるのです」(平井)

図2:BizSOL_Squareの構成

図2:BizSOL_Squareの構成

このコンセプトにはすでに多くの金融機関が共鳴し、現時点で地方銀行12行が利用。今後利用を始める金融機関も多く控えている状況だという。

金融イノベーション本部で三菱UFJ銀行の担当営業を務める吉田 健志が、同サービスでNTTデータが発揮できる強みについて話す。

金融イノベーション本部 グローバルカスタマーサクセス室 BX統括部 コンサル&セールス担当 部長 吉田 健志

金融イノベーション本部 グローバルカスタマーサクセス室 BX統括部
コンサル&セールス担当 部長
吉田 健志

「金融機関向けのビッグデータ基盤構築、およびその基盤を使ったデータ活用に実績があるのは当社の強みです。MUFGが2017年に“クラウドファースト”を宣言し、取り組みを始めたビッグデータ基盤構築にも当社は携わり、現在もこの基盤に集まったデータを営業店に還元するための支援をしています」(吉田)

吉田の話にあるように、MUFGとNTTデータはデータ活用の分野でつながりがあり、協業で実現できる価値について情報交換を続けていたという。そのなかで、地域の中小企業向けに非金融も含めたビジネスを広げていく話が持ち上がり、協業の基盤としてBizSOL_Squareが浮上した。

さらにその先、今回のビジネスプラットフォームへと話が発展した契機は、Business TechがMUFGに加わったことだ。「三菱UFJ銀行とBusiness Tech、そしてNTTデータのリレーションを活用すれば、地域金融機関による顧客企業の課題解決支援に役立つ取り組みができるのではとのアイデアが生まれ、この3社にセールスフォース・ジャパンも加えた4社協業の枠組みができあがりました」(吉田)

“金融×非金融”の新たな価値を創出・最大化していく道筋とは

このビジネスプラットフォームは一つのパッケージ化されたサービスではなく、4社のソリューションを一括利用できる環境を整備したもので、4社それぞれに役割がある。Business Techはビジクル、NTTデータはBizSOL_Square、セールスフォース・ジャパンはCRMという商品提供が役割だが、三菱UFJ銀行の役割は何か。

「銀行は他の3社のような具体的ツールを持っているわけではなく、当行が持つネットワークをいかに有効活用していけるかがポイントでした。そこで、地域金融機関が集まる場で4社協業の取り組みを案内するとともに、お客さま紹介など各社が提案しやすい素地づくりに注力。プロジェクトの円滑な推進に力を入れました」(大山氏)

三浦氏は「ビジクルとBizSOL_Squareの接点部分でユーザーが使いやすいように工夫し、より価値の高いフィードバックを生み出せる情報連携にも注力しました」と振り返る。さらに吉田は「中堅中小企業が具体的に何に悩み、そこに銀行がどうアプローチできているのかを調査し、各社の強みを生かして地域金融機関に提供できる付加価値について4社で徹底的にディスカッションしました」と明かす。

こうした道筋を経て2022年6月、同ビジネスプラットフォームの提供が開始された。4社協業の目的は、「プラットフォーム上でデータを一元管理し、そのデータを分析することで金融機関の提案を高度化させること」(大山氏)。

この4社協業によりビジクルの導入社数は順調に増えており、現在20社以上が導入している。本プラットフォームによる地域事業者の経営課題解決、ひいては地域創生の実現は確実に進み始めている。また、利用金融機関・地域事業者の増加に伴い、データの蓄積も加速している。

そのなかで、三菱UFJ銀行としては「データ分析・システム連携の次のステージに向け準備を進めています。2023年春、三菱UFJ銀行が提供する法人ポータルサイト・MUFG Bizにビジクルを埋め込み、お客さまがポータル経由でビジクルに直接アクセスできるかたちに変わるので、データの蓄積をさらに進めていきたいですね」と大山氏は語る。

三浦氏は「これまでビジクルは金融機関の営業向け提案支援ツールでしたが、MUFG Bizとビジクルの連携で金融機関と取引のある事業者に経営支援を直接提供するサービスが始まります。これにより、事業者はオンラインとオフラインの両接点から経営支援を受けられ、利便性が高まります。また金融機関は、マルチな接点で得た事業者の経営課題に関する情報を一元化し、経営支援力向上を期待できます」と今後の展望を披露する。そのうえで、ビジクルに蓄積される情報をBizSOL_SquareやCRMと連携し、データ利活用の価値をさらに高めていくのがこれからの役割だと話す。

NTTデータとしては、今後どのように関わっていくのか。吉田は「ビジクルは三菱UFJ銀行も活用しています。その取り組みを支援しオンラインとオフラインが融合した法人営業の成功モデルを作り上げて、それをこのビジネスプラットフォームに横展開することで、地域金融機関に還元し、地域の活性化に貢献していきます」と語る。また平井は「2024年1月、多種多様な企業ニーズにお応えする重要なプラットフォームに飛躍するため、操作性向上、マルチデバイス化、耐障害性向上を実現するBizSOL_Squareのリニューアルを実施予定です。“金融×非金融”による提供価値の最大化に向け、今後も取り組んでいきます」と話し、4社協業の一層の強化に向け意欲を示した。

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