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1.AIガバナンスコンサルティングサービスの概要
AI技術の進展や生成AIの普及が進む中で、その価値を最大限に引き出すためには、技術そのものへの対応だけでなく、組織全体としての活用方針や統制の在り方を整えることが重要です。AIの活用目的や業務プロセスは組織によって異なり、組織文化や体制によって導入・運用のあり方にも違いがあります。また、業界によってリスク許容度も大きく異なるため、政府や業界団体が示す汎用(はんよう)的なガイドラインのみでは、現場で実効性のある運用につながらないケースも少なくありません。
こうした背景を踏まえ、現場で実効性のあるガバナンス構築を目的に、NTT DATAはAIガバナンスコンサルティングサービスを提供しています。本サービスは、組織構造やユースケースの成熟度、利用形態などを考慮し、各組織の状況に即したガバナンス構築を支援しています。ルール策定などの制度設計から、レッドチーミング・ガードレールツールの導入といった技術的アプローチまでを網羅し、方針検討から対策の実行までを一貫して対応しています。
本記事では、りそなHD様との取り組み事例として、ガイドラインの策定、リスクチェックプロセスの構築、社員向け教育コンテンツの整備についてご紹介します。

2.りそなホールディングス様との取り組み
りそなHD様では、生成AIなどの先進技術を活用し、顧客サービスの高度化や業務変革を推進されています。AIを活用するにあたり、そのリスクを事前に把握し、適切にコントロールする体制の整備が必要であるという共通認識のもと、両社で取り組みを進めていきました。その中で、りそなHD様の組織や業務特性を踏まえた意見交換を重ねながら、ガバナンスの構築および実効性の向上を図っています。
2-1.組織に浸透するガイドラインの策定
AIリスクに対応するには、実務で参照されること、組織内で共通言語として浸透することが求められます。この観点から、実効性のあるガイドラインの策定に取り組みました。
策定にあたっては、既存の社内規定との整合性や、業務で実際に使用されている言い回し・表現の確認を行いました。また、参照しやすい構成と適切な情報量に配慮し、実務での活用を想定した内容としました。さらに、AIガバナンスを取り巻く技術的・社会的な動向についても適宜情報を収集し、内容に反映しています。
こうしたプロセスを通じて、りそなHD様の従来のガバナンスの枠組みと整合性を保ちながら、AI特有の留意点を実務担当者が理解・対応しやすい形で明確化しています。
2-2.リスクチェックプロセスの構築
AIやデータを活用したプロジェクトが増加する中で、案件ごとのリスク評価にばらつきが生じる懸念があります。こうした課題に対応するため、すべての案件に共通して適用可能なリスクチェックプロセスを構築しました。
このプロセスは、NTT DATAがこれまで蓄積してきたプロジェクト知見に加え、国や業界団体のガイドライン・規制動向を踏まえたリスクベースアプローチに基づいて設計しています。実際の業務で活用しやすいよう、リスクチェックに必要な観点を整理し、判断しやすい項目構成としました。
さらに、段階的なトライアル導入を通じて、現場での理解促進と定着を図りました。トライアルを通じて得られた現場のフィードバックも反映し、実務担当者にとって使いやすいプロセスとなるよう継続的な改善を行っています。
こうした取り組みにより、社内の判断基準が統一され、ガバナンスの標準化が進むとともに、今後のAI活用においても安定したリスク対応が可能となるプロセスを整備しています。
2-3.目指す姿に応じた教育設計
AIリスクに対する感度を高め、りそなHD様の従業員が業務の中で適切に対応できるよう、基礎的な知識習得を目的とした教育コンテンツを整備しました。これは、AIガバナンスの制度的対応に先立つ段階に位置づけられるもので、AIリスクに初めて触れる従業員にとっての“入り口”として機能することを意図しています。
対象はAI開発者だけでなく、今後AIを利用する可能性のある一般の従業員も含まれており、誰にとっても理解しやすいよう、平易な表現や短時間で読み切れる分量としています。また、リスクを具体的に想起しやすくするために、実際の業務を踏まえた具体例の挿入などの工夫も盛り込んでいます。
こうした教育施策を通じて、組織全体としてのリスク意識の醸成を図るとともに、従業員がガイドラインやルールの背景を理解し、自律的に判断・対応できる素地を育むことが期待されます。形式的な運用にとどまらず、実態に即したガバナンスの実効性を高めるうえでも、教育は重要な役割を果たします。
3.今後の展望
本事例で取り組んだ、ガイドライン策定・リスクチェックプロセスの構築・教育コンテンツの整備といった活動は、いずれもお客さまの業務特性や目指す姿を踏まえ、段階的に進められました。こうした取り組みにより、現場での実効性を確保しつつ、ガバナンスレベルの着実な向上を図っています。
AIガバナンスの枠組みは、いまだ手法が成熟しておらず、今後も技術や社会的動向の変化に即した柔軟な対応が求められます。とりわけ、ガバナンスが実効性を伴って機能することは、現場でのAI活用が進むなかで極めて重要です。特に、生成AIのように業務と密接に関わる技術においては、変革を支えるうえでもAIガバナンスの重要性が一層高まっています。
NTT DATAは、AI技術の導入から実運用に至るまでの幅広い支援経験と、現場起点での実践知を強みに、多様な業種・業態のお客さまに対し、AIガバナンスの高度化を支援してまいりました。今後もAIガバナンスコンサルティングサービスを通じて、お客さまの状況や目標に即した現実的かつ持続可能なアプローチを提供し、安心・安全なAI活用の実現に貢献してまいります。
エンドースメント
NTT DATA様には、AIガバナンスの整備にとどまらず、ユースケースの創出支援やAI基盤の高度化など、攻めと守りの両面にわたり、AI推進体制の立ち上げ段階から幅広くご支援いただいております。AIガバナンスに関する最新の知見だけでなく、銀行の実務やりそなグループのシステムに対する深い理解に基づいたご支援をいただけていることは、大きな安心と成果につながっております。今後のさらなる生成AIの利活用拡大に向けて、引き続き戦略的なパートナーとして、ともに取り組んでいけることを期待しております。
株式会社りそなホールディングス グループ戦略部CFT(IT改革)部長 薄井孝尚
株式会社りそなホールディングス IT企画部 グループリーダー 加藤太郎
AIリスク診断から対策実行・運用まで支援する「AIガバナンスコンサルティングサービス」を提供開始についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/073100/
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