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2023年11月1日トレンドを知る

製造業のデジタル投資トレンドと、SAPデータ活用の未来

ただ、モノを作って売れば良かった時代は終焉を告げ、製造業においても未来を見据えた戦略が必要となっている。この戦略を立てるカギとなるのが人・モノ・金の情報を一元管理・可視化し、経営・業務における意思決定の迅速化を実現する「基幹システム」だ。今回は、製造業におけるデジタル投資のトレンドや、SAP ERPデータ活用により得られる未来を、モデルケースとともに解説する。
目次

製造業におけるデジタル投資は「基幹系」に回帰中

私は日本に赴任してから一貫して製造業のお客さまを担当し、約3年半で100社弱に携わってきました。現在の現場の声を集約すると、製造業におけるデジタル投資は、基幹系に回帰していると実感しています。

みなさんもデジタルツールを導入し、事業に活用した経験はお持ちでしょう。しかし、せっかくデジタル投資を行ったものの「全社的にDX(デジタル変革)が広がらない」という意見も多く聞きます。その理由は、ERPのデータを活用できていない点にあります。

図1:製造業におけるDX投資のトレンド

図1:製造業におけるDX投資のトレンド

ERP周辺領域でクラウドサービスツールを導入したが、「一部の事業部だけの活用に留まってしまっている」「必要なデータが取り出せない」といった課題に直面。全社のDXを進めるためにERPを見直した結果SAP ERPのデータが必要となるお客さまが増加したことで、基幹系への回帰がトレンドとなっているのだと、私たちは考えています。

3つの領域へのデータ活用が求められている

さらに深掘りしてトレンドを見ると、3つの領域にデータを活用することが求められています。

(1)経営管理の高度化

製品・地域・機能軸で事業数値を可視化し、タイムリーに投資を行うための経営ベースでの活用

(2)SCM(サプライチェーン・マネジメント)の高度化

製品やサービスに関連する流れを管理・把握し全社のDX化を加速させる、収益向上のための活用

(3)サステナビリティ経営の促進

製品サービス単位でCO2排出量の改善や、現場での取り組み把握を行う、経営評価のための活用

全社で統一されている場合は問題ありませんが、そうでない場合は基幹システムが、データ活用に向けて大きな障壁となることも考えられます。事業所単位から全社単位でのDXをめざし、積み上げてきたデータを活用するためには、SAP ERPのデータが必須となるのです。

SAP ERP導入に向けた3つのアーキテクチャとアプローチ、そのメリット・デメリット

私たちNTT DATAでは、SAP ERPを「データを作る工場」だと捉えています。
SAP ERPによって作られたデータ(顧客、明細、販売ステータスなどの営業データ)は共通言語化され、可視化・分析が容易です。全社的に使うのか、一部で使うのかにより求められるアーキテクチャは異なります。SAP ERP導入に必要なデジタル投資は巨額になるため、NTT DATAでは3つのアプローチを用意しています。

図2:データ活用の4要素

図2:データ活用の4要素

(A)スモールスタート型

エクセル+分析ツールを用いて実施する方法

  • メリット:投資範囲が限定的で始めやすい
  • デメリット:エクセルでのデータ加工が必要なため手作業となり、柔軟性が低く作業ボリュームは大きい。まずは手軽にデータ活用を試したいという場合にオススメ。導入した業務で成果が見えるため、全社展開に向けて社内でのデータ活用への理解を促進できる

(B)全社データ活用先行型

サードパーティーによるクラウドサービスを使用し、データの収集・整形を行うシステム開発を伴う方法

  • メリット:カスタムメイドの仕組みに近く、お客さまの要望に応じた仕組みになるため、柔軟性が高い
  • デメリット:データ加工のボリュームが大きい。先行して横ぐしでデータを活用していきたいというお客さまに有効な手段。システム上に散らばるデータが明確になり、今後ERPをどうするか?という面についても検討が進みやすい

(C)二刀流型

SAP ERPとデータ活用プラットフォームをともに活用する方法

  • メリット:データの発生源においてデータを標準化し、分析軸・粒度が統一されるため無駄なデータ加工が不要。伝票の明細データなど必要な情報もすべて集約されるので、柔軟性が高く、分析も容易
  • デメリット:プロジェクトの難易度が高くなる。DX推進をERPから行いたいと考えるお客さまに適しており、持続可能なデータ活用への道を探りやすい

AIツールの活用やDX化により、成果を上げている事例

ここで、NTT DATAのソリューション&サービスによりDX化を進め、成果を上げている事例をご紹介します。

(1)日系化学大手メーカー様の場合

お客さまの課題は、計画・予測業務が熟練者に属人化されているというものでした。そこで分析ロジックを可視化して人材育成に生かし、計画・予測精度の平準化と業務の効率化をめざしました。
NTT DATAからは「スモールスタート型」を提案し、ひとつの事業部からAIツールの活用を開始。成果を積み上げたことで、全社へと展開しました。当社は技術支援のみを行いましたが、効果的にナレッジの蓄積と人材育成を実現できました。
今後の課題はデータ準備の自動化、AI人材の拡大、外部データの取り込みを想定しています。

(2)日系大手製造業様の場合

お客さまの課題は、度重なるM&Aにより基幹系システムがバラバラで、各国拠点の基幹系システムの刷新には多くの時間と予算を必要とするため、グループ横断での経営データ活用が困難であることでした。
NTT DATAからは「全社データ活用先行型」を提案し、横ぐしでの共通言語をMDM(マスタデータ管理)で作成しました。既存のデータやシステムへの影響を最小化することで事業・グループ会社に負担をかけることなく、データ活用を可能にする仕組みづくりを行いました。
今後の課題は、プラットフォーム活用の促進と、グループ全体へのさらなる展開です。そのために既存データ活用プラットフォームの廃止、複数のサードパーティクラウドツールについて開発を内製化が必要となります。

(3)日本大手自動車部品メーカー様の場合

お客さまの課題は、グローバルサプライチェーン・マネジメントの複雑化や競争激化、人に依存した海外事業経営へのテコ入れでした。
NTT DATAからはアーキテクチャに対し、製品・事業・地域軸での中長期戦略と、実行モニタリングを支えるマネジメント基盤の強化の、「二刀流型」のアプローチを解決策として提案しました。その結果、収益貢献度の高い製品と低い製品を迅速に見極められるようになり、収益を拡大しています。
今後の課題は、原単位精度の担保、予測型経営への変革、そして適正な価格折衝の実現です。

製造業の未来を切り拓く、NTT DATAのSAP ERPソリューション

製造業の未来を切り拓き、Intelligent Enterprise(最新の技術を使いこなし、持続可能で社会への貢献を高める企業)を実現するうえで、今後「データの一元化」と「全社のDX化」の実現は不可欠となるでしょう。

図3:「データの一元化」と「全社のDX化」の実現に向けて

図3:「データの一元化」と「全社のDX化」の実現に向けて

NTT DATAではグローバル体制のもと、SAP ERPソリューションを中心に、企業の情報基盤を最適化するさまざまなサービスを提供し、お客さまの状況に応じた柔軟かつ最適な提案を行っています。
データ活用にご興味のある方は、お気軽にお問合せください。

本稿は、2023年9月22日に「SAP NOW Japan」で行われた講演をもとに構成しています。

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