インタビュー動画
ガス業界の課題解決へ導く、スマートメーター共同利用システム
――まず、ガス会社3社による共同利用システムの概要と、プロジェクトが立ち上がった背景について教えてください。
坂巻
私たちスマートインフラ事業部は、ガス・電力・水道といった都市インフラの事業者様に対して、ITを活用して課題を解決し、持続可能でスマートな社会の実現に貢献しています。現在開発しているのが、大手ガス会社様3社が共同で利用するガススマートメーターシステムです。
藤浦
従来、ガス業界では検針員が各家庭を訪問し、ガスの使用量を目視で確認するというアナログな方法が主流でした。しかし、人口減少に伴う人手不足や検針員の高齢化により、従来の方法を維持することが難しくなっています。
――労働人口減少の影響はガス業界にも及んでいるのですね。その他、ガス業界特有の課題もあるのでしょうか?
坂巻
はい。近年は地震などの自然災害も激甚化しており、災害時に遠隔操作でガスを閉栓・復旧できるレジリエンス(強靭性)の強化が求められています。こうした社会課題を解決するために、スマートメーターを導入し、遠隔監視検針・保安業務の自動化・高度化を目指すのが、このプロジェクトの大きな目的です。
――電力業界ではスマートメーター化が進んでいますが、その事例は参考になったのでしょうか?
坂巻
はい。電力業界では、すでにスマートメーター化が進んでおり、ガス業界もそれに追随する形でDXを加速させようとしていました。NTTデータには電力業界のスマートメーター化を支えた実績があり、今回もそのノウハウを活かして確実なシステム開発を行うことが期待されていました。
――電力業界でのノウハウはそのまま活用できたのでしょうか?
坂巻
一部は活かせましたが、全く異なる部分も多かったです。そもそも、電力業界とガス業界では業務の仕組みが違います。例えば、ガスの供給管を閉めるのと、配電盤から電気を止めるのでは、制御の仕組みが全く異なりますからね。
――プロジェクトは複数フェーズで進んでいると伺いました。全体の流れを教えてください。
坂巻
まず初期開発で共同利用システムを開発し、その後、各ガス会社様のスマートメーター設置計画に合わせて段階的に利用を開始する流れです。
藤浦
私は2021年の入社直後から一次開発に参加しました。当初は3社様のうちの一部事業者様をメインターゲットに開発を進め、二次開発では新機能追加と既存機能改修を行い、他のガス会社様も順次参画。段階的に開発規模が拡大していきました。現在は3社すべてが利用するフェーズに入っています。
坂巻
数千万台のスマートメーター接続に耐えうる性能はもちろん、段階的な利用開始に対応できる高い拡張性を備えたシステムにすることが求められていましたね。
――プロジェクトにおける主要な課題としては、どのようなものがありましたか?
藤浦
このシステムの最大の特徴は、単にスマートメーターを導入するだけでなく、それを支えるシステムを「共同利用」する点にあります。各社が個別にシステムを構築するのではなく、共通のプラットフォームを利用することで、開発・運用コストを削減し、業界全体の効率化を図ることが狙いです。しかし、複数のお客様が関わるということは、それだけ合意形成も難しくなるということでもあります。
坂巻
その通りです。1社だけが対象なら、そのお客様に向き合い、要望を実現できるシステム開発を行います。ですが、今回は三者三様に「やりたいこと」があり、あるお客様が求める要件を別の会社は必要としていない、というケースもありました。こうした場面で、どのように判断し、舵取りするかが私たちの重要な役割でした。
藤浦
一次開発フェーズでは3社様のうちの一部事業者様がメインターゲットだったため、意思決定は比較的スムーズでした。しかし二次開発からは3社が本格的に参画し、合意形成の難易度は格段に上がったと感じます。
坂巻
そうですね。各社の業務フローや要望が異なる中で、いかに一つのシステムに落とし込むかが大きな壁でした。お客様の「やりたいこと」の背景や業務の実態を正しく理解することから始める必要がありました。
失敗の許されない本番移行。チームの力が試された瞬間
――3社の要望が異なる中、どのようにプロジェクトを進めたのでしょうか?
坂巻
3社の要望をすべて個別に実装していては、共同利用システムとしてのメリットである標準化が損なわれてしまいますし、コストも肥大化してしまいます。かといって、システムの都合で画一的な仕様を押し付ければ、お客様の業務が回らなくなってしまいます。お客様それぞれの状況を理解しながら、「共同利用システムとしてのあるべき姿」をこちらから提案することも重要でした。
藤浦
私は一次開発の頃から各社の担当者が集まる会議に参加してきましたが、まさにその「仕様のすり合わせ」が最大のハードルでした。インターフェース設計やディレクトリ構成など、技術的な詳細部分においても、各社の業務フローや既存システムとの連携を考慮する必要があり、単純な多数決では決められません。
坂巻
そうですね。要望をそのまま聞くのではなく、「共同利用のメリットを最大化するためには、この部分は統一した方が合理的」「その代わり、ここは個社ごとの設定で吸収できるようにしましょう」といったように、お客様にとってのメリットを提示しながら、着地点を探っていきました。
――お客様の視点に立つことが求められたのですね。
坂巻
はい。私は結合試験から参画しましたが、過去のドキュメントを読み込み、社内の有識者やお客様にヒアリングを重ね、業務背景にある意図や想いを汲み取ることに注力しました。特にお客様にヒアリングを行う際には、ただ聞くだけではなく、自分自身の想像も膨らませながら「ありたい姿」を描き、お客様に寄り添って考えることを心掛けました。
――藤浦さんは二次開発からアプリグループ全体の統制を任されたそうですが、どのような壁がありましたか?
藤浦
当時の私は上流開発の経験が不足しており、通信モジュール以外のアプリケーション仕様についても知識を得る必要がありました。業務モジュールとネットワーク管理運用については既存の設計書を読み込み、設計経緯が不明瞭な箇所については初期メンバに問い合わせ、納得いくまで仕様調査を行いました。
――初めての役割で不安も大きかったと思いますが、周囲のサポートはいかがでしたか?
藤浦
不安はありましたが、過去にも一緒に仕事をしたことのある先輩社員がプロジェクトリーダであり、密に相談しながら進めることができました。自分自身の考えや判断軸を持ちながら必要に応じてリーダに相談することで、アプリグループ全体としての適切な意思決定を行えたと感じています。
――二次開発における最大の山場はどこにありましたか?
坂巻
二次開発における最大のミッションであり、最も困難だったのはシステムの本番移行です。すでに一次開発の段階でシステムの一部利用を開始していた事業者様がいたため、二次開発のリリースにあたっては、稼働中のシステムを止める時間を最小限に抑える必要がありました。具体的には、数日間のシステム停止期間内に、複数社分の膨大な既存データを新システムへ移行し、切り替え作業を完了させなければなりません。もし失敗すれば、検針や請求に影響し、社会インフラとしての信頼を損なう事態になります。絶対に失敗は許されない、というプレッシャーがありました。その一方で、社内のリソースが手一杯になっていたり、移行リハーサルが想定通りに終わらなかったり、移行リハーサルにおいて移行ツールに不具合が見つかったりと、社内には焦りの色が濃くなっていきました。
藤浦
突破口はチームの結束でしたね。専門知識を持つトップクラスのメンバが集中検討会を開いたり、維持保守などの他のチームからも有識者が駆けつけたり、それぞれの専門知識を持ち寄って課題解決に奔走しました。チームを超えてメンバが集まってくる様子は、まるで映画のワンシーンのようでした。
坂巻
私自身も、過去に別のプロジェクトで経験したシステム移行の知見を最大限に活用しました。万が一トラブルが起きた場合、どの時点までなら戻れるか、どうやって復旧させるか。こうした切り戻しのプランを徹底的にシミュレーションし、移行シナリオを細部まで再構築しました。
藤浦
あの時のチームの一体感はすごかったですね。担当領域の垣根を越えて、全員が「絶対に成功させる」という一つの目標に向かって動いていました。それに加えて、本番移行の際には、お客様に対してコストとリスクのトレードオフを包み隠さず説明し、熟考したうえで移行プランを検討したことも印象的です。コストをかけたり、システム停止期間を長くしたりすれば移行の難易度は下がります。しかし、あらゆる可能性を踏まえたうえでお客様が最も合理的な選択を取れるように、私たちは複数のプランを提案し、共に最適解を導き出しました。だからこそ、困難な場面はあったものの、お客様の理解も得られ、最終的には無事にリリースを迎えることができました。
持続可能な社会に向けた大きな一歩。ユーティリティ業界の未来を切り拓く
――数々の困難を乗り越えてサービスインを迎えた今、どのような成果や達成感を感じていますか?
藤浦
無事にサービスインを迎え、ガス会社様3社の経営層より、「この3社共同利用システムは画期的な取り組みであり、持続可能な社会の実現に貢献する新しい風になる」という言葉をいただきました。自分たちが苦労して作り上げたシステムが社会を支える重要な基盤として認められたのだと実感し、胸が熱くなりました。
坂巻
私も同感です。このシステムが稼働したことで、実際にエンドユーザーの皆様の手元に届くガス検針票の基となるデータが処理され、災害時の安全確保にも役立っています。私自身も一人の生活者としてガス料金の明細を見た時に、「自分たちが関わったシステムが動いているのだ」と感じられるのは誇りです。社会インフラという、生活に欠かせない当たり前を支えているという実感は、何ものにも代えがたいですね。
藤浦
個人的には、お客様の担当者から個別で感謝のメールをいただいたことも嬉しかったですね。自分の仕事が誰かの役に立ち、社会に貢献できているという手応えは、この仕事ならではの醍醐味だと思います。
――プロジェクトを通じて実感したNTTデータの魅力について教えてください。
坂巻
問題に対して仲間たちが一丸となって立ち向かう姿勢が大きな魅力であり、強みだと実感しました。NTTデータには、別のチームのメンバであっても、困りごとがあれば協力してくれる文化があります。まさに「One Team」で課題に対処できることが、私たちの最大の武器です。そして今回のプロジェクトでは、お客様目線での開発もNTTデータらしいところだと改めて感じました。私たちは要望をそのまま形にするだけではなく、「本当にやりたいこと」を考え抜きます。今回もヒアリング内容を社内に持ち帰り、メンバたちで「こういうことではないか」と真剣に議論していました。
藤浦
おっしゃる通り、チームの結束力やQCDに対する高い意識はNTTデータの特徴です。移行フェーズで課題が発生し、移行チームだけでは検討が進まなかった時には、維持保守担当の有識者も巻き込みながら、最終的には無事に移行を完了させることができました。プロジェクトが一丸となり、お客様への価値提供を最優先に動く姿勢に、私自身も強く感銘を受けました。
――最後に、このプロジェクトの今後の展望と、お二人がこれから挑戦したいことについて教えてください。
坂巻
今回のプロジェクトは、大手3社による共同利用という形でしたが、これはあくまでスタート地点です。今後は、この共同利用モデルを他の業界にも展開し、ユーティリティ業界全体のプラットフォームとして育てたいですね。各社が個別にシステムを作るよりも、共同利用の輪を広げた方が、コストメリットも大きく、運用ノウハウも共有できます。私たちが作ったこのシステムを、日本のユーティリティ業界のデファクトスタンダードにしていきたいという夢を持っています。
藤浦
技術面でも、まだまだ挑戦の余地があります。スマートメーターから収集される膨大なデータを活用すれば、エンドユーザー向けに新しいサービスを生み出せる可能性があります。また、開発現場でも、新しい技術を積極的に取り入れていきたいと考えています。現在、試験的に「GitHub Copilot」などの生成AIを活用したコーディング支援を導入し始めていますが、今後はこれを本格化させ、開発効率や品質をさらに高めたいです。
坂巻
新しい技術にも挑戦しながら、ガス・電力・水道といった社会インフラを支える仕事ができることが、この部署で働く大きな魅力です。生成AIを利用して開発効率を高めれば、その分、お客様への価値提供のスピードも加速できます。労働人口減少という日本全体の課題に対し、ITの力で現場作業を低減させるなど、社会課題解決の一端を担っていきたいです。
藤浦
そうですね。多くのステークホルダーと関わりながら、自分の意思をシステムに反映したい方、社会貢献を実感したい方にとっては、非常に魅力的な環境だと思います。
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人口減少や災害への対応という社会課題に挑む、ガススマートメーター共同利用システム。その成功の背景には、高度な技術力だけでなく、お客様の立場に寄り添い最適解を導き出す誠実な姿勢と、困難な局面でもQCDを守り抜くチームワークがありました。
「社会インフラを支える」という誇りを胸に、課題解決に全力を注ぐメンバたちの熱意が、これからの日本のエネルギーインフラを進化させていきます。技術と信念で未来を切り拓く彼らの挑戦は、この先も続いていきます。


