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2025.5.16

生活するだけで健康になれるまちを目指す「健康まちづくり」の取り組み

まちづくりには様々な目的や方向性があるが、医療費の増大など近年話題の問題から注目が集まっているものに「健康まちづくり」がある。「生活するだけで健康になれるまちを目指す」というこの考え方について、本記事では国内外の事例をもとに掘り下げつつ、デジタル活用の可能性を考える。
目次

はじめに

こんにちは。NTTデータの“City Life Experience”という、都市空間における体験、まちづくりに関わる取り組みを行うチームで、コンサルタントとして活動している山野です。
今回は、ヘルスケア領域のプロジェクトに参画した際に調査した、”健康×まちづくり”についてお話したいと思います。

背景:現代の都市環境が抱える健康課題

現代の都市生活は利便性の向上と引き換えに、私たちの健康に様々な課題をもたらしています。例えば、自動車依存による歩行機会の減少、長時間労働による慢性的なストレス、そして住環境や地域社会の変化による孤立や心理的な不安感の増大などが代表的です。
さらに、高齢化が進む日本では医療費の増加が深刻な問題です。2023年度の医療費は過去最高の約47.3 兆円に達し、国民皆保険制度の持続性に対する懸念が高まっています。
こうした中で、都市に暮らす人々の健康を守り、医療費の抑制と生活の質の向上を両立するために、日々の生活そのものが自然と健康につながるような環境づくりが求められています。

健康まちづくりとは

「健康まちづくり」とは、都市・地域の空間設計や制度のあり方を通じて、住民が無意識のうちに健康を促進できる環境を整備する取り組みのことです。
健康まちづくりを進める、全国地方公共団体の首長研究会「スマートウエルネスシティ首長研究会」(※)では、健康まちづくりを、以下のように整理しています。

  • 出かけたくなるまちが整備される(生きがいにつながる活動もできる)
  • まちを(あるいはまちで楽しむことによって)自然と歩いてしまう
  • 目的地への移動として公共交通が便利に整備されおり、結果的に歩いてしまう・歩かされてしまう

一言で表すならば、「出かけたくなる目的や、回遊したくなる魅力に溢れ、交通手段として自家用車以外の選択肢が十分にあるまちを目指すこと」と考えられます。

(※)

日本の超高齢社会によって生じる様々な社会課題を、地方公共団体自ら克服するため、健康をこれからのまちづくりの基本に据えた地方公共団体の首長による研究会。平成21年11月に発足。

健康まちづくりの取り組み

こうした健康まちづくりの具体的な取り組みとして、ここでは以下の3つをご紹介します。

(1)ウォーカブルなまちづくり

まちのあり方について車中心から“人中心”へ見直されるような動きがあり、こうした徒歩や自転車で移動しやすい空間では、自然と日常の運動量が増え、ひいては経済活性化や人々の健康、地域コミュニティの強化に繋がることが考えられます。具体的なまちづくりの取り組みとして、「WEDO:Walkable(歩きたくなる),Eyelevel(まちに開かれた),Diversity(多様な人の),Open(開かれた空間が心地いい)」というキーワードを掲げて、中心市街地と周辺地域を繋ぐBRT・LRTの導入や、車道から歩道への再整備、ベンチや広場などの滞留空間の創出などがあります。
さらに、こうした都市計画やその実現に向けて、実証実験やイベント施策の検討、及び効果検証に向けて人流データを用いた分析や、公共交通状況の見える化などのデジタルの取り組みも散見されます。

大丸有エリアを対象とした「Oh MY Map!」では、エリア内を周回するバスの位置情報がリアルタイムで確認できる
(出典:大丸有エリアの情報提供サービス「Oh MY Map!」がバージョンアップ、回遊性向上に向けたコンテンツを追加 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP

(2)健康を意識しないでも運動できる仕組み

運動する時間が取れない忙しい現代人に向けて、日常動作に運動を組み込む仕掛けや、結果的に運動に繋がる遊びなどが注目を集めています。例えば、通勤・通学路にある音が鳴る階段や、デジタルスタンプラリー・謎解きなどがあります。他の取り組みにも通ずる考え方ですが、健康を目的とするのではなく、こうした仕掛けにより目的を健康からずらすことで、知らず知らずのうちに歩数等の身体活動量を高めることが期待できます。

ストックホルムで行われたピアノの音が鳴る階段の社会実験では、導入結果として、エスカレーターではなく階段を利用する人が66%も増えたと言われている
(出典:https://youtu.be/2lXh2n0aPyw

(3)プレイスメイキング

まちにおける余白(=公開空地)を有効活用して、イベントの開催や、ベンチ・遊び場への転用等、空間の用途を見直すことで、まちに出かける目的を増やしたり、いきいきと過ごせる場を創出したりすることに繋がると考えられます。特にイベント開催については、イベント主催者が目的にあった公開空地を容易に見つけられることが、公開空地の有効活用を促進するにあたって重要と考えられます。そのための仕掛けとして、エリア内に散在する公開空地の情報をプラットフォーム上に集約して、空き状況確認や予約、他用途の事例の閲覧等を可能にするような工夫がなされている事例もあります。

なんば駅前の空間は元々車道だったが、現在は広場に変わり、テーブルと椅子が置かれたり、イベントが開催されていたりする

まとめ

健康まちづくりは、都市のハードとソフトの両面から「暮らすだけで健康になれる環境」を目指す総合的な取り組みです。道路や公園などの空間デザインに加え、スマホアプリやデータ活用などのデジタル技術によって、住民の行動変容を楽しく・継続的に促すことが可能になってきています。
また、人の健康を中心に考えていくため、地域ごとに住民や来訪者などまちにとってのユーザーの理解が必須となります。私が所属するCity Life Experienceチームでは、こうしたユーザー調査を踏まえ、デジタルの力を最大限に活かし、企画から実行までを一気通貫で推進することで、よりよいまちづくりに取り組んでいきたいと考えています。
こうした取り組みに少しでもご関心をお持ちのまちの運営者の皆様、ぜひお気軽にご連絡ください。具体的な課題や構想について、ぜひ一度お話をさせていただければと思います。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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