中国・吉林市において、ビッグデータを活用した「渋滞予測・信号制御シミュレーション」の実証実験で渋滞緩和効果を確認

ニュースリリース/NTTデータ

2015年1月23日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩本 敏男、以下:NTTデータ)は、2014年11月10日から12月12日までの約1カ月間、中国・吉林市において、吉林市ならびに吉林市の現地企業である吉林市伯瑞信息技术有限公司注1と協力して、渋滞予測・信号制御シミュレーションの実証実験を行いました。

今回の実証実験では、吉林市のバスに搭載された車載端末を通じて収集した8路線約200台のプローブ情報(各車両の位置や速度等の情報)と道路・交通量調査等の統計情報を組み合わせて渋滞予測・信号制御シミュレーションを行い、シミュレーション上の事前評価で最適化した信号設定を市内中心部の交差点の信号機に反映して交通を制御し、渋滞緩和およびバス運行時間の改善効果を検証しました。その結果、対象エリアを走る車両の平均速度が向上し渋滞緩和が実現でき、対象となるバス路線の運行時間が平均で7%、最大で27%改善されたことを確認しました。

NTTデータでは、今回の実証実験の成果をベースに、信号制御最適化ソリューションの実用化を目指します。また、日本国内および世界各国で導入が進められているスマートシティ関連プロジェクトへの展開を図り、2020年度末までに国内外で100億円の売上創出を目指します。

背景

近年、情報技術を活用して、より利便性の高い社会を実現するスマートシティの取り組みが世界各国で進んでいます。中国・吉林市においても、市内中心部の交通渋滞やそれに伴うバスの運行の遅れなどが社会課題となっており、スマートシティ計画を他都市に先駆けて推進しています。本計画では、プローブ情報によるバスの運行管理システムや、交通監視カメラを通じた交通モニタリングシステムなどの高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS注2)等、交通管理・管制の取り組みが進められてきました。渋滞の緩和には、日々刻々と変動する交通量を勘案し信号制御を適切に行うことが一つの有用な手段です。しかしながら、信号制御の変更によって万が一渋滞が発生した場合に市民生活に大きな影響を与えることから、これまでは信号制御を変更することによるリスクの発生を懸念する声がありました。また、信号制御を決める信号パラメーター注3が多岐にわたり、最適なパラメーターを選択することが困難という課題もありました。

信号制御に関わるこれらの課題に対して、NTTデータでは、2011年よりビッグデータを活用した並列分散処理技術に基づく大規模交通シミュレーションの技術開発を行ってきました。本実証実験では、交通シミュレーションにより渋滞緩和効果を事前評価することで、これら信号設定変更のリスクを下げ、また、シミュレーション上で信号パラメーター候補を複数回試行することで最適な信号設定を選択するアプローチにより、渋滞緩和に取り組みました。なお、本実証実験は、吉林市にとって実際の交通環境に適用するITSの実証実験として初の取り組みです。

実証実験の概要

本実証実験では、車載端末を通じて収集されたバス車両約200台のプローブ情報と道路・交通量調査の統計情報を組み合わせて、渋滞予測・信号制御シミュレーションを行いました。シミュレーションでは、渋滞緩和につながる最適な信号パラメーターを生成し、その渋滞緩和の効果を評価しました。その中で、渋滞緩和効果が見られた信号パラメーターを用いた信号設定を吉林市中心部の6カ所の交差点の信号機に反映しました。効果検証では、交差点通過平均速度・バス移動時間などを信号制御の最適化前後で比較し、渋滞緩和とバス運行時間の改善効果を評価しました。

  • 実験期間:2014年11月10日~12月12日
  • 実験エリア:中国吉林省吉林市中心部
  • バス路線数:8路線
  • バスのプローブ情報:約200台
  • 交差点:6カ所
  • 信号機:60機
【写真】

図1:実証エリア付近の渋滞の様子

【図】

図2:交通シミュレーションに基づく信号制御

実証実験結果

  1. 1.バス運行時間の改善

    バス運行時間の改善度合を検証した結果、実験における信号パラメーターの変更により、交差点間の連動や青信号が点灯している時間の長さを改善したエリアにおいて、バスの運行時間が平均で7%、最大で27%改善しました。

  2. 2.交差点周辺の渋滞改善

    交差点ごとの渋滞状況を分析した結果、実験において信号間の連動を考慮して信号を制御した交差点で、平均速度が1~2km/h程度改善しており、交通が実験前よりもスムーズに流れていることが分かりました。

以上の結果から、交通シミュレーション技術によって、交通渋滞が緩和できることを確認しました。なお、本実験にて顕著な渋滞の改善結果が得られたため、今回の実験で行った信号制御の設定等は本実験後も吉林市で利用されています。本実験のさらなる展開として、実証エリアを拡大して最適化対象と範囲を広げたり、タクシーGPSの活用等情報源を増やすなどの取り組みによって、吉林市全体でさらなる渋滞緩和を実現することが期待されています。

今後について

NTTデータでは、今回の実証実験の成果をベースにさらなる検証を進め、信号制御最適化ソリューションの実用化を目指します。またNTTデータではすでにプローブ情報収集技術を開発していますが、プローブ情報が不完全な場合にも対応できるようカメラ動画の分析やセンシングデータの組み合わせにより、交通状況を再現する技術開発に取り組みます。

今後は、2020年に向けた国内のスマートシティ化や、世界各国で導入が進められているスマートシティ関連プロジェクトへの本技術の展開を図り、信号制御最適化ソリューションをベースとしたシステム構築により、2020年度末までに国内外で100億円の売上創出を目指します。

注釈

  • 注1吉林市伯瑞信息技术有限公司は、大连伯瑞信息技术有限公司の子会社および大连百易软件股份有限公司の関連会社です。
  • 注2高速道路交通システム(ITS)とは、人と道路と車両間の情報ネットワークにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題を解決する交通システムです。
  • 注3信号パラメーターの種類には、青→黄→赤→青の一連の長さを決めるサイクル長、交差点での青時間の配分を決めるスプリット、信号間の青時間の開始時間のずれを決めるオフセットがあります。
  • 文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
風間
TEL:03-5546-8051

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
技術開発本部
サービスイノベーションセンタ
雨宮、米森
TEL:050-5546-9741