インタビュー動画
0:00 オープニング
0:26 プロフィール
0:36 PJのアウトラインと担務
2:54 基盤構築での注力ポイント
6:02 PJを通して得た成長実感とは
複雑な体制とCDK採用など、数々の課題が立ちはだかる
──2025年6月にリリースされた、マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載における社会DX&コンサルティング事業部のミッションを教えてください。
本島
私たち社会DX&コンサルティング事業部は、デジタル庁様が進めるマイナンバーカード機能をスマートフォンに搭載するプロジェクトにおいて、カードの発行・失効管理を担う認証機能(以降、Iシステム)の基盤構築を担当しました。
――プロジェクトの全体像や流れについても教えていただけますか。
本島
プロジェクトの全体像としては、デジタル庁様をお客様とし、NTTデータのデジタルソサエティ事業部がマイナンバーカード機能のスマホへの搭載・ライフサイクルを管理する中核プラットフォーム(Sプラットフォーム)の開発・基盤・運用を担当。そしてSプラットフォームと連携するIシステムは別の開発パートナー企業が担当しており、私たちはこのIシステムの基盤構築と運用を受託しました。私たちはプロジェクトの初期から参画していたわけではなく、基盤構築フェーズに入るタイミングで、ガバメントクラウドの知見を持つ部署として声がかかりました。
――プロジェクト参画にあたって、どのような課題がありましたか?
本島
私たちのミッションは、これまで関わりのなかった開発パートナー企業と連携し、タイトなスケジュールの中で QCD を遵守しながら、予定通りにサービスを開始し、安定運用につなげることでした。難易度の高いチャレンジになることは、当初から予想していました。また、国家的プロジェクトの重要な基盤部分を担うため、高度な技術力も求められます。そこで技術面はクラウドの有識者である川村さんに、管理面はリーダーとしての成長も見据えて大井さんをアサインしました。
――川村さんと大井さんは、どのような業務を担当しましたか?
川村
私はテクニカルリードとして、技術面全般の方針策定と課題解決を担当しました。特に今回は、デジタル庁様が整備・運用する政府共通のクラウド基盤であるガバメントクラウド上で構築を行うこと、そしてインフラをコードで管理するIaC(Infrastructure as Code)を採用するという技術的なチャレンジがありました。中でもCDK(Cloud Development Kit)を利用することも決まっていたため、大規模開発で使いこなすには高度なスキルと統制が不可欠でした。CDK導入におけるマネジメントも、重要なミッションの一つでした。
大井
私はリーダーとして、構築・試験フェーズの進捗管理や品質管理、そしてお客様や他チームとの調整を担当しました。約50名のメンバーをまとめ、プロジェクトを前に進める役割です。現場のフロントに立ち、川村さんが描いた技術的な構想を具体的なタスクに落とし込んで実行していくポジションでした。
──プロジェクト開始後、どのような障壁がありましたか?
川村
私はアサインされた当初、「社会的意義の大きい、やりがいのあるプロジェクトだ」と思う一方で、不安もありました。ステークホルダーが多く、プロジェクトの経緯や全体像が掴みにくい状況で、決まっていない部分が多いことが最大の懸念でした。また、個人的な事情として、プロジェクト開始直後の5月に第一子の誕生を控えており、育児休業を取得する予定でした。「この高難易度プロジェクトで、立ち上げの重要な時期に自分が抜けても大丈夫だろうか」という心配もありました。
大井
川村さんが育休に入ることを見越し、私も同じタイミングでプロジェクトに参画し、業務を引き継げるよう並走しました。私がどれだけ自走できるかが、プロジェクトの成否を左右するというプレッシャーは大きかったです。ただ、スキルの高いメンバーが揃うチームをどう動かし、どう統制するか、会議体やレビュー体制をどう設計するかなど、プロジェクト序盤でしっかり検討できたおかげで、スムーズにチーム運営を進めることができました。
本島
私は今回、二人が動きやすい環境づくりに徹しました。本プロジェクトは規模が大きいことに加え、私自身が別に複数プロジェクトを兼任しており、すべてを把握することは不可能だからこそ、川村さんと大井さんに権限移譲し、判断に迷う時や、現場だけでは解決できない問題が出た時には私が前に立つというスタンスを取りました。
技術的制約や物理的障壁。幾重もの困難をチームで乗り越える
──今回のプロジェクトで、技術的に苦労した点はどこでしょうか?
川村
技術面と管理面が密接に関わるのですが、最も大きかったのはIaCツールとしてCDKを導入することとその統制です。CDK は非常に強力なツールである一方、「自由度が高すぎる」という側面があります。インフラをコードで記述できるということは、メンバーのスキル差や書き方の癖がそのまま反映されてしまうということでもあります。特に今回は約 50 名が開発に関わる大規模プロジェクトでした。もし全員が独自の書き方をしてしまうと、正常に動かない箇所が出たり、可読性が下がって後の運用・保守に大きな影響が生じたりします。「作って終わり」ではなく「保守できるコード」にする必要がありました。個々のスキルが高かったからこそ、適切な統制が必須でした。
――個々のスキルに依存せず、「誰が作っても同じものができる」状態を作る必要があったのですね。
川村
はい。しかし、参画当初はチームごとの役割分担が曖昧で、コーディング規約や設計ルールも存在していませんでした。そこで既存チームからメンバーを選抜し、CDK の統制を担うバーチャルチームを立ち上げました。そのチームを中心に、コード規約、スタック分割、連携方式、デプロイ方式などを詳細に整備しました。また、「どのように書くべきか」を明確にするためサンプルコードも提供し、デプロイの中心役としても活躍してもらうことで統制を進めました。
――川村さんはテクニカルグレードであり、クラウドの有識者でもありますが、過去の経験が活かせたことはありますか?
川村
以前、別プロジェクトで CDK を採用した際、事前にルールを固めずに走り出してしまったことで多くの問題が発生した経験があります。今回はさらに規模が大きく、関わる人数も多い。過去の反省から、「統制をしっかり整えてから進めないと後で大きな負債になる」と強く感じていました。今回 CDK の統制に特に注力したのは、その経験があったからです。
――プロジェクト序盤で、川村さんが育休に入った後、引き継いだ大井さんはどのような苦労がありましたか?
大井
チームの統制やルール策定については川村さんと密に連携しながら進めましたが、構築方針が固まり、デプロイが安定化してからは、各種テストを実施しながら、アプリケーション起因の仕様変更に対応していきました。今回は外部の開発パートナー企業がアプリケーション担当であることから、通常以上に調整が複雑でした。その中で、サービス全体への影響を見据えながら、より良い形を模索していきました。
川村
私が育休から復帰した時、状況が劇的に変わっていたわけではありませんが、少なくとも前に進むための体制は整っていました。課題は山のようにありましたが、「何をすればいいのかわからない」という状態ではなく、方針が明確だったということです。そこからは開発パートナー企業や、Sプラットフォームを担当する社内のデジタルソサエティ事業部に対して、こちらから積極的にアラートを出し、調整を進めていきました。
本島
補足すると、Iシステムと Sプラットフォームは運用方式を統一する必要があったため、デジタルソサエティ事業部との横連携も重要でした。私はデジタルソサエティ事業部側の課長と連携し、どのように調整していくかを継続的に相談していました。
大井
また私には、「ドキュメントを残す」という重要なミッションもありました。今回の CDK 関連を含め、有識者の知見やノウハウをドキュメント化し、アセットとして残すことは組織にとって大きな価値になります。プロジェクトにはクラウドの経験者だけでなく、オンプレミスやガバメントクラウドに詳しいメンバーなど、多様な人財が参画していましたが、良好な関係性を築きながら、ドキュメント化にも取り組みました。
――その他、ガバメントクラウド特有の制約などもあったのでしょうか?
大井
はい。ガバメントクラウドはセキュリティ要件が非常に厳しく、利用できるサービスや設定に制限があります。
川村
「なぜそれが必要なのか」「セキュリティをどう担保するのか」。技術的妥当性とリスクを整理し、関係者間の合意形成を図る交渉も重要な役割でした。いわば、ガバメントクラウドの仕様と現場の要件の間に入る“通訳”のような仕事も多かったですね。
──また、リリース直前には物理的制約による苦労もあったそうですね。
大井
その通りです。特に本番環境のアクセス制限には苦労しました。セキュリティ上、本番環境の操作は特定の運用拠点からしか行えません。それまでリモート中心で進めていた作業が、2月以降は物理的に移動しなければならず、メンバーやお客様との調整も必要になりました。「この作業をするには、特定の部屋に行き、特定の端末を使う必要がある」という物理的制約が、スケジュールの逼迫に拍車をかけました。
川村
運用拠点では本番環境を操作可能な作業部屋への入退室や持ち込める物品も厳しく制限されています。これまでは難易度が高い作業をする際は有識者含む関係者すべてがPC 上の資料や画面を共有しながら作業できていたのが、基本は作業部屋で作業者/確認者のみで完結させ、トラブル発生時等に第三者に意見を聞きたい際は一旦作業部屋を出て連絡しないといけないなど、さまざまな変化がありました。サービス開始が近づくにつれ、緊張感がだんだんと高まっていきましたが、チーム全員が「絶対に成功させる」という強い意思を持って取り組んでいました。
メンバーの成長とノウハウ継承も、プロジェクトの大きな成果
──リリースを迎えた時の心境を教えてください。
本島
当日は「何もトラブルが起きないように」と祈る気持ちでしたが、ニュースで大きく取り上げられ、デジタル庁様の記者会見で行われたデモンストレーション映像を見た時には、感慨深いものがありました。家族に対しても誇らしい気持ちになりましたね。
大井
私も、マイナンバーカードがWalletに追加される瞬間を見せていただいた時は感動しました。自分が苦労して作り上げた基盤の上で、この機能が動いているのだと思うと、すべての苦労が報われた気がしました。
川村
リリース直後は非常に多くのリクエストが集中しましたが、事前に綿密な負荷試験を重ねていたおかげで、システムはしっかりと耐えました。その後もいくつか改修はありましたが、大きなトラブルなく乗り切ることができました。
──今回のプロジェクトを通じて得られた成果や、ご自身の変化について教えてください。
大井
個人的には、これほど大規模なプロジェクトをマネジメントできたことが、大きな自信になりました。関係者の利害調整、困難な状況下での意思決定など、リーダーとして必要なスキルを一通り経験できました。今後、別のプロジェクトで同様の役割を任された際にも、この経験が確実に活きると思います。
川村
私にとって今回の体制は初めてで、「人に任せる」ことの難しさと重要さを学びました。これまでは自分の手を動かす場面が多かったのですが、今回は育休に入ることもあり、支援・サポートに軸足を置く役割でした。その点、優秀な大井さんが加わってくれたことは非常に心強かったですし、自分自身もサポート役として価値を発揮するやりがいを実感できました。このプロジェクトをきっかけに、別の案件でも支援的な立場を担うことが増え、キャリアの幅が広がったと感じています。
本島
私も川村さんと似た感覚を持ちました。私はこれまでプロジェクトマネージャとして細かく全体を把握し、そこに面白みを感じるタイプでした。しかし複数プロジェクトを兼任しながらすべてを把握することは不可能です。「信頼できるメンバーがいるなら、船頭が余計な口出しをしないことも重要だ」と自分に言い聞かせていました。
私の役割は、メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整え、障害物を取り除くこと。例えば川村さんから「CDK推進のために必要なこと」を求められたら、絶対に停滞させないように環境づくりを徹底する。大井さんに対しても、相談できるよう適切な有識者を配置するといった対応を行いました。優秀な二人がいたからこそ、私はその役割に徹することができました。
――プロジェクトを通じて感じたNTTデータの魅力や強みは何ですか?
本島
今回のチームには、クラウドのスペシャリストだけでなく、オンプレミス時代の基盤構築に精通したベテランや、事務処理が得意なメンバーなど、多様な人財が集まっていました。それぞれの得意分野を活かし、不得意な部分を補い合う「適材適所」のチームビルディングが機能していたと感じます。また協力会社との関係でも、NTTデータには「一緒にゴールを目指す仲間」として接する文化があります。一方的にやり方を押し付けるのではない姿勢が、信頼関係の醸成につながっていたと思います。
川村
本島さんの言葉に通じますが、NTTデータでは「必ずこうしなさい」と押し付けられることはありません。逆に、自分が挑戦したい技術や進め方があれば、積極的にチャレンジできます。今回のプロジェクトもまさにそうで、クラウドや IaC といった部分で自分が追求したい技術領域に挑戦させてもらえました。本当にやりがいの大きい環境だと感じます。
大井
私も同感です。私はキャリア採用で入社しましたが、周囲のサポートが非常に手厚く、「任せきり」にされることがありません。困った時には必ず支援してくれる人がおり、今回も他チームのメンバーが相談に乗ってくれる場面が多々ありました。組織の壁を越えて助け合う文化は、NTTデータの大きな強みだと思います。
本島
そして、これほど大規模な公共系プロジェクトに携われるのは、NTTデータならではの魅力です。今回のプロジェクトを通じてマイナンバーカードの普及に貢献できましたし、この取り組みは将来的に社会課題の解決にもつながっていくでしょう。また、技術面で新たなチャレンジを行い、大井さんのおかげでノウハウをアセットとして残すこともできました。デジタル社会の実現に向けた大きな一歩になったと感じています。
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未踏の領域に挑み、数々の困難を乗り越えて実現したマイナンバーカード機能のスマートフォン搭載。その裏側には、高度なクラウド技術、メンバーの力を引き出すマネジメント、部署を越えたチームワークがありました。「デジタルで社会課題を解決する」という情熱を胸に、プロジェクトメンバーたちはこれからも社会を変える挑戦を続けていきます。


