[Trend]

ITは急速に浸透し、社会との共存ルール生成を待たない。世界規模のIT犯罪、AI課題の深刻化、持続的な国際的研究開発の停滞など課題は拡大する。新たな規範の確立に向けて、技術を司る者の積極的関与は必然だろう。

[Abstract]

革新的技術の急速な社会への浸透や、その結果生じる変化がもたらす負の影響に、人々は戸惑っている。変化に追随した新たなルールは未成熟なままで、様々な混乱が拡大している。技術を司る者は、こうした歪みを認識し、IT進化の社会実装に必要な規範生成に積極的に関与する姿勢が強く求められていく。
ITが生活・社会・経済成長の基盤となるにつれ、その影の面も拡大する。国際的犯罪集団による億人単位のユーザ情報流出が日常となり、エネルギー供給会社や医療機関などライフラインを支える重要システムの制御を奪って脅し、多額の身代金をせしめる犯罪は増え続けている。ディジタルディバイドはより深刻な社会的格差を意味するようになり、AI課題は解決されないままだ。さらに急激に進化するAIが要求する膨大な電力は、脱炭素の社会的取り組みと無縁ではなくなった。最先端の技術開発は安全保障の重要な要素となり、牧歌的な国際協力によるITの進化はもはや望めない。SNSが、人々の情報流通そのものになり、政治経済を大きく揺るがす現状で、その運用ルールを特定企業がつくる規約で済ませるのはもはや危険であると世界は認識している。
新たな技術が生まれ、人々の生活を変えるまでのリードタイムは短くなる一方だが、それに適した規範生成にはこれまで人類が新技術に直面してきた歴史同様に長い時間がかかる。しかもITは複雑化し、関わる領域が際限なく拡大している。国家による規制強化が本格化する中、技術を主導する者が、その知識を社会課題にまで拡げ、ルール作りを主導する必然性はさらに高まるだろう。