AIファイナンス応用研究所と量子コンピュータに着想を得た新しいインデックス運用の改善手法に関する論文を公開

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2020年2月5日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)とリサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社・AIファイナンス応用研究所(以下:AIファイナンス応用研究所)注1は、量子コンピュータ注2に着想を得た新しいインデックス運用の改善手法に関する論文を公開しました。論文では、パッシブ・ポートフォリオ戦略の代表的手法であるインデックス運用に対して、量子コンピュータの並べ替え機能にヒントを得た新しい手法によって、リスク・リターンを改善することを提示しています。

NTTデータとAIファイナンス応用研究所は本研究結果を基に、金融における量子コンピュータの実ビジネスへの適用を目指します。

概要

NTTデータとAIファイナンス応用研究所は2018年8月に、量子コンピュータの金融ビジネスへの適用検討において協業することで合意しています。今回、共同研究の成果を『Quantum-Inspired Weighting Approach to Correlation Diversified Passive Portfolio Strategy』というタイトルで論文化し、SSRN注3に公開しました。

論文について

パッシブ運用の人気はこの数十年間でますます高まっていますが、多くの投資家はベンチマークの指数をそのまま利用しています。そこで、NTTデータとAIファイナンス応用研究所は、このようなインデックス運用を改善するために新しい手法を考案しました。

考案した手法は、各株式銘柄の過去の値動きの情報を基に銘柄の並び替えを行い、どの銘柄が他の多くの銘柄と強い相関関係があるのかを探索することで、元のインデックスを構成する各銘柄のウェイトを調整し、リスク・リターンを改善します。具体的には、他の多くの銘柄と同様な値動きをする銘柄のウェイトを減らし、異なる値動きをする銘柄のウェイトを増やす形で調整します。この調整によって、より分散された投資が可能となります。このような並び替えを行う「組合せ最適化問題注4」は、大規模になると計算方法の工夫や計算時間を要し、現状の汎用コンピュータで高速に解くことが難しいです。そこで、今回は、組合せ最適化問題を高速で解く、量子コンピュータに着想を得た技術の1つである「富士通社のデジタルアニーラ注5」を使用しています。

考案した手法の有用性を調べるために、ダウ平均株価(図)とTOPIXを対象に、数値実験を行った結果、どちらの指数でも、考案した手法によって構築されたポートフォリオは元のインデックスと非常によく似た動きをする一方で、より低いリスクで、より高いリターンが得られたことを確認しました(表)。例えば、ダウ平均株価では、過去5年間で、累積リターンが37.953%から39.394%に上昇し、リスクが平均で12.593%から12.035%に低下しました。

ダウ平均株価を構成する各銘柄に対して、並び替えを行った結果

図:ダウ平均株価を構成する各銘柄に対して、並び替えを行った結果(左:並び替え前 右:並び替え後)

(上図の説明)
銘柄間の相関係数が1に近い(相関関係が強い)場合、黒色に近くなり、0に近い(相関関係が弱い)場合、白色に近くなるように表示しています。左図と右図を比較すると、並び替えの結果、対角線付近の領域の色が濃くなり、左下と右上の領域では色が薄くなっていることが分かります。これは、隣り合う銘柄同士の相関関係が強いことを示しています。言い換えると、多くの銘柄と相関関係が弱い銘柄が順列の両端に配置されていることが確認できます。私たちの手法では、順列の両端に配置された、他の銘柄との相関関係が弱い銘柄のウェイトを増やす形で各銘柄のウェイトを調整します。

累積リターン(5年間)の改善平均ボラティリティの改善
ダウ平均株価37.953% ⇒ 39.394%12.593% ⇒ 12.035%
TOPIX16.127% ⇒ 19.552%17.894% ⇒ 17.337%

表:累積リターンとリスクの改善度合い(2014年から2018年までの期間が対象)

今後について

NTTデータとAIファイナンス応用研究所は今回得られた研究結果を基に、量子コンピュータの金融ビジネスへの適用に取り組んでいきます。また、今後も引き続き量子コンピュータに関する知見を蓄積し、従来のコンピュータでは解決が難しいとされている金融技術にかかわる諸課題の解決に向けたシステム・サービス実現に向けて検討を行います。

注釈

  • 注1AIファイナンス応用研究所は、リサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社内に、経済・ファイナンスの領域で真に有用なAIの応用を探求する目的で2017年9月1日に設立された研究所です。所長は、櫻井 豊。
    http://www.rptech.co.jp/aif/index.html
  • 注2今回の協業で対象としているのは、量子コンピュータの金融ビジネスへの適用検討であり、従来のコンピュータでは解決が難しいとされている金融課題の解決に向けたシステム・サービス実現に向けた検討などです。
  • 注3公開した論文のURL
    https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3487195
  • 注4組合せ最適化問題とは、複数の選択肢が存在する際に、それぞれの選択肢の評価値を計算し、評価値が最も良い選択肢を見つける問題です。組合せ最適化問題の例として、巡回セールスマン問題などが良く知られています。
  • 注5富士通社 デジタルアニーラ
    https://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/
  • 文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

金融分野への適用について

株式会社NTTデータ
金融事業推進部
技術戦略推進部
山本、土田、幸
TEL:050-5547-7040

量子コンピュータについて

株式会社NTTデータ
技術革新統括本部
技術開発本部
稲葉、矢実
TEL:050-5546-9863