[Trend]

人が見いだした自然界の法則を膨大な計算力で再現するシミュレーションは多くの成果を挙げ続けている。さらにAIを組み合わせる取り組みが未知の領域に試行の範囲を拡げ、素材や医薬の研究開発に革新をもたらしていく。

[Abstract]

膨大な計算力で物理現象を再現するシミュレーションとデータから結果を導くAIが研究開発の在り方を変えIT主導の科学を実現しようとしている。
現象を理論的に計算し再現するシミュレーションは、コンピュータの性能向上により、現実で行われる実験を置換できるようになった。自動車の空気抵抗の測定、薬の効果確認といった研究開発に欠かせない実験をコンピュータ上で完結させることが可能となり、その開発スピードを向上させている。
実験を置換するシミュレーションの活用はAIによって広がろうとしている。シミュレーションの結果を学習データにしたAIは、元のシミュレーションより少ない計算量で同等の結果を出すことが可能だ。このシミュレーションを代替するAIは、低価格な製品開発や自治体による災害被害の予測など、スーパーコンピュータを用意できない場面での利用が期待される。
さらに、AIは人が解明できない未知の現象をデータから直接解き明かすことができる。シミュレーションでも正確な再現が難しいタンパク質の立体構造をAIが実験と同等の精度で予測したというニュースは大きな注目を集めた。専門家が何年もかける新素材の開発では、実験とシミュレーションで得たデータを学習したAIによって専門家よりも早く目的の素材を発見できるようになろうとしている。
今後、素材や医薬の研究開発は人の勘や経験、実験による試行錯誤ではなく、シミュレーションとAIというIT主導によって革新がもたらされるだろう。