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2024年4月11日トレンドを知る

現場リーダーが語る企業価値を生み出すデータ活用の姿

多くの企業で理解されつつあるデータ活用の重要性。しかし、実際の推進ではさまざまな壁にぶつかるケースも少なくない。本稿では、公共・社会基盤分野、金融分野、法人分野の現場をリードする社員とNTTデータにおけるSnowflake ビジネスの主幹責任者が、お客さまが持つデータ活用に関する悩み、要望、課題解決のポイントを探り、データ活用のあるべき姿を提言する。

*Snowflake:米Snowflake社が提供するデータクラウド。データクラウド内で、サイロ化したデータを統合し、管理されたデータを簡単に検索して安全に共有しながら、さまざまな分析ワークロードを実行できる。
目次

現場が抱えるデータ活用プラットフォームの導入・利用における課題とは

20年来にわたり、データ分析・活用の最先端で業界を牽引してきたNTTデータは、これまで、大小さまざまなデータ活用プラットフォームを数多く構築してきた。現在、データ活用プラットフォームは、DX・デジタルといった潮流やクラウド技術をベースとした新しいサービスなどにより、大きな変革の真っただ中にある。

これまでのデータ活用プラットフォームは、『データ収集・連携』『加工・蓄積』『分析・活用』が典型的なレイヤー構成だった。NTTデータでは、ここに『データアプリケーション』を加えている。その理由を、NTTデータ デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部 Snowflakeビジネス推進室で室長を務める村山 弘城は、こう説明する。

「最近は、BI(ビジネスインテリジェンス)やAIの結果を業務に適用し、ビジネス価値を生み出すことが求められています。そのために必要なのが、データアプリケーション領域。NTTデータがお客さまに提供するデータ活用プラットフォームでは、データソースからデータを収集し、BIやAIを搭載したデータアプリケーションで分析。分析結果を活用することで、企業のDXやビジネスを根底で支えています」(村山)

このデータアプリケーション以外にも、データ活用に必要なデータの収集・蓄積、加工・整形、分析に必要な機能を最適なSaaSを組み合わせて構築する『MDS(Modern Data Stack)』といったトレンドも生まれており、機能特化した技術やソリューションが進化し続けている。そんな変革期にあるデータ活用プラットフォームの導入、活用において、お客さまはどういった課題を抱えているのだろうか。

NTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業部 課長の本村 昭太郎は、主に公共・社会基盤分野でデータ活用業務に携わっている。担当するお客さまの傾向から、ミクロとマクロ、両視点から課題を取り上げた。

「ミクロの視点だと、データが最適化されていないことで生まれる運用面の課題があります。大企業は、DWH(データ・ウェア・ハウス)やDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)といった、データを保管、整理するデータソースシステムを所有しています。いわば、データの源泉で、ここからさまざまなデータを引き出しているのですが、そもそも、データ活用を前提として集めていないので、最適化されていなかったり、クオリティが低かったり、遅延が発生したりしています。マクロの視点では、データ分析がどれだけビジネスに寄与したかを数値化しづらい。データのROIと表現していますが、ROIが示せないことで、日本のデータ活用は一歩先に進めないと感じています」(本村)

データ、組織という目線から課題を見極めるのは、NTTデータ 第三金融事業本部 保険ITビジネス事業部 課長の安土 広志。お客さまのデータ活用基盤プラットフォームの立ち上げから、データマネジメント、分析まで伴走している。

「データの目線では、人材とデータの“整備”が必要です。データ分析が活性化すると、データを所有する部署やシステムを把握するコンシェルジュのような存在が求められます。こういった人材の整備は欠かせません。また、本村さんも話したように、データクオリティが低いので、クレンジングの前処理などの手間がかかります。その手間を削減するためにもデータの整備が重要です。

組織の目線では、収集・蓄積されたデータを分析・活用する管理部署である『データスチュワード』の問題があります。多くの企業では、この役割を設定していると思いますが、データ活用が進むほどデータスチュワートに判断や調整が委ねられ、中央集権型に陥ります。その結果、データスチュワードに負荷がかかりすぎてボトルネックになり、ベクトルが抑制方向に向かってしまう。そうならないためにも、データを所有する部署に、クオリティの担保やデータリネージの重要性を理解してもらうことが重要です」(安土)

食品や製薬といったプロセス系製造業のお客さまを中心にデータ基盤の構築などを手掛けているNTTデータ システムインテグレーション事業本部 システムインテグレーション事業部 課長代理の二本松 良輔は、「経営層の判断でデータ基盤を導入したけれども、うまく活用できていない現場が多いと感じます。DX推進組織と現場、その意識のズレによって、全社的にデータ活用が進まないといった課題は珍しくありません」と指摘した。

各部署が共通の景色を見せるバリューツリーによる可視化

現場のリーダーだからこそ見えるデータ活用の課題点。では、これらをどう解決していけばよいのだろうか。そのひとつが『バリューエンジニアリング』という取り組みだ。

村山は「データ活用、データマネジメントは、さまざまなメンバーが絡んでおり、非常に複雑。その構造を見える化して、KPIを定義し定量的に評価するための取り組みがバリューエンジニアリングです」と語る。概要は、以下の図表に記しているが、最大のポイントは『バリューツリー』を描くこと。

バリューツリーとは、データ・基盤/Analytics/業務システム/業務オペレーション/ビジネス価値といったレイヤーを整理して、ビジネス価値創出や経営目標に至るつながりを明確化したもの。それによって、経営層からビジネス部門、データを提供する各部署、データを加工するデータエンジニア、そして、データ分析を行うアナリティクスエンジニアまで、すべての組織において横断的な取り組みを可能にする。

「ツリー構造にすると、同じデータによって共通の景色を見ながら会話ができます。例えば、データを保有する組織が事業部からデータ提供をリクエストされたときも、そのデータをどこで活用して、どのようにビジネスにつながるのか価値が見えるので、やりがいを持てます」(本村)とその価値を述べる。

村山も「IT部門やデータエンジニアは、他の部門からすると何をやっているのか分かりにくいといった声もあります。バリューツリーによって可視化されれば、全社のモチベーションが上がり、よりデータ活用が活発化すると期待しています」と同意する。

データ活用を成功させるために、組織があるべき姿とは

現場リーダーからのもうひとつの提言は、組織のあるべき姿のために、経営層、ビジネス部門、IT部門のそれぞれが、しっかりとした考えを持つことだ。二本松は、「企業や組織によって、データ活用に対するステージが異なります。ステージが異なれば、打ち手も異なる。それを知って、適切なアクションを起こす必要があります」と提言し、それぞれのステージについて具体的に話を移した。

「最初のステージは、ビジネス部門が変革の意識を持っていない状態です。次のステージは、変革の意識は持ったけれど、何に着手していいか分からない状態。次に、着手はしてみたが、うまくいかないステージがあります。最後は、ビジネス部門が自走化していくなかで、シナジーを発揮していくステージ。例えば、最初のステージでの打ち手は、DX推進部門がファクトと熱い気持ちでビジネスを前に進めていくこと。サポート的な組織ではなく、主体性のある強い意識を持たなくはいけません」(二本松)

安土は、「ミニマムなことから始めるのが大事です。ひとつでも分析テーマがあれば、そこで小さな成功体験をつくる。その成功をきっかけに、DX推進部門が、他のテーマを挙げて、さまざまな部門に横展開を行い、協力者を増やす。それによって、データ活用の必要性を感じるコミュニティが全社に広がり、経営層もデータ活用の意味を認識することができます」と続ける。

「データ分析は難しいと捉える社員は多いかもしれません。それは、データサイエンティストが行う高度な分析です。まずは、簡単なBIツールを使い、自分たちの部署のデータがどう使えるのかをライトに実感してもらう。それによって、ほかの部署との協力もやりやすくなります。いわば、データの民主化。コミュニティを広げるライト層の拡充は、全社のデータ活用には欠かせません」(安土)

二本松は、「ライト層の拡充のためには、標準化も重要な要素。典型的な分析ユースケースをテンプレート化し提供することで、データを入れ替えるだけで同じように分析できるようになり、現場の社員がデータを活用するハードルを下げられます」と指摘する。

「Moving forward in harmony」。経営層とIT部門、ビジネス部門の調和を図り前に進む

では、実際にデータ活用がうまくいっている企業では、どのような心構えで取り組みを行っているのだろうか。本村は自らのお客さまのなかで、「攻めの情報システム部」を実現している企業の考え方を紹介した。このお客さまは、「ビジネス部門がやりたいことは、企業のビジネスを盛り上げること。情報システム部やIT部門、DX推進部門が足かせになってはいけない」という目線で取り組んでいるとのこと。学ぶべきは、2点。全ての部門が同じデータを見ること。そして、技術革新に適応することである。

「DWHやDMPの構築において、誰もが同じデータを参照できるようにすることは、非常に重要です。もし、経営陣、IT部門、ビジネス部門が参照できるデータに違いがあれば、データに触れて活用する機会もやる気も減ってしまいます。先ほど、安土さんの言葉にありましたが、データの民主化が重要なのです。このお客さまは、それを体現しています」(本村)

もう一点は技術革新への適応であるが、データ活用領域の進化は日進月歩。その速さについて行けなくては、とても良い技術があっても、導入することはできない。新技術に対応するには、なにが必要か。それは、柔軟性である。本村は、「このお客さまは、守るべきところはしっかりと守りつつ、ビジネス部門が自由に動ける遊びの部分を切り分けて考える。そのおかげで、新しい技術にも適用できる柔軟なアーキテクチャーを実現しています」と語る。

「社員の皆さんがデータアプリケーションを利用することで、気軽にデータにアクセスして分析できるようになると、データ活用が盛り上がり、各組織に強い連携が生まれて、同じ目線でビジネスに取り組めるようになるはずです」(本村)

村山は、企業価値を生み出すデータ活用について、「ビジネス部門からのニーズがなければ、良いものはできない」と語り、このように総括した。

「先日、最強のデータ分析プラットフォームについて議論をしたのですが、その結果、ビジネス的にもうけるプラットフォームが一番いいものだという結論に達しました。私たちNTTデータは、どのような技術を使うかよりも、お客さまの経営にどれだけ寄与できるかを考えなければいけません。そのために、経営層の言葉をかみ砕いて、IT部門、ビジネス部門といった企業全体を強く連携させ、強い競争力の源をつくり続けていきます」(村山)

「Moving forward in harmony」。これはNTTデータのブランドスローガンである。NTTデータは、このスローガンの通り、お客さまの経営層とIT部門、ビジネス部門の調和を図り、前に進むお手伝いを推し進めていく。

本記事は、2024年1月26日に開催されたNTT DATA Foresight Day2024での講演をもとに構成しています。

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