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日本最大規模の自治体ネットワークをクラウド時代の新モデルへ刷新。開発と運用で連携して挑んだ5年越しの挑戦

数万人の職員が利用し、行政の心臓部となる大規模自治体の行政情報ネットワーク。2024年、クラウド活用を前提とした新たなセキュリティモデル(β’モデル)への移行を伴う大規模更改プロジェクトが完了しました。5年前の更改時に直面した数々の困難を乗り越え、「今回は絶対にノートラブルで完遂する」という強い決意のもと、開発チームと保守運用チームが強力に連携。世界的な半導体不足から来る機器の納期遅延などのピンチを、いかにしてNTTデータのチーム力と信念で乗り越えたのか。プロジェクトを牽引した二人のキーマンに、その舞台裏と公共インフラを支えるやりがいを聞きました。

目次

Profileこの記事に登場する人

Project プロジェクトの流れ

日本最大規模の自治体ネットワークの刷新

日本最大規模の自治体における行政情報ネットワークを刷新。従来の厳格なセキュリティを維持しつつ、安全にクラウドやSaaSを活用できる「β’モデル」への移行に取り組みました。

開発と運用の連携とNTTデータのチーム力

高い水準の品質を実現するため、開発と運用が強固に連携。機器の納期遅延という問題に対してもリカバリープランを構築。数々の課題をNTTデータの結束力で乗り越えました。

ノートラブルのリリースと、未来への眼差し

万全の準備でノートラブルのリリースを実現し、行政のクラウド活用推進に大きく貢献。今回の成功を活かし、システムのさらなる進化や他自治体への広がりを見据えます。

インタビュー動画

0:00 オープニング
0:28 プロフィール
0:35 プロジェクトでの担務
2:18 困難だったこと
4:58 NTTデータの強みとは

行政の心臓部を担う巨大ネットワーク。クラウド時代を見据えた挑戦

――今回お二人が担当されたプロジェクトの概要と社会的意義について教えてください。

相田 恭兵 相田

私たちが担当したのは、日本最大規模の某自治体様における行政情報ネットワークの更改および保守運用プロジェクトです。庁舎の数十のフロア、および500箇所以上の事業所を接続し、数万人の職員様が日々業務で利用するという、まさに「行政の心臓部」とも言える最重要インフラです。このネットワークが万が一にも止まれば、行政サービスそのものがストップしてしまい、住民の皆様の生活に多大な影響を及ぼしてしまいます。そのため、極めて高い可用性と信頼性が求められるシステムになります。

大庭 佑樹 大庭

私は、現在保守運用のリーダーとして、24時間365日、絶対にシステムを止めないための維持管理を行っています。プロジェクトマネージャである上司のもと、相田さんが開発(更改)のプロジェクトリーダーとして新しい基盤を作りあげ、私が保守運用のリーダーとしてそれを守り続けるという役割分担で、この巨大なインフラを支えています。

――今回の更改プロジェクトでは、どのような背景や課題があったのでしょうか?

相田 恭兵 相田

大きな背景として、自治体のネットワークを取り巻くセキュリティ要件の変化があります。2016年に総務省から示されたガイドラインにより、全国の自治体ネットワークは「マイナンバー利用事務系」「LGWAN接続系」「インターネット接続系」の3つに分離する「三層分離(αモデル)」の導入が推進されました。これにより情報漏洩リスクなどは低減し、セキュリティは飛躍的に向上したのですが、一方で業務端末からインターネットへのアクセスが著しく制限されるという大きな課題が生まれました。

――セキュリティを高める一方で利便性が損なわれるというのは、よく指摘される問題です。

相田 恭兵 相田

はい。近年、行政のDX推進や、国が掲げる「クラウド・バイ・デフォルト」の原則が打ち出される中、従来のモデルでは最新のSaaSの利用やシステムのクラウドリフトが難しく、DXの足かせになってしまうという大きな矛盾が生じていたのです。

――そして今回の更改プロジェクトではセキュリティと利便性の両立が求められたのですね。

相田 恭兵 相田

その通りです。そこで今回の2024年度の大規模更改では、厳格なセキュリティレベルを維持したまま、業務端末からでも安全にインターネットやクラウドサービスに接続できる次世代の「β’(ベータダッシュ)モデル」へと移行することが最大のミッションとなりました。職員の皆様の業務効率(EX)を向上させ、住民の皆様のQOL向上に直接的に繋げることを目標に、最新のデジタル技術を活用した行政サービスの展開を実現しました。

――この大規模プロジェクトに臨むにあたり、お二人はどのような決意を持っていたのでしょうか?

大庭 佑樹 大庭

実は約5年前の更改時、サービスインまでに大変な苦労を伴った経緯がありました。そのため、この5年間はただシステムを運用するだけでなく、品質を積み上げていく期間でもあったのです。

相田 恭兵 相田

私自身は前回の更改プロジェクトの後半フェーズから参画したのですが、当時、苦労していた上司やメンバーたちの姿を目の当たりにしてきました。だからこそ、今回の2024年度の更改は、「絶対にノートラブルで完遂する」という目標のもと、強い決意を持って臨みました。単にシステムを新しくするだけでなく、NTTデータとしての真価が問われるプロジェクトだと捉えていました。

──前回の更改から2024年の更改までの5年間、どのようにして信頼を積み上げていったのでしょうか?

相田 恭兵 相田

2019年の更改から運用が開始された後も、私たちは追加開発や機能拡張を通じて、段階的にプロジェクトを実施してきました。そこでは、プロジェクトマネージャである上司のもと、基盤構築における品質管理のガイドラインを作りあげ、協力会社を含む全メンバーにルールの浸透と遵守を徹底させました。担当内で一つ一つ実績を積み重ねるとともに、2024年の更改に向けて品質の足がかりを作りあげていきました。

大庭 佑樹 大庭

保守運用の現場でも、次なる2024年の更改を見据えて改善を続けていきました。職員の皆様にしっかりと価値を提供できるよう、日々のインシデント対応のスピードと品質を徹底的に見直し、KPIを設けて定期的な分析と改善サイクルを回し続けました。また、お客様とのコミュニケーションにおいても、メールや電話で済ませるのではなく、お客様のもとへ足を運びながら適切に要望を汲み取っていきました。こうした日々の「当たり前のことを当たり前に提供し続ける」という地道な努力が、お客様の安心感に繋がると考えており、結果として今回の更改プロジェクトへ貢献できたのではないかと考えています。

開発と運用の強固な連携。お客様の信頼を必ず獲得し、絶対に成功させるという強い信念

――「絶対にノートラブルで完遂する」という目標に向け、具体的にどのようなアプローチをとったのでしょうか?

相田 恭兵 相田

最も注力したのは品質管理の徹底とステークホルダ間の連携強化です。大規模なインフラ構築で陥りがちなのが、スコープが広大すぎるゆえの役割分担の曖昧さです。担当として数年前から取り組んでいる、基盤構築における品質管理のガイドラインを通じ、NTTデータの社員だけでなく、協力会社の方々も含めたプロジェクト全体にもその考え方を深く浸透させることに注力してきました。

――従来の品質管理の仕組みや意識を変えることについて難しさはなかったのでしょうか?

相田 恭兵 相田

当初はもちろんありました。現場のメンバーからすると新たなタスクが増えることになるので、いかに納得感を持ってもらえるかが重要でした。また、現場の担当者レベルでいくら「品質を高めよう」と会話をしていても、会社単位の全体方針としてはなかなか動きません。「今後はこういう品質基準で、こういうアウトプットを出してほしい。そのためのコストや体制は我々が担保するから、ガイドラインに則り品質を第一に行動してほしい。」と会社間でトップ同士での合意形成を図り、意識の統一を図ってきました。

大庭 佑樹 大庭

保守運用の観点からも、今回は開発チームとの連携のあり方の意識を大きく変えました。通常、システム開発においては開発と保守運用はフェーズが分かれているため、どうしても組織間に見えない壁ができがちです。しかし今回は、保守運用設計の初期段階から、日頃の維持管理業務を行っているメンバーを開発側にアサインし、設計フェーズから主体的に入り込んでいきました。

――運用側から開発の初期段階に能動的に介入していったのですね。

大庭 佑樹 大庭

はい。相田さんたち開発チームに対して、「運用の現場目線ではこういう手順書があるとありがたい」「この結合試験の工程では、既存のシステムにこういう影響が出る可能性があるから、事前にこういう準備をしておくといい」といった、運用視点の知見を積極的に提供しました。また、本番移行時のバックアップ体制の構築や、運用メンバーによる試験工程の連携などにも、運用チームが長年蓄積してきたノウハウを総動員して開発を全面的にバックアップしました。

開発からのバトンタッチをただ待っているのではなく、運用側から能動的に関与し、お客様と直接調整を行い、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)に準拠した体系的な業務整理やルール決めを行うことで、後工程でのトラブルの芽を未然に摘み取っていったのです。

相田 恭兵 相田

そうですね。大庭さんの運用チームのサポートには本当に助けられました。従来であれば、こちらから運用側に対して「このフェーズでここを手伝ってほしい」とお願いしていたところを、大庭さんの方から主体的にサポートしてくれたのです。時には、こちらのスケジュールの都合で難しい依頼をしたこともありましたが、運用チームは嫌な顔ひとつせずスケジュールを組み換えて柔軟に対応してくれました。

──プロジェクト進行中、最大の障壁はどのようなものでしたか?

相田 恭兵 相田

最大の危機は、海外メーカーからのネットワーク機器の納品が大幅に遅延したことです。通常であれば1〜2ヶ月で納品されるはずの機器が、「納品までに5ヶ月かかる」と突如言い渡されました。全体のスケジュールを考えると、それでは本番稼働に間に合いません。プロジェクト全体が暗礁に乗り上げかねないピンチでした。

──その状況をどのように覆したのでしょうか?

相田 恭兵 相田

代理店の上層部だけでなく外資系メーカーの日本法人の社長に対し、上司であるプロジェクトマネージャが直談判を行いました。その間、私は協力会社と連携しながら、スケジュールや体制の組み換えについて現場責任者との調整を主導してきました。粘り強い交渉の結果、納期の遅延を短縮でき、かつ現場の体制も組み換えを行えたことで、遅延を吸収できるリカバリープランを策定・実行することができました。

大庭 佑樹 大庭

プロジェクトマネージャや相田さんが最前線に立ってメーカーとの交渉やスケジュールの立て直しという難所を切り拓いてくれる間、私は運用チームとして、どんな不測の事態になっても対応できるよう守りを徹底的に固めました。移行手順の精緻化や、万が一のトラブルに備えた切り戻しプランの準備など、自分たちができる最大限の準備を行いました。

──プロジェクトを推進してきた背景にはどのような想いや力があったのでしょうか?

大庭 佑樹 大庭

開発と運用、そして協力会社も含めたNTTデータのチーム力、そして自分たちが担当しているシステムに対する愛着と使命感がありました。私たちは、約30年以上にわたって今回の自治体のお客様のシステムを支えてきた歴史があります。私自身も入社した時から、今回のお客様を担当しており、そのシステムには並々ならぬ愛着があります。長い間、苦労を共にしてきたステークホルダや、過去の先輩メンバーたちの顔も頭に浮かび、「自分たちが大切に育ててきたシステムを、もっと良いものにしたい」という想いが原動力になっていました。

相田 恭兵 相田

大庭さんと同じく、私も強い使命感を感じていました。また、このプロジェクトに対する会社としての本気度も高く、必要な人員やリソースは惜しみなく投入し、強力なバックアップ体制を敷いてくれました。「絶対に最後までやりきる」というNTTデータならではの信念がプロジェクトを推進しました。

5年越しの想いが結実。フラッグシップとしての広がりを見据えて

──数々の困難を乗り越え、2024年度の更改は無事に迎えることができたのでしょうか?

相田 恭兵 相田

はい。これだけの大規模なネットワーク更改でありながら、目標としていた通り、ノートラブルでリリースすることができました。プロジェクトを総括する会議の場でも、お客様からは「本当に無風(ノートラブル)だった」という評価とともに感謝の言葉をいただき、胸が熱くなりました。

大庭 佑樹 大庭

私としても、このリリースの年度だけを頑張ったわけではなく、5年前から積み上げてきた運用改善活動や、お客様との密なコミュニケーションが実を結んだのだと非常に感慨深かったです。プレッシャーのかかる中、協力会社の皆様も含め、本当によく耐えて頑張り抜いてくれたと、チーム全員を誇りに思います。

──今回のプロジェクトを通じて、お客様や社会に対してどのような貢献ができたと感じていますか?

相田 恭兵 相田

やはり最大の成果は、お客様がクラウドやSaaSをスムーズかつ安全に活用できる「β’モデル」の基盤をしっかりと確立できたことです。これまで厳格なセキュリティの壁によって諦めざるを得なかった業務の省力化や、システムのクラウドリフトが一気に進む環境が整いました。そして現在、クラウド・バイ・デフォルトの方針通り、クラウドの利用は爆発的に増えています。今回のプロジェクトは単なるネットワークの更新ではなく、数万人の職員様の働き方を根本から変え、行政の効率化を推進し、最終的には住民の方々のQOL向上に直結する非常に意義のある仕事だと誇りに思っています。

大庭 佑樹 大庭

運用側の視点から言えば、冗長性や帯域がしっかり確保された、可用性の高い質実剛健なネットワークを相田さんたち開発チームが完璧に構築してくれたおかげで、サービスの影響が出にくいインフラを無事に提供できたと考えています。ネットワークというのは「いつでも使えて当たり前」のインフラですが、その「当たり前」を高い次元で提供し続けられる基盤ができたことは、社会に対する大きな貢献だと考えています。

──このプロジェクトを通じて実感した、NTTデータの魅力や強みは何でしょうか?

大庭 佑樹 大庭

NTTデータのチーム力はお伝えした通りですが、もう少し具体的に言うと、上層部がしっかりとビジョンを示してくれるトップダウンの環境、そして現場のメンバーが推進力を発揮できるボトムアップの両方がバランスよく融合している組織だと感じました。ビジョンが明確で、そこに向かって全員で力を合わせようというメッセージが隅々まで浸透していたからこそ、プロジェクトメンバーが一丸となることができました。

相田 恭兵 相田

それに加えて、比較的若い年次から、これほど社会的なインパクトが大きく、難易度の高い大規模プロジェクトのリーダーを任せてもらえる環境は、NTTデータならではの大きな魅力です。思い返せば、私も大庭さんも課長代理のポジションだった頃から今回のような責任の重い業務を担ってきました。社員に大きな裁量権を与えてくれる環境で日本のインフラを動かすダイナミズムを味わえるのは、他では得難い経験です。

──最後に、今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

相田 恭兵 相田

今回のβ’モデルへの移行は一つの大きなゴールではありますが、クラウド活用においてはまだ過渡期に過ぎません。次の5年、10年先の未来に向けて、ゼロトラストアーキテクチャの完全な実現など、さらなる利便性とセキュリティの向上を描いていく必要があります。また、日本全国の地方自治体では、急激な人口減少に伴う行政サービスの担い手不足が深刻化しており、システムの共同利用や共同調達が今後の大きなトレンドになっていきます。そうした未来を見据え、日本最大規模の自治体のネットワーク更新という今回の実績を「フラッグシップ」として掲げ、全国の様々な自治体の皆様をインフラ面から強固に支えていきたいです。

大庭 佑樹 大庭

私も今回確立した大規模ネットワークの運用ノウハウは、今後のゼロトラスト時代において非常に大きな価値を持つと考えています。今後は、このプロジェクトの運用ノウハウをベースに、AIを活用した業務のさらなる高度化など、お客様にこれまで以上の価値を提供できる提案に挑戦していきたいです。

数々の困難から決して逃げることなく、5年という歳月をかけてお客様との信頼関係を構築し、日本最大規模のネットワーク更改をノートラブルで完遂したNTTデータのプロフェッショナルたち。そこには、開発と運用の垣根を越えた強固なチーム力、そして30年以上にわたって大規模自治体の行政基盤を支え続けてきた強い使命感がありました。日本のデジタル化を根底から牽引する彼らの挑戦は、これからも続いていきます。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです