横浜銀行、山口フィナンシャルグループにて「Liquidity Master®」が稼働開始 ~「バーゼルIII流動性規制」にのっとり流動性カバレッジ比率・安定調達比率を計測、持株会社制にも対応~

サービスインフォメーション

2015年4月17日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータが提供する流動性規制対応パッケージシステム「Liquidity Master®」を導入した株式会社横浜銀行(本店:横浜市、代表取締役頭取:寺澤 辰麿、以下:横浜銀行)および株式会社山口フィナンシャルグループ(本店:下関市、代表取締役社長:福田 浩一、以下:YMFG)において、本システムの稼動が開始されました。

本システムは海外に支店を有する銀行(以下国際統一基準行)において施行されるバーゼルIII流動性規制(以下、流動性規制)にのっとり、2015年3月末日基準から適用が開始された「流動性カバレッジ比率(以下LCR)注1」および、2018年から適用が予定されている「安定調達比率(以下NSFR)注2」の計測が行えるものです。(NSFRについては国際合意文書に基づく算出に向け現在対応中。)

なお「Liquidity Master」は銀行単体のみならず、持株会社制を採る銀行のLCR、NSFR計測にも対応しているため、今回国際統一基準行かつ持株会社制を採るYMFGにおいては、傘下の株式会社山口銀行(本店:下関市、代表取締役頭取:福田 浩一)、株式会社もみじ銀行(本店:広島市、代表取締役頭取:野坂 文雄)および株式会社北九州銀行(本店:北九州市、代表取締役頭取:加藤 敏雄)を含めた一体のLCR計測を開始しています。

今後、新たに持株会社制を採る国際統一基準行および国内のみ支店を有する銀行(以下、国内基準行)に流動性規制が適用された際にも、持株会社制を採る銀行を含め各銀行に「Liquidity Master」を提供していくことで、NTTデータは本システムの国内シェアNo.1を目指します。

背景

NTTデータでは2012年7月から監査法人と提携し、また各銀行担当者との勉強会を通じ流動性規制対応システム開発の検討を行い、2013年8月より「Liquidity Master」の開発に着手しました。開発当初導入を決定した横浜銀行に加え、地方銀行における国際統一基準行の中で唯一持株会社制を採るYMFGが本システムの導入を決定し、複数回にわたる告示案変更や持株会社制を採る金融機関にも対応したシステムを開発しました。

そして2015年3月末日基準より国際統一基準行の流動性規制LCR計測が適用開始され、今回横浜銀行、YMFGにて「Liquidity Master」を用いた初のLCR計測が開始されました。

システム概要・特長

「Liquidity Master」を導入した金融機関は、銀行の流動性リスク態様の短期的強靭性を保証するLCRだけでなく、長期的な強靭性を保証するNSFRも算出可能となります。なお、LCRは2015年3月末基準から適用が開始されましたが、NSFRは2018年からの適用が予定されており、今後適用に向けてさらに規制の内容に修正が入る可能性があるものの、NTTデータでは、それらにも対応する予定です。また、国内基準行向けに今後適用されうる同様の規制に対しても、NTTデータは検討を進めています。

「Liquidity Master」は持株会社制を採る銀行のLCR計測に対応しており、持株会社傘下の各銀行のLCR算出を持株会社計測と同時に実施します。また、金融庁所定のLCR報告帳票に加え、モニタリング帳票についても支援ツールを提供し対応しています。

  • LCR、NSFRの計算・検証・レポーティング機能

    本規制対応上必要となる単体・連結でのLCR、NSFRなど各種指標値の計算・検証・レポーティングについて、さまざまな規制上の論点を踏まえた機能を実装しています。

  • シミュレーション用環境

    ストレステストの実施のために通常環境での計算結果に影響を与えることなく、インプットデータ、掛目等のマスター設定を変更可能です。

  • 帳票出力機能

    月次で行われる当局への報告に最大限活用可能なよう、QIS注3と同等の帳票を出力し、また金融庁所定のLCR報告帳票についても支援ツールを提供し対応しています。監査法人のコンサルタントが設計に携わることで、金融機関の実業務面でのニーズにも対応しています。また、当局への報告が求められるモニタリング帳票についても出力できます。

  • 資産・負債の振り分け機能

    資産や負債などについて、規制で定められた流動資産のカテゴリーへの分類や預金の流出率を適用するため、本パッケージシステム内で取引単位での各種振り分けが可能です。

  • キャッシュフロー生成機能

    預貸や確定利回りの有価証券について、パッケージシステム内部でのキャッシュフロー生成が可能です。これにより、上流システム側でのデータ準備負荷軽減や、資金流出入の算定期間の変更が可能になる等、柔軟な対応が可能となります。

今後の展開

NTTデータは、金融機関向けの流動性規制対応システムとして「Liquidity Master」の国内シェアNo.1を目指します。

参考

「流動性規制」について

バーゼル規制とは、国際的に活動を行っている銀行に対して、銀行システムの健全性および銀行間における競争条件の公平性確保の観点から、銀行経営管理の最低基準として1988年に日米欧など13か国の銀行監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会注4が設定した国際ルールです。2007年から施行されたバーゼルII規制では、銀行経営におけるさまざまなリスクの基準として、例えば銀行の経営が健全かどうかを示す自己資本比率について、国際基準行の自己資本比率は8%以上であること、などが具体的に決められています。

バーゼル銀行監督委員会は、今後起こりうる金融危機への対策としてバーゼルIII規制を施行することを決め、2010年12月にその一部として流動性規制案を公表、2015年から日本を含めた全世界のグローバルな金融機関への適用が開始されました。流動性規制では、2008年にバーゼル委員会から公表された「健全な流動性リスク管理及びその監督のための諸原則」を遵守していることを確認するため、「流動性カバレッジ比率(LCR)」、「安定調達比率(NSFR)」の、資金流動性に係る二つの最低基準を導入し、潜在的な流動性ショックに対する銀行の強靭性を高めることを目的としています。

注釈

  • 注1流動性カバレッジ比率(LCR)

    銀行が、監督当局の特定する最も厳しい流動性ストレスシナリオの下において、処分に制約がなく即時に現金に換金できるような高品質の流動資産を適切な水準で確保することを目的とする。本比率は、高品質の流動資産÷30日間のネット資金流出として定義される。高品質の流動資産に分類するためには、当該資産がストレス時においても市場での流動性があり、理想的には中央銀行の担保適格になっているものでなければならない。本指標のシナリオ下でのネットの資金流出額は、先行き30日間について計算され、本比率は100%を下回ってはならない。銀行は、潜在的な厳しい流動性ストレスに備えるため、継続的にこの要件を満たし、処分に制約のない高品質の流動資産を保有することが求められる。

  • 注2安定調達比率(NSFR)

    市場流動性が潤沢なときでも、大口の市場調達に過度に依存しないように制限を設けることを目的とするとともに、オン-オフ バランスシート全体にわたる流動性リスクをより正しく評価するよう動機づけすることを目的としている。本比率は、利用可能な安定調達額(ASF)÷所要安定調達額(RSF)として定義される。"安定調達"とは、長期的なストレス下で、1年超におよぶ期間でも信頼に足る調達源となることが期待されるような資本性、負債性の調達の総額と定義される。本比率は、100%以上が求められる。本基準は、流動性カバレッジ比率(LCR)基準を補完するための最低限の強制的な仕組みとして策定されたものであり、短期調達のミスマッチから、資産と事業に対するより安定した長期調達へ、流動性リスク・プロファイルの構造的変化を動機付けることにより、監督上の他の取り組みを補強するものとなっている。

  • 注3QIS

    バーゼル銀行監督委員会が発表した文書に係る規制や提案の影響を評価するため実施する、包括的な定量的影響度調査(Quantitative Impact Study)のことを指す。通常、規制の施行前に実施し、各国の当局に裁量のあるパラメーターを調整するため、対象金融機関に当局が中期的な提出を求めることとなる。今回の流動性規制においては国際統一基準行のみが対象であり、定期的に日本の金融庁当局へ報告が求められている。

  • 注4バーゼル銀行監督委員会

    国際決済銀行(BIS:世界各国の中央銀行が出資する国際機関で1930年に設立。本部はスイス・バーゼル)において定期的に開催されるG10中央銀行総裁会議によって1975年に設立。アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港特別行政区、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国の銀行監督当局および中央銀行の上級代表者によって構成され、国際間における金融システムの安定化や、銀行間競争の不平等を是正することなどを目的として1988年にBIS規制を発表した。BIS規制はG10諸国を対象とし、BIS規制による自己資本比率8%を達成できない銀行は、国際業務から事実上の撤退を余儀なくされる。

  • 「Liquidity Master」は、日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

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金融ソリューション事業部
第一ソリューション統括部
ソリューション営業担当
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TEL:050-5546-2394