DAP施策とは

NTTデータでDAPと呼称するDigital Acceleration Programとは、デジタル専門人財を育成するための施策。当時、入社4年目だった渡邊氏は、DAP施策 の参加者に選ばれ、NTTデータでもデジタル技術のプロフェッショナルが集まる技術革新統括本部にて、約2年間先進技術を学ぶことになりました。受入先となる技術革新統括本部の課長の山下氏を筆頭に、様々な社員に助けられながらDAP期間を終えた渡邊氏は、出元組織である金融事業推進部へ復帰し、課長の阿久沢氏のもとチームのハブとなり、活躍しています。


渡邊 仁
金融事業推進部 技術戦略推進部
プロジェクトサポート担当 主任
入社4年目でDAP施策に参画し、技術革新統括本部 システム技術本部 デジタルテクノロジ推進室に2年間所属。主にブロックチェーンやクラウドの技術を習得し、現在の組織に復帰して入社6年目を迎える。

山下 真一
技術革新統括本部 システム技術本部
デジタルテクノロジ推進室 課長
受入組織にて渡邊氏の上長を務め、定期的な面談、効果的な役割アサイン、実務の振り返りなどを通して手厚いサポートを行う。

阿久沢 佑介
金融事業推進部 技術戦略推進部
プロジェクトサポート担当 課長
出元組織の上長を務め、DAP期間中も定期的に面談を行い、渡邊氏の育成をサポート。

技術面・ビジネス面双方の知見向上を期待し、DAP施策に参加

渡邊)
私は2019年の7月から2021年の6月末までの2年間、DAP(Digital Acceleration Program)施策に参加しました。施策を通じ、本当に大きな学びを得られました。私の技術者としてのキャリアは5年ほどですが、DAP施策に参加していなければ扱うのがもっと先になっていたであろう様々な先端技術に当時、触れられたことは、自分の今後のキャリアパスを考える上でも有意義な経験だったと実感しています。
阿久沢)
DAP施策を終えてからの働きぶりを見ていても、以前よりも一層たくましくなったと感じます。渡邊さんは、しっかりした技術力が備わっているのはもちろん、さらに上を目指して主体的に学ぼうとする意欲、姿勢が優秀な技術者です。そうした強みを発揮し、DAP施策を通じてさらに多くのことを吸収してきました。
山下)
渡邊さんが主体的に学ぼうとする技術者であるというのは深く同意します。例えば、技術革新統括本部ではクラウドの資格取得状況などをランキングで競っているのですが、渡邊さんは上位にランクインしていました。ほかにも、自主的にGo言語の勉強に取り組み、その腕試しを兼ねて競技プログラミングの大会に参加するなど、本当によく勉強する技術者です。
渡邊)
面と向かって褒められると、なんだか少し照れくさくもありますが……(笑)、嬉しいです。DAP施策の参加には上長の推薦が必要ですから、私を推していただいたことに感謝しています。
阿久沢)
渡邊さんは入社以来、金融事業推進部に所属し、金融業界のお客様のビジネス課題に寄り添いながら、セキュリティの問題解決をしていくチームで研鑽(けんさん)を積んできました。しっかりとした技術力を有し、主体的に学び続ける意欲も持つ渡邊さんは絶対に今後、さらに伸びていける人財です。上司としても、ぜひ大きな飛躍を遂げてほしいと期待していましたので、DAP施策へ推薦し、技術革新統括本部で経験を積んでもらうことにしました。金融のセキュリティ事業と親和性の高い要素技術であるブロックチェーンについて、実際のビジネスを通じて知見を積み上げることを想定しての推薦でした。
山下)
技術革新統括本部は、様々な領域の課題を解決するための技術開発や開発手順・プラットフォーム構築やコンサルティング、技術評価などをトータルに請け負う部門です。金融事業推進部はミッションクリティカルな案件が多く、極めて高い信頼性が求められます。技術革新統括本部はどちらかといえば技術を軸に、スピーディーに業務を遂行するカルチャーを持ちます。渡邊さんはそうした組織風土などのギャップを乗り越えて組織に順応していきました。本来もっている柔軟性や突破力、DAP施策を利用して新たな技術や知見を習得するのだという高い意識の賜物だと思います。

貿易プラットフォーム構築の経験を通じ「リーダーとして業務を実行できる技術者」に

渡邊)
DAPが始まってからの1カ月半ほどは、OFF-JTで最新の技術トレンドに関する研修を受けました。AIやマイクロサービス、クラウドなど、先端技術に関するトピックを一通り理解するための研修で非常に興味深い内容でした。OFF-JTを終えてからは、O-JTで国際的な貿易プラットフォームプロジェクトのチームメンバーに加わり、システム構想や技術評価を担当しました。
阿久沢)
DAP期間中、ブロックチェーンだけでなく、クラウドなども含む様々な先端技術に触れたと報告を受けています。加えて技術革新統括本部、社内の他部署、グループ会社とで三位一体の組織体制を構築しながら技術課題を乗り越えたと聞いています。貿易プラットフォームの構築は国内外の金融機関や商社、物流事業者や官公庁など、幅広いステークホルダーとの協調や意見調整も必要となります。様々な組織をカウンターパートとするビジネスは、大きなやりがいがあったことでしょう。
山下)
実際、社内外の組織との調整や会議にも数多く参加してもらいました。金融事業推進部で培った知見も踏まえて、様々な提案をしてくれたことで我々が助けられた場面も多かったです。また、貿易にまつわる煩雑な手続きなどを合理化・最適化するプラットフォーム構築にあたり、技術的な課題抽出や、実装に必要となる技術のブラッシュアップなどを担当してもらいました。チームに参加してから半年ほど経ち、渡邊さんには確固とした技術力だけでなく、抜きんでた意欲や熱意もあることが分かり、6名のメンバーをまとめるリーダーにアサインしました。
渡邊)
リーダーは初めての経験だったので、正直なところ、プレッシャーもありました。でも、負けないくらいの強い気持ちもありました。入社4年目でタイミング良く推薦を受けることができ、「セキュリティの技術者として、自分の強みを広げたい」という思いで施策に参加しました。そうした背景もあり、吸収できるものは何でも吸収したいと考えました。自分にとって、DAP期間中に体験した一つひとつの業務は非常にチャレンジングなものでしたが、「私がやらなきゃ、誰がやる」くらいの熱意を持って日々を過ごしていました。またDAP期間中は、周囲の手厚いサポートにも大いに助けられました。受入組織の上司である山下さんと定期的に面談する機会が設けられ、業務の振り返りや、それによって習得したスキル、DAP参加時に立てた当初目標との乖離(かいり)などを整理して確認し、細かく軌道修正することができました。復帰先となる出元組織の上司である阿久沢さんとも四半期に1回面談を行い、自身の活躍状況をお伝えすると共に、金融分野の最新状況や同僚の活躍を聞くことができ、自身の励みにもなりました。
阿久沢)
技術者として、若いうちに技術を浴びるように学べる場があるのは非常に幸運なことです。自分も若かったら、ぜひ参加したかったと思うくらい画期的な施策です。
山下)
私も渡邊さんより少し長く経験を積んだ技術者として、非常に画期的な施策だと感じています。
阿久沢)
金融事業推進部としては、渡邊さんのDAP参加を通じて技術革新統括本部とのリレーションを構築できたことが、日ごろの業務にもプラスになっています。例えば、「この技術に関しては、技術革新統括本部のこの人に聞けばいい」ということがメンバーに浸透し、業務効率が上がりました。加えて、渡邊さんは、DAP期間中から復帰後の現在にかけて部署の勉強会にて、DAPで得た知識を部署のメンバーに共有してくれています。部署のメンバーは最新の技術トレンドを学ぶ貴重な機会を得ているだけではなく、学びの成果を自ら発信し、渡邊さんの姿勢にも触発されて、部署全体が良い刺激を受けています。
山下)
私たちもDAPで渡邊さんを受け入れたことにより、様々な前向きな影響を受けました。例えばエンジニア志向の強い技術者が多い技術革新統括本部は、技術や社会情勢、広範なステークホルダーなどの条件を見渡しながら、社会実装を見据えた課題を抽出することに苦労する場面があります。しかし、渡邊さんのように、金融業界の企業とビジネスをした経験を持つ方がメンバーに加わることで、部署全体の視野が広がったような実感があります。また、ドキュメントなどの成果物のクオリティーも向上できました。従来でしたらレポートやドキュメントを作成する時に、他のプロジェクト関係者と意見の食い違いがありましたが、渡邊さんから得た金融分野でのノウハウを反映することで、他のプロジェクト関係者と連携し、物事を進めることができるようになりました。
リードできる技術者となるべく研鑽(けんさん)し続ける

渡邊)
金融事業推進部に復帰してからは、保険会社のシステムのセキュリティ設計などを担当しています。DAPに参加し、ブロックチェーンやクラウドに触れる経験を積めたことは現在の業務にも役立っています。特にクラウドは、DAPに参加していなければ、技術習得はしばらく先になっていたと思います。OFF-JTの手厚い研修も役に立ちましたし、クラウドの資格を取得できたことも自信につながりました。
阿久沢)
ブロックチェーンやクラウドなど、技術を主役にした際に、どんな課題を解決できるかを考えるプロセスは、お客様の課題を起点としてサービスやシステムを構築する金融事業推進部のビジネスとはまた異なるものです。DAPに参加したからこそ得られた、素晴らしい体験ですね。
山下)
渡邊さんはDAPを通じ、様々な先端技術に目を配りながら、自分なりの「解」を見出すことができるようになりました。リーダーとしてここまで成長できたことは、大きな成果だと考えます。
渡邊)
ここで得た経験を未来につなげるべく、今後、技術面、ビジネス面双方の知見をさらに磨き上げていきます。目指しているのは、金融システムのセキュリティアーキテクトとして、「金融のセキュリティはかくあるべし」を語れる人財です。
阿久沢)
ぜひ、金融システムをリードするセキュリティの技術者になってください。金融のセキュリティは、非常に多くのリスクにさらされる領域であり、高い技術力に裏付けられた勘所を持ち、その時々の状況に応じた最適な「打ち手」を講じられる技術者が求められています。渡邊さんにはそのような人財になってほしいです。今後、「金融のセキュリティのトレンドは渡邊に聞け」といわれるような技術者になることを期待しています。
山下)
ブロックチェーンが良い例ですが、先端技術の中には未来に貢献する高いポテンシャルはあるものの、どのように実装すれば良いか、検討の余地が残されているものも数多くあります。その新しさゆえに、実装にはブラッシュアップが必要なこともあります。今後の技術者には、「技術を通じ、どんな価値を社会に提供するか」「どんな課題を提起し、その課題をどのような技術で解決するか」を発信し、多くの人をひきつけられる能力が求められるでしょう。渡邊さんにも、こうした能力を備えた技術者を目指してほしいです。
渡邊)
常に成長し続けたいと願う技術者にとって、NTTデータは非常に恵まれた環境だと実感しています。DAP期間中、関連ベンダーの社内勉強会等に参加する機会にも数多く恵まれました。主体的に学ぼうとする仲間の姿がいつも目に付くところにあるので、「多少大変でも、自分も頑張ろう」と励まされました。チャレンジできる環境がいつも手の届く範囲にあるのは、すごくありがたいことです。引き続き、自分のキャリアと世の中の課題の両方を見据え研鑽(けんさん)を続けていきます。
人事本部からのメッセージ

コーポレート統括本部 人事統括部 人事担当
写真右:課長代理 中川 裕子
写真左:主任 石川 絵梨奈
NTTデータがビジネスを展開しているIT市場では、現在デジタルビジネスが急速に拡大しています。デジタルビジネスの特徴として、これまでのようなお客様の業務の効率化だけでなく、ITを活用したお客様の業務変革や新しいビジネス創出などが挙げられます。そこで、NTTデータも今後のさらなる成長のためには「グローバル」で活用できる「オファリング」を迅速に整備していく必要があります。
NTTデータではデジタル変革を推進する人財を「デジタル人財」と定め、デジタルスキルと、そのレベルの高さによって人財を3階層(デジタルコア人財、デジタル専門人財、デジタル活用人財)に分けて定義しました。デジタル技術の知見を有し、サービスを設計・開発する「デジタル専門人財」を戦略的に育成する施策として、DAP施策を人事本部が主管となって2019年に開始しました。
既にデジタルビジネスを展開する組織ではデジタル人財育成に取り組んできましたが、人事本部が主管となり、育成プログラムが整ったDAP施策を開始することで、全社的なデジタル専門人財育成の促進に寄与しています。
19年から開始した施策ですが、これまでに84名の人財を育成しています(21年12月時点)。19年4月の施策第1弾に参加したDAP対象者は2年間の育成を修了し、21年4月に出元組織へ復帰しました。DAP対象者、受入組織(DAP対象者の育成を実施した組織)の上司、出元組織(DAP対象者を推薦し、育成修了後に復帰する組織)の上司に施策についてアンケートを実施したところ、多数の高い評価を得ることができました。アンケートの実施はDAP対象者が復帰して約半年後でしたが、既に多くのDAP対象者が学んだ技術や経験を活かして活躍しているとの回答でした。施策を通じ、多くの組織に効果的な働きができたことは、施策主管として大きなやりがいを感じています。
デジタル変革への課題は多岐にわたり、進歩し続けています。DAP施策に関しても、全社としてさらなるデジタル専門人財育成を促進するべく、時代の流れを見極め、施策の改善に取り組んで参ります。そして、お客様のデジタルビジネスを牽引(けんいん)する人財をこれからも多数輩出していきます。
編集部より

取材中、「NTTデータは、伸びたいと願う人を後押ししてくれる会社だ」という意見が三者から聞かれた。デジタル技術で世界中から信頼を勝ち得ることをビジョンに掲げ、様々な領域で新たなサービスやシステムを続々と提供する同社は、技術者に対して日々チャレンジングな業務を課すのみならず、未来を見据えて研鑽(けんさん)を積む機会も積極的に提供している。
「自分はどのような技術者になりたいか」、自分の頭で考え、自分の言葉で語る力――つまり「リーダーとして業務にあたる技術者」たる力を身に付けることは、複雑化する時代の要請に応える技術者になる上で必須の条件といえる。キャリアや志向に応じて、進むべき道や越えるべきハードルを明示する同社からは、今後広く社会に新たな価値をもたらす技術者が多数育成されるだろう。
※掲載記事の内容は、取材当時のものです