NTT DATA

DATA INSIGHT

NTTデータの「知見」と「先見」を社会へ届けるメディア

絞り込み検索
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
2024年4月10日技術ブログ

サービスの品質保証からDXの品質保証へ

これまでのシステム開発では、ソフトウェアやシステム自体の品質保証に重点が置かれていた。現在ではその領域に留まらず、システムを利用したサービスの品質保証が求められている。サービス品質にはこれまでにさまざまな研究が存在しており、それらを踏まえながら、DXの品質保証への活用に向けた取り組みについて紹介する。
目次

1.システムの品質からサービスの品質へ

これまでのソフトウェア業界では、開発したソフトウェアやシステムなどの品質に関心が集中していました。しかし、近年ではユーザーが満足する経験をして価値を得られることが重視されています。したがって、「正しいモノを作っているか」から「正しいコトを産み出せているか」へと視点を変えることが求められます。そのためには、システムの品質からサービス(ITサービス)の品質に目を向ける必要があります。

サービスとは

サービスという言葉はさまざまな場面で使われています。時には「何かを無料、または低価格で提供すること」のように使われることもありますが、正式な定義の一つとしてISO/IEC TS 25011(※1)では「ユーザーが達成したい結果を促進することにより、ユーザーに価値を提供する手段」とあります。同様に、ITサービスは「ITシステムをツールとして利用して、個人のユーザーまたはビジネスに価値を提供し、ユーザーまたはビジネスが達成したい結果を促進するサービス。」と定義されています。どちらも「価値を提供」がポイントであることが分かります。

サービスの特性

サービスについてはこれまで多くの研究がなされており、その中でサービスにはIHIP特性と呼ばれる4つの特性があると言われています。

  • 無形性(Intangibility)…形がない
  • 異質性(Heterogeneity)…品質にバラツキがでる
  • 同時性(Inseparability)…生産と消費が同時に起こる
  • 消滅性(Perishability)…残らない

ソフトウェアは形がないが故にその品質の測定や評価が難しいと言われますが、サービスにも「無形性」という特性があるため、同様に品質の測定や評価は難しいと言えます。また、「異質性」という特性もあるように、サービスの提供方法やサービスの構成要素、あるいはサービス提供におけるさまざまな状況などによって品質が変わってしまうことが分かります。したがって、サービスの品質を保証することも非常に難しいと言えます。

(※1)
ISO/IEC TS 25011:2017 Information technology Systems and software Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE) - Service quality models

2.サービスの品質保証に関連する研究・規格

サービスの品質保証に関しては、これまでにさまざまな研究や検討がなされ、その難題に対する解決策が提案されています。ここでは、代表的なものを紹介します。

SERVQUAL

SERVQUALはITが世の中に現れる前の1988年に発表(A.Parasuraman、Valarie Zeithaml、Leonard L.Berryによる学術研究者チームが提唱)された、一般的なサービスの品質を測定・評価する手法です。SERVQUALではサービス品質を「顧客の期待と知覚した成果の差」と捉えて、以下に示す5つの次元に基づいて品質を測定します。

  • 信頼性(Reliability)…顧客に約束したサービスを正確に信頼に値するよう遂行できる能力があるか
  • 反応性(Responsiveness)…どれほど進んで顧客を援助し、具体的問題に対処するか
  • 有形要素(Tangibles)…物的施設、設備内容、人間などの様子はどうか
  • 共感性(Empathy)…顧客のニーズに対する敏感さ
  • 確実性(Assurance)…従業員の知識と礼儀、信用を得る能力

ITサービス品質モデル

ITサービスに特化した品質として、ソフトウェアおよびシステム品質の国際標準である「SQuaRE(Systems and software Quality Requirements and Evaluation)」シリーズの中で、ISO/IEC TS 25011が策定されています。この規格名は「Service quality models」ですが、実際にはITサービス品質のモデルとして、下図に示す8つの品質特性とその副特性が定義されています。ISO/IEC 25010(JIS X 25010)で定義されるシステム/ソフトウェア製品品質のモデル(※2)と同様に、ITサービスを開発・提供する際の品質保証や品質管理を考える上で参考にすべきものと言えます。

図1:ITサービス品質モデル(ISO/IEC 25011)

図1:ITサービス品質モデル(ISO/IEC 25011)

ITサービスマネジメント

サービス品質に関連する技術として、IT業界で最も広く使われているのが、ITサービスマネジメントに関するベストプラクティスをまとめたガイドブック「ITIL®(Information Technology Infrastructure Library)」です。ITIL®はサービスの運用管理でよく使われる印象があるかもしれませんが、サービスの戦略や設計などサービスライフサイクルの各段階の管理を対象としています。また、ITサービスマネジメントにおけるサービス品質保証ではSLA(Service Level Agreement)がよく用いられます。サービス提供者とサービス利用者との間でサービスの品質を含めた目標をSLAとして明文化した上で合意し、SLAを達成するための管理を行います。

DX時代のITサービス品質

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が2021年3月に「DX時代のITサービス品質に関する検討」を公開しました(※3)。この中では、DX時代のITサービス品質に関して、品質マネジメント活動や品質モデルを整理しています。さらに、12の顧客品質特性と31の副特性に対して利用者(知覚品質)や提供者(開発品質、提供品質)の立場から評価する具体的な品質評価観点をまとめています。

(※2)
JIS X 25010:2013システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)-システム及びソフトウェア品質モデル
(※3)DX時代のITサービス品質に関する検討

https://www.jeita.or.jp/japanese/pickup/category/2021/vol38-09.html

3.サービスの品質からDXの品質へ

NTT DATAでは、サービス品質に関するこれらの研究・検討成果を活用、あるいは参考にして、DXの品質を第三者として診断する取り組みを行っています。

DXにおける品質

記事「DXの品質保証ってなんだろう?」では、DXの構成要素に基づいてDX品質保証の考え方を整理した「DX4Layerモデル」を紹介しました(図2)。

図2:DX4Layerモデル

図2:DX4Layerモデル

DXの品質を保証するには、DX4Layerモデルの4つの層に対して以下の2つが必要です。

  • 4つの層それぞれの品質を保証する。
  • 4つの層の品質が目的(何のためにDXに取り組むのか)に沿ってつながっていることを保証する。

4つの層のうち、「開発/技術視点(第3層、第4層)」における品質保証については、システム開発において方法論が確立しており、多くのノウハウやプラクティスが蓄積されています。また、4つの層のつながりを保証する方法については「質の高いDXを実現する「つながり」の極意」で紹介しました。

サービス品質保証をDX品質保証に活用

そして、残っているのが「ビジネス視点(第1層、第2層)」における品質保証で、そこに活用できるのがサービス品質保証の考え方や手法です。図2の中にある「DXサービス」が生み出した価値がユーザーやビジネスにとって真の価値となっていることを保証するために、サービス品質保証の研究成果やノウハウを活用します。
これらの考え方や手法を用いて、DXに取り組んでいるお客さまのDX推進部門を第三者的に診断して、取り組みにおける問題点の可視化とDXの成功に向けた改善策の提案を行っています。

お問い合わせ