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2023年4月27日事例を知る

ドライバーのよりよい移動体験を実現
支えるのはトヨタコネクティッドのコールセンターシステム

自動車のあり方が大きく変わりゆくなか、新しい移動体験をいかにつくり上げ、提供していくかは、自動車業界における大きなテーマだ。トヨタ自動車ユーザー向けのモビリティサービスなどを手掛けるトヨタコネクティッドは、ドライバー向け有人サポートサービスの提供価値向上に取り組んでいる。よりよい移動体験の提供をめざし、NTTデータとともに実施したコールセンターシステム刷新プロジェクトに迫る。
目次

トヨタユーザーから高く評価される通信サービスの有人サポート

“移動”に対する考え方が変化を見せ始めた。単にある場所から別の場所へと動くだけでなく、そこに利便性や楽しさ、快適さ、安全性といった、移動体験への付加価値が求められるようになっている。インターネットと自動車の融合を視野に設立されたトヨタコネクティッドは、前身の時代からドライバーに多彩なコンテンツやサポートを提供するテレマティクスサービス「G-BOOK」を手掛けてきた。そのG-BOOKのサービスを受け継ぎ、提供する付加価値を強化、2014年にスタートしたのが「T-Connect」だ。

オンラインのナビゲーション機能に加えて、交通情報、天気予報・イベントなど多彩な情報がタイムリーに提供される。学習能力を持つAIのエージェントと対話しながら目的地を設定できるほか、SNSとの連携やマイカーのリモートメンテナンス・防犯・緊急通報といった安全安心に関わる機能も活用でき、ナビ画面のわかりやすさや操作性の高さにも定評がある。

トヨタコネクティッド株式会社 エンゲージメント推進部 部長 宮川 和隆 氏

トヨタコネクティッド株式会社
エンゲージメント推進部 部長
宮川 和隆 氏

このT-Connectには、専用オペレーターが24時間365日で対応する有人サポートも用意されている。車内からオペレーターを呼び出し、行きたい場所や目的を伝えると、希望の目的地の設定をはじめとするサポートが提供される便利なサービスだ。同社は本サービスを国内複数拠点のコールセンターで運用。ユーザーからコールが入ると、人員の稼働状況や時間帯に応じて適切な拠点のオペレーターにつながる仕組みになっている。

コールセンターの現場のマネジメントをはじめ、顧客接点の価値をより高めていく役割を担うエンゲージメント推進部 部長の宮川 和隆 氏は「T-Connectではデータを活用する多彩なサービスを用意しています。そのなかで最もユーザーからの評価が高いのが、オペレーターが対応する有人サポートです」と語る。

コールセンターにおけるオペレーター業務負荷とデータ活用の課題

ところが、このコールセンターには運営上の課題もあった。宮川氏がつづける。

「もともとCRM(顧客関係管理)のパッケージ内に、目的地設定をはじめとするクルマとの連携機能をカスタマイズで組み込んでいったものでした。そのため本システムを改修するには、クルマとの連携システムも同時に改修しなければならず、モビリティサービスの変化に応じた機能追加・変更が簡単には行えない状況でした。そして、システムで実現できない機能は運用でカバーせざるを得ず、オペレーターの業務負荷も高まっていたのです」(宮川氏)

オペレーターの仕事は本来、顧客との会話に力を注ぎ、期待を超えるサービスを提供すること。ところが、使いにくいシステムの操作にも意識を割きながら応対しなければならなかった。現場からもシステム改善の要望が上がっていたが、とはいえ現実としてなかなか対応できないことに宮川氏は悩んでいた。

そのタイミングで、旧CRMが更改時期を迎えることになる。これを機に新たなシステムの導入を考えた同社。「CRMの部分と、オペレーターが利用する目的地設定などの業務システム部分の仕組みを疎結合で分け、変化の激しい時代に対応する機能追加・改修を行いやすい形にしたいと考えました」と宮川氏が説明する。

更改当時、コネクティッドサービス部 テレマティクス展開室 室長(現在は戦略本部 BR-DX推進室 主査)を務め、このシステム開発を牽引した兼岩 良介 氏。兼岩氏は「今後、このサービスをスピーディに発展させていくには、従来のシステム構成では難しかった」と指摘し、抜本的にシステム構成を見直すことを提案したという。

変化に応じた柔軟な機能追加とオペレーターの手間を減らすUI開発に向けて

システム更改に際し、構想検討の段階からNTTデータがプロジェクトに加わった。NTTデータでトヨタコネクティッド担当の開発チームに所属し、今回の取り組みでプロジェクトマネージャーを務めた菊地 太郎は、構想検討において留意した点をこう語る。

製造ITイノベーション事業本部 第五製造事業部 モビリティサービス統括部 サービスインテグレーション担当 課長 菊地 太郎

製造ITイノベーション事業本部
第五製造事業部 モビリティサービス統括部
サービスインテグレーション担当 課長
菊地 太郎

「CRMパッケージに手を入れなくても新機能を追加できるシステムにすることに加え、顧客データ・契約データをトヨタコネクティッド内で管理する仕組みに変えることが最大のポイントでした。加えて、従来の業務システムには目的地設定などにスキルを要するところがあり、習熟したオペレーターでなければ使いにくいところがあったので、使いやすさを追求しました」(菊地)

製造ITイノベーション事業本部 第五製造事業部 モビリティサービス統括部 サービスインテグレーション担当 課長代理 岡嶋 雄太

製造ITイノベーション事業本部
第五製造事業部 モビリティサービス統括部
サービスインテグレーション担当 課長代理
岡嶋 雄太

菊地と同じチームでオペレーター部門と直接会話しながら仕様を調整し、現場が使いやすいものを突き詰めて設計に反映する立場にあった岡嶋 雄太。岡嶋は「地図や車両データとの連携に特徴的な業務があったため、地図の表示速度や、車両情報などの膨大なデータを受け取って操作する際の画面レスポンスを高めることもポイントになると考えていました」と付け加えた。

プロジェクトは2020年11月に要件定義を開始し、明けて21年4月から本格開発をスタート。そして22年3月、本番運用開始に至った。兼岩氏は「旧CRMの撤廃日が決まっており、延長できないリミットがある短期開発になりました。そのなかで改修をしやすいようにする、UIを使いやすいものにするなどさまざまなテーマがあったので、開発自体は苦労の連続でした」と振り返る。

特にUIの作り込みは難しい部分だったという。コストや納期との兼ね合いも考慮し、機能の取捨選択については現場と開発、そしてNTTデータも交えて多くの会話がなされた。

「操作時の手数を極力減らし、直感的に扱えるUIにこだわりました」と宮川氏。

オペレーターの業務で頻度が高いのは、ユーザーのリクエストを受けた目的地設定で地図を使うシーン。走行中の道沿いにあるコンビニやガソリンスタンドに行きたいといったリクエストに対し、ユーザーからの限られた情報をもとに最適な答えを瞬時に見つけ出すため、地図上でのビジュアルな検索を円滑に実現することが必須だ。

ユーザーからの情報は漠然としていたり、聞き取りにくかったり、あるいは誤った情報が伝わってきたりすることがある。そのため検索はオペレーターのスキルに依存する部分が大きく、それをシステムに落とし込むうえで参考にすべきノウハウも多岐にわたる。「まずはきちんと業務内容を理解し、多様なケースで柔軟に検索できるシステムを作り上げていきました」と岡嶋。トヨタコネクティッド側の知見を多く取り入れ、数々の苦労を乗り越えた。それに加えて「このUI開発の取り組みは、NTTデータにとって新しいアセットにもなりました」と菊地は語る。

安定稼働の新システムをベースにさらなる付加価値の向上をめざす

オペレーターが使いやすい業務システムが立ち上がり、取材時点で本番運用からちょうど1年が経過しようとしていた。現時点で、オペレーターの応対1件あたりの時間が平均約30秒短縮しており、定量的な成果も見えていると宮川氏。システム稼働後に新たに入社したオペレーターからも使い勝手がよいと評判だ。

本システムは、オペレーター部門から見れば業務システムだが、名前のとおりCRMとしての側面も有する。兼岩氏は「今回のプロジェクトによって、モビリティサービスの変化に追従してスピーディに機能の改善や拡張ができるようになりました」と成果を評価している。

兼岩氏の後を受けてコールセンターで稼働するシステムの開発・運用を担当しているテレマティクスサービス部 バックエンドサービス室 室長の山田 潤 氏は、現状とこの先の展望をこう話す。

トヨタコネクティッド株式会社 テレマティクスサービス部 バックエンドサービス室 室長 山田 潤 氏

トヨタコネクティッド株式会社
テレマティクスサービス部 バックエンドサービス室 室長
山田 潤 氏

「システムは安定稼働しており、運用しながら改善していくのが現在のフェーズです。オペレーターからは新システムを活かす要望がさまざま上がっているので、ビジネス価値を高めるため、要望の背景にあるものをしっかり意識し、設計に落として、スピード感を持って新しい機能を提供できるようにしていかなければと考えています。今後もNTTデータに協力してもらいながら、当社内での開発・運用の幅を広げていきたいですね」(山田氏)

山田氏は、NTTデータのメンバーも加わったDevOpsチームの立ち上げを検討していると明かした。これについて岡嶋は「今回のシステム更改によって、オペレーターさんからの要望も、システムの操作性・機能面に対するものから、システムを活用してユーザーへ提供するサービス改善に関するものに変化してきています。同じチームに入って内製化を強化し、よりアジャイル的に機能を開発・リリースすることによって、コールセンターで提供する付加価値の向上に協力していき、DevOpsにとどまらないBizDevOpsの実現もめざしていきたいです」と補足した。

今後に向けて、宮川氏は「人ならではの応対の価値を最大化するために、テクノロジーとの両立を模索したいですね。たとえばAIで検索をサポートするサジェスト機能も装備していきたいですし、オペレーター個人のなかにあるさまざまなナレッジもシステムを通じて蓄積・活用できるようになれば、と期待を抱いています」と話す。

これを受け菊地は、NTTデータとしての展望を語った。

「NTTデータはAIをはじめとする先進技術への知見を持つだけでなく、モビリティの未来の姿をForesight(※)として描いています。今後もトヨタコネクティッド様とともにあるべき姿を一緒に描き、実現に向けて取り組んでいきます」(菊地)

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