連載の振り返り
約半年間、合計九回に渡り実施した本連載について今回が最終回となる。ここまでの連載にて解説した事項を振り返りたい。
第1回では欧州の政策等の実例から、脱炭素の取り組みが製品単位で評価され、製品競争軸に変化するトレンドを紹介した。第2回は欧州電池規則へ対応する日本の自動車産業の取り組みから変化へ対応する実例を取り上げ、第3回、第4回は材料系の脱炭素化を実現する資源循環の考え方と設計・生産現場で取り組むべき事項を示した。
第5回は脱炭素化のもう一つの重要な要素であるエネルギーの転換について、液体燃料を例にトレンドを、第6回は脱炭素化において避けることのできないコストの問題について、環境価値を経済価値に転換する手法により個社負担を軽減する手法を紹介。第7回、第8回は、消費者も巻き込んだ社会的な活動へ広がることから、トラスト等を対象とした共通的な政策例について解説した。
脱炭素社会を生き抜くための指針とは
脱炭素の取り組みは経済メカニズムの導入により、民間企業間の競争による推進力を得ることで、カーボンニュートラルを達成する方向へ段階的に変化しつつあると考えている。政策的な影響の大きいテーマであるため、短期的には緩和や強化という変動があるものの、中長期的には環境保全を生活者は求めていることから、方向性は大きく変わらないと筆者は考えている。
企業においては技術開発やプロセス改善を伴う活動であるため、中長期的な対応が必要であり、継続的な対応を進めていくことが脱炭素化において重要だ。一方、ここまで紹介した通り、脱炭素化はサプライヤーや消費者の関与を求める社会的な取り組みであることから、技術開発等の個社の努力で競争しながら推進する領域と、環境価値の活用やデータの標準化・活用といった産業界全体で協調した取り組みを合わせて推進することが、競争力を獲得する重要な点になると考える。諸外国がさまざまな取り組みを進める中、より国際競争力のある日本の製造業の未来へ、当社は日本の製造業が高い技術力と協調的な推進力を発揮するために必要なデジタル技術の活用で貢献したいと考えている。

その他の連載記事
脱炭素社会 生き抜くための指針(1)カーボンニュートラル実現に「新しい競争軸」
脱炭素社会 生き抜くための指針(2)蓄電池における資源循環の取り組み脱炭素社会 生き抜くための指針(3)サーキュラーエコノミーと工場や都市の「スマート化」(前編)
脱炭素社会 生き抜くための指針(4)サーキュラーエコノミーと工場や都市の「スマート化」(後編)
脱炭素社会 生き抜くための指針(5)エネルギーの非化石化について
脱炭素社会 生き抜くための指針(6)環境価値を経済価値へ変換する
カーボンニュートラルについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/carbon-neutral/
環境についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/about-us/sustainability/environment/