中国・貴陽市において、ビッグデータを活用した「渋滞予測・信号制御シミュレーション」の実証実験で渋滞緩和効果を確認

ニュースリリース/NTTデータ

2016年5月31日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩本 敏男、以下:NTTデータ)は、中国・貴陽市において貴陽市政府協力のもと、中国科学院ソフトウエア研究所(Institute of Software, Chinese Academy of Sciences、所在地:中国・北京市、所長:Prof. Zhao Chen、以下:ISCAS)と、交通管理用のカメラデータの解析結果を用いた交通シミュレーション・信号制御技術の実証実験として、基となるデータの収集を2016年2月22日から3月6日まで行い、その後解析を実施しました。

本実証実験では、貴陽市の交差点に設置された約100台の交通管理カメラを通じて収集したのべ100万台に関するデータ分析結果を基に渋滞予測・信号制御シミュレーションを行い最適化した信号設定を、貴陽市内の新市街である観山湖区内の12交差点の信号機約100機に反映して交通を制御し、渋滞緩和および交差点における交通処理量の改善効果を検証しました。その結果、対象区間における移動時間が平均で10%、最大で51%改善されたこと、交通処理能力も平均34%改善したことを確認しました。

NTTデータでは今回の実証実験の成果を受け、さらに対象エリアを拡大した実証実験を今夏に実施し、信号制御最適化ソリューションの実用化を目指します。また、日本国内および世界各国で導入が進められているスマートシティ関連プロジェクトへの展開を図り、2020年度末までに国内外で100億円の売り上げ創出を目指します。

背景・共同研究の概要

近年、世界各国において、情報技術を活用したより利便性の高い社会を実現するスマートシティの取り組みが進められています。中国・貴州省の省都である貴陽市においても、経済成長や都市化の進展により、市内中心部の交通渋滞が課題となっています。すでに貴陽市では交通管理用のカメラを通じた交通モニタリングシステムや最新のネットワーク化された信号機を導入した交通管制システムなどの高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)による公共交通管理や道路交通管制の取り組みが進められてきました。

NTTデータは、交通ビッグデータを用いた渋滞予測・信号制御シミュレーション技術の開発にこれまでも取り組んでおり、2014年には中国・吉林市においてバスGPSデータを用いた渋滞予測・信号制御シミュレーションによる渋滞緩和の実証実験を行い、その効果を実証しました。

ISCASは、中国における交通に関する知見はもとより、統計分析処理における高度な技術を保有しており、研究拠点として貴陽市に分院を設立しています。交通分野においては、交通流量の把握等を目的とした交通管理用のカメラを用いたビッグデータの分析技術を保有し、貴陽市において実運用を行っています。

NTTデータとISCASは、2014年4月に設立した中国科学院ソフトウエア研究所とNTTデータ技術開発本部との共同研究センターにおいて、交通管制の自動化を目指した大規模かつリアルタイムのカメラデータ処理技術と交通シミュレーションによる渋滞予測・信号制御を組み合わせた渋滞緩和技術を開発し、実証実験に取り組みました。なお、交通ビッグデータの活用による渋滞緩和実験は、貴陽市にとって初の取り組みとなります。

実証実験の概要

本実証実験では、貴陽市内の新市街である観山湖区内12交差点の交通管理用カメラデータで撮影されたのべ100万台の車両を分析して得られた交通ビッグデータについて、渋滞予測・制御シミュレーションを行いました。この中で渋滞緩和につながる最適な信号パラメーターを生成し、最も渋滞緩和効果が見られた信号パラメーターを同交差点内の信号機約100台に反映しました。効果検証では、通勤経路の移動時間や対象交差点を通過する車両台数を基にした交差点処理能力を信号制御最適化前後で比較し、渋滞緩和効果を評価しました。

  • 対象エリア:中国・貴陽市観山湖区12交差点
  • 交通管理用カメラの台数:約100台
  • 対象信号機:約100機
  • 対象車両数:のべ100万台
【図】

図1:貴陽市観山湖区内の渋滞状況および交通管理用カメラ

【図】

図2:交通管理カメラと交通シミュレーションの連携に基づく信号制御

実証実験結果

  1. 1.運行時間の改善

    対象エリアを通過する車両をナンバープレートで識別し対象区間を通過する車両の移動時間を検証した結果、実験における信号パラメーターの変更により、交差点間の連動や青信号が点灯している時間の長さを改善したエリアにおいて、移動時間が平均10%、最大51%改善しました。

  2. 2.交差点処理能力の改善

    交差点ごとの単位時間あたりの処理台数を分析した結果、信号間の連動を考慮して信号を制御した交差点で、平均処理台数が平均34%程度改善しており、交差点の処理能力が実験前よりも向上していることが分かりました。

以上の結果から、交通管理カメラのデータ分析と交通シミュレーション技術の組み合わせによって、交通渋滞が緩和できることを確認しました。なお、本実験にて顕著な渋滞の改善結果が得られたため、本実験のさらなる展開を貴陽市政府から期待されており、実証エリアを拡大して最適化対象と範囲を広げたり、タクシーGPSの活用等情報源を増やすなどの取り組みを検討の上、新たな実証実験を今夏に予定しています。

【図】

図3:実証対象の交差点と実験結果

今後について

今回の実証実験の成果を受けた今夏の実証実験後、交通管制システムとのリアルタイム接続による渋滞制御の完全自動化を目指します。また、本実証実験も含めた実績を基に交通シミュレーションと信号制御技術を組み合わせた渋滞緩和ソリューションを実用化し、日本国内および世界各国への展開などを通じて、スマートシティの実現に向けた取り組みを推進していきます。

さらに、世界各国で導入が進められているスマートシティ関連プロジェクトへの本技術の展開を図り、信号制御最適化ソリューションをベースとしたシステム構築・運用により、2020年度末までに国内外で100億円の売り上げ創出を目指します。

参考

ISCASについて

ISCASは、中華人民共和国国務院直属の研究機関である中国科学院の管轄先の一つであり、コンピューター科学、ソフトウエアを研究する唯一の国立研究所です。1985年に中国の国家研究機関である中国科学院内に設置され、中国のシリコンバレーとも呼ばれる中関村に位置しています。約750名のメンバーで構成され、コンピューターサイエンス理論やソフトウエア先端技術とその応用に関する研究を行っているほか、人材育成先として、コンピューター科学、ソフトウエアプロセスの昼間制専門学位の修士育成機関や、電子情報分野における初めての博士育成機関、ならびにポスト博士課程科学研究拠点も設置しています。これまでに、基礎的な研究からビジネスに近い研究まで幅広く技術開発を行っており、海外の大学・研究機関や企業との連携も積極的に進めており、米、欧、日、オーストラリアなど40数各国・地域との幅広い科学技術交流と連携関係を構築してきました。

注釈

  • 高速道路交通システム(ITS)とは、人と道路と車両間の情報ネットワークにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題を解決する交通システムです。
  • 文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
風間、甘田(かんだ)
TEL:03-5546-8051

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株式会社NTTデータ
技術開発本部
エボリューショナルITセンタ
津田、米森
TEL:050-5546-9741