データヘルスの取組結果(一部速報)について ~糖尿病でありながら治療を放置していた方への受診勧奨により、医療機関への受診が倍増~

ニュースリリース/NTTデータ

2015年7月31日

埼玉県保健医療部
埼玉県国民健康保険団体連合会
株式会社NTTデータ

平成26年度から新たに開始したレセプト(診療報酬明細書)データ等を活用した糖尿病性腎症重症化予防対策の実施状況(未受診者への受診勧奨の結果など)を報告します。

事業の概要

レセプトデータ等から糖尿病が重症化するリスクの高い方を抽出し、医療機関未受診の方には受診勧奨、通院中の方には生活指導を実施

対象者:市町村国民健康保険の被保険者(18市町、990,778人)

受診勧奨の結果概要

実施期間:平成27年1~3月 実施者:3,283人 うち受診者:698人(21.3%)

  • 平成26年度に事業を開始した18市町の実施結果(速報)

生活指導の実施状況

実施期間:平成27年6~11月(実施中) 実施者:845人

  • 平成26年度に事業を開始した18市町の実施状況

1.事業の概要

糖尿病性腎症は、人工透析が必要となる最も大きな原因となっています。人工透析に移行すると、週2~3回の通院が必要となり、医療費も年間一人当たり約500万円と、移行前の10倍に高騰します。

そこで、埼玉県では特定健康診査やレセプトのデータを活用して、糖尿病が重症化するリスクの高い方(ハイリスク者)が人工透析に移行するのを防止するため、新たに糖尿病性腎症重症化予防対策事業を開始しました。

この事業では、市町村が事業主体となり、ハイリスク者のうち、医療機関未受診の方や治療中断されている方への受診勧奨、また、糖尿病で通院中の方への食事・運動等の生活指導を行います。

26年度には19市町で事業を開始、27年度には11市町が加わり、現在は30市町が実施しています。(別紙1)

なお、26年度に事業を開始した19市町のうち入間市は、市単独で事業を進めているため本集計には計上しておりません。

2.受診勧奨の結果概要

18市町において、まず該当者あて医療機関への受診を勧奨する文書を送付しました。その後、重症化が進んでいると思われる方には電話や訪問による再度の勧奨を行いました。

平成27年1月から3月にかけて実施した受診勧奨者数のうち3,283人について、3月分までのレセプトデータを分析して、医療機関への受診状況を確認しました。

この3,283人のうち、27年1月から3月にかけて医療機関を受診された方は698人(21.3%)でした。内訳は、未受診者は2,741人のうち611人(22.3%)、治療中断者は542人のうち87人(16.1%)が受診しました。

1か月当たりの医療機関受診者の割合は、受診勧奨後の27年1月から3月の3か月間(月平均8.2%)の方が、それ以前の6か月間(月平均4.1%)に比べて、2倍の方が受診しており、受診勧奨による一定の効果が認められます。(別紙2-1)

これは受診勧奨の通知文や案内パンフレットにより該当者自身の重症化リスクをしっかり伝えたこと、また、症状が重いと思われる方には電話等により再度の勧奨を行ったことによるものと推測されます。(別紙2-2)

糖尿病は自覚症状なく進行するため、治療を受けないままにしておくと、糖尿病性腎症など重大な合併症を併発するほか、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす恐れがあります。このように重症化すると多額の医療費がかかります。未受診者、治療中断者に医療機関を受診していただくことが合併症の防止や将来の医療費適正化につながります。(別紙2-3)

現時点では、18市町の698人が医療機関を受診したことにより症状が維持された場合、治療を受けないまま合併症が進行した場合と比較した将来(20年間)にわたる医療費適正化効果を約10億円、年平均約5,000万円と推計しております。

受診勧奨による医療機関への受診結果は、27年5月分までのレセプトデータを分析し、今後、確定させる予定です。

また、27年度に事業を開始した11市町については、7月から9月にかけて受診勧奨を実施しております(戸田市は3月に実施済み)。

なお、事業を担当する市町村担当者からは次のような意見・要望がありました。「勧奨の結果を受託事業者から市に速やかに報告してもらえれば、対象者からの相談に迅速に対応できる」、「個人個人に対応した受診勧奨の文書内容であったため、受け取った方から大きな反響が寄せられた」

3.生活指導の実施状況

18市町において、生活指導の必要がある方2,436人に対して事業への参加案内通知を送付したところ、845人(34.7%)から参加申し込みがありました。参加者に対し、かかりつけ医と連携し、平成27年6月から半年間、保健師等が食事や運動等の生活習慣を改善する支援を行っています。

生活指導の実施により、参加者が生活習慣改善の自己管理ができるようになった場合、症状の維持・改善が可能となります。

現時点では、18市町の845人に生活指導を実施したことにより症状が維持された場合、人工透析移行防止により将来(20年間)にわたる医療費適正化効果を約34億円、年平均約1億7,000万円と推計しております。

生活指導終了後(今年度末)には、参加者の糖尿病性腎症の進行状況や人工透析移行防止による医療費適正化効果などを取りまとめる予定です。

また、27年度に事業を開始した11市町については、生活指導の必要がある方を選定中で、9月から生活指導を実施する予定です(戸田市は6月から実施中)。

なお、事業を担当する市町村担当者からは次のような意見・要望がありました。「通院中の方だけでなく、受診勧奨により新たに医療機関を受診した方も生活指導の対象に加えるよう検討いただければありがたい」、「生活指導の参加申し込みの時期から、実際の指導まで約2か月間かかることから、この間に生活指導を受ける意欲を失い、辞退する方もいた」

4.県からのメッセージ

  1. 1.糖尿病はとても恐ろしい病気ですが、重症化を防止できることも分かっています。糖尿病の不安がある方は治療を放置せずに、一歩踏み出して、ご自身の健康を守りましょう。
  2. 2.今回の受診勧奨は、ご自身の糖尿病の悪化を防ぐ重要なお知らせです。受診勧奨では一定の効果が認められましたが、医療機関を受診していない方も未だ多く残っています。医療機関を受診していない方は速やかな受診を強くお勧めします。
  3. 3.受診勧奨されていない方におかれましても、糖尿病がご心配の方、治療中断中の方は、お近くの医療機関に御相談ください。
  4. 4.県では、県民生活の質(QOL)を維持し、医療費の高騰を抑制するため、本事業の全県への拡大を目指していきます。医療関係者、行政関係者の皆様には、本事業のご理解、ご協力をお願いします。

5.その他

糖尿病対策に関する情報(県 保健医療政策課)

  • 糖尿病対策

別紙

本件に関するお問い合わせ先

埼玉県保健医療部
保健医療政策課
新都心医療拠点・医療プロジェクト推進担当
唐橋、深澤
TEL:048-830-2407(直通)
E-mail:a3510-16@pref.saitama.lg.jp

埼玉県国民健康保険団体連合会
保健課
杉山、進藤
TEL:048-824-2539(直通)
E-mail:hoken@saikokuhoren.or.jp

株式会社NTTデータ
広報部
戸田、風間
TEL:03-5546-8051(直通)