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2050年の社会保障の「あるべき姿」から新規ビジネスを描く。官民つなぐ社会保障フォーサイトが本格始動へ

少子高齢化、労働力不足など、深刻な社会課題に直面する日本。これまで厚生労働省をはじめとした公共分野の巨大システムを支え続けてきたNTTデータは、2024年度、「2050年の社会保障のあるべき姿」を描く新規ビジネス創出プロジェクトを始動させました。「社会保障フォーサイト」と呼ばれる構想からバックキャストし、行き着いたのは「リスキリング」領域でのプラットフォームビジネス。正解や前例が全く存在しない中、いかにして官民を巻き込み、新たなビジネスモデルを構築しようとしているのか。日本の社会保障の未来を自らの手で切り拓くプロジェクトメンバー3名に、その舞台裏と醍醐味を聞きました。

目次

Profileこの記事に登場する人

Project プロジェクトの流れ

2050年の「未来」からビジネスを描く

従来のシステム提供にとどまらず、「2050年の社会保障のあるべき姿」を描くフォーサイトを起点に、バックキャスト思考で新規事業を構想。前例のない中で、社会課題を解決する「共創パートナー」を目指します。

正解なき挑戦と「リスキリング」への着目

社内での仮説検証や人材事業者との意見交換を経て、「リスキリング」領域でのプラットフォーム構想という仮説に到達。正解がない中、経営層や有識者を巻き込みながら事業化に向けたロジックを精緻化しています。

官民連携で日本の社会課題を解決する

長年培ってきた大規模システム開発の信頼や、各種アセットを武器に社会課題の解決に挑戦。ホワイトペーパーの公開を皮切りに、将来は他領域への横展開も見据えながら、日本の社会課題解決に挑み続けます。

インタビュー動画

0:00 オープニング
0:25 プロフィール
0:35 プロジェクトが発足した経緯
1:28 現在の取り組みについて
3:45 プロジェクトのこれから

数々の社会課題を抱える日本。2050年の社会保障のあるべき姿とは?

――皆様が所属するワークライフセキュリティ事業部は、主に厚生労働省をお客様として社会インフラとなるシステムを提供していますが、今回、「2050年の社会保障のあるべき姿」を描くプロジェクトが発足した背景を教えてください。

安田 信仁 安田

私たちが向き合っている公共分野、とりわけ労働や雇用、社会保障といった領域は、少子高齢化、労働力不足、そしてそれに伴う財政圧迫といった深刻な社会課題に直面しています。厚生労働省の方々も、現状の政策課題や労働環境の課題解決に向けて日々全力で対応されています。しかし、当然ながら容易ではありません。仮に社会保障に関する課題が解決されないまま2050年を迎えれば、一人ひとりの安心が守られない「望まない未来」が到来します。

――たしかに簡単に解決できる問題ではありません。そこでなぜ、NTTデータが自ら立ち上がることになったのでしょうか?

安田 信仁 安田

社会の変化が極めて激しいこれからの時代においては、お客様と共に事業を推進し、日本の社会を根底から良くしていくための「共創パートナー」にならなければなりません。そのためには、私たち自身がまず「2050年にはどんな社会保障が必要なのか」という理想の未来像(フォーサイト)を規定し、そこから現在へとバックキャストして新たなビジネスや解決策を提案していく必要があったのです。

越野 壱樹 越野

これまでの社会保障は、生活保護のように「困窮者を保護する」というセーフティネットとしての役割が中心でした。しかし、2050年を見据えると、支え手となる生産年齢人口が激減するため、そのモデルだけでは社会が立ち行かなくなります。これからの社会保障は、AIやメタバース、デジタルツイン、BMI、ロボティクスといった最先端のテクノロジーを駆使して、働く上での身体的・時間的・空間的、そしてスキルの制約を取り払う必要があります。

――テクノロジーを活用して新しい社会保障のあり方を考えるということですね。

越野 壱樹 越野

その通りです。例えば、メタバース空間でのアバター労働や、ロボットによる身体補助などによって、障がいを持つ方や育児・介護中の方、高齢者など、誰もが安心と希望を持ち、自立して活躍できる仕組みを作らなければなりません。そうしたビジョンをまとめたものが「社会保障フォーサイト」であり、それを単なる絵に描いた餅で終わらせず、実際のビジネスへと昇華させることが私たちの役割です。

――これまでのシステム開発とは全く異なるミッションですが、率直にどのような苦労や戸惑いがありましたか?

佐藤 学 佐藤

これまで私たちが長年携わってきたシステム開発の世界では、「何を作るべきか」という要件が事前に定義されており、そこに向かってスケジュールを引き、品質を担保してデリバリーしていくという明確なプロセスとゴールが存在します。しかし、今回のビジネス創出には、そもそも「何が正解か」という羅針盤が全く存在しません。何に向かってどうアプローチすれば目指すべき目標に到達するのか、作業プロセスそのものから自分たちで考え、定義していく必要がありました。

越野 壱樹 越野

佐藤さんのおっしゃる通り、従来のシステム開発では「何を作るか」が事前に決まっているため、どうしてもお客様主導になりがちな面がありました。それが全面的に悪いわけではないのですが、事業部としての将来を考えた時、「お客様の御用聞きだけではいけない」という問題意識があったのも事実です。社会課題の解決に向けて、私たちの方からストーリーを提案していきたい。そんな想いを持ってプロジェクトに参画しました。

――「正解のないビジネス創出」というミッションに対して、最初はどのように取り組んだのでしょうか?

安田 信仁 安田

大まかな流れとしては、まず2050年のあるべき社会保障の姿を描き出し、そこにたどり着くために必要なことを特定すること。そして、ビジネスモデルとして成立させるためにロジックを磨いていきました。

越野 壱樹 越野

最初のブレストのテーマは、「ある国民的マンガの“ひみつ道具”が、2050年にどれくらい実現しているか」でしたね。実現が難しそうなものも多くありますが、例えばリアルタイムで翻訳する道具などは、既に実現しているとも言えます。どこまでの「絵空事」だったら実現できそうかを議論し合うのは楽しかったですし、「あったらいいよね」のレベルだと多くの人に納得してもらえるのですが、ビジネス企画として事業化のロジックを組み立てるのは非常に難しかったです。

佐藤 学 佐藤

私は以前、自分たちで企画したサービスをお客様に提案するプロジェクトに参画したことがあるのですが、その時には課題もターゲットも明確でした。しかし今回は、2050年の未来が対象で、ターゲットも明確ではありません。ビジネスを考えるための「とっかかり」がない状態でした。新規ビジネス創出のためのフレームワークは世の中にたくさんありますが、いざ「2050年の社会保障の未来からバックキャストする」という超上流のテーマに当てはめようとすると、完全には適用できませんでした。

越野 壱樹 越野

企画を出しても上司からの厳しい指摘ばかりで、最初は本当に前進しませんでした。ですが、すべて納得できる指摘ばかりで、「たしかにこのままではビジネスとして前に進められない」と、企画を練り直す良い機会になりました。

仮説検証と意見交換を経てたどり着いた、リスキリングという領域

――「2050年の社会保障の未来像」という抽象度の高い構想から「リスキリングプラットフォーム」という領域に絞り込むまでのアプローチを教えてください。

安田 信仁 安田

まず「2050年のあるべき社会保障の姿」を描くにあたり、ワークライフセキュリティ事業部の主軸である労働分野で検討を開始しました。マイナンバの活用という国としての方針に沿って、マイナンバを活用したグランドデザインまでは早期にたどり着きました。そこから具体的なビジネス領域の検討に入り、机上での市場調査や、社内外の様々な有識者へのヒアリングを通じて、何度も壁打ちを実施。その過程で、私たちが参入すべき領域の仮説をいくつも立てては検証し、壊してはまた立てるということを繰り返しました。

越野 壱樹 越野

その中で非常に大きな転機となったのが、民間の人材紹介事業者との意見交換でした。私たちが構想した仮説をぶつけ、労働・雇用市場の最前線にいる各社と議論を重ねる中で見えてきた事実がありました。それは、「単なる求人企業と求職者のマッチング市場は、マッチングだけを提供するサービス・価値が既に飽和状態にある」ということ。一方で、AI時代や産業構造の転換に対応するための「人材のリスキリング」については民間での対応が難しく、国を挙げて取り組んでもらいたいという共通の課題感でした。

佐藤 学 佐藤

リスキリングには高いニーズがあることが確認できた一方で、民間企業が対応するには難しさもあることがわかりました。ですが、NTTデータには各省庁のシステムを支えてきた歴史があり、「官」と「民」をつなぐ動きもできます。「誰でも、いつからでも、どんな仕事でも始められる世界」を実現するため、私たちの強みを最も活かせる領域はここにあると確信し、「リスキリング」という領域に焦点を絞り込んでいきました。

──「リスキリング」というテーマを選択した理由がよくわかりました。より具体的な企画プロセスについても教えてください。

越野 壱樹 越野

リスキリング領域におけるビジネス案の例としては、職業訓練のレコメンド、効果の可視化、受講歴の証明などを行うプラットフォームの提供が考えられました。そこで私たちは、特定業界の先行事例などを参照しながら、他業界に展開したらどうなるか、別のモデルは考えられないかなど、仮説検証を立てながら業界団体などのヒアリングを実施していきました。特に労働領域の有識者である佐藤さんには、アドバイザーとして様々なアドバイスをいただきました。

佐藤 学 佐藤

リスキリング領域での新規ビジネスを企画するにあたり、活用できそうな知識はすべて共有しました。例えば、「他業界で参考にできそうなモデルがある」「職業安定行政ではこういう仕組みになっている」「お客様はこういった点を気にするだろう」など、実行性のあるビジネスにするための検討要員として尽力しました。

──フォーサイトチームには兼務のメンバーが多い中、越野さんは専任としてプロジェクトに参画し、経営層レベルへのプレゼンや人材紹介事業者との意見交換などもリードされたそうですね。どのような苦労がありましたか?

越野 壱樹 越野

周囲は知識も実力も私以上の方ばかりです。ビジネス企画としては、そんな方々に納得してもらえるロジックとストーリーを作り、説明しなければなりません。厳しい指摘が返ってくるのは当たり前で、むしろ「いくらでも吸収できるチャンスだ」と自分に言い聞かせました。まずはとにかく自分の100%をぶつけてみて、思い切り打ち返してもらうことが成長につながると考えたんです。このプロジェクトに参画してから、「恥をかきたくない」といった気持ちは捨てましたね(笑)。

安田 信仁 安田

このプロジェクトでは統括部長や役員クラスなどと関わる機会が多く、「NTTデータがこのビジネスをやるべき」というロジックとストーリーが強く求められます。相当ストレッチされる環境で、実際に越野さんの成長速度は驚くほどでしたね。1ヶ月で目に見えて成長して、2ヶ月後には「別人か?」と見間違うほどでした(笑)。

越野 壱樹 越野

ありがとうございます。ビジネス企画としては社内外の様々な立場の方に検討内容を共有する場面が多いため、それぞれの立場と目線を意識しながら、一方的なコミュニケーションにならないように意識していました。例えば、仮説をぶつけた後には率直な感想をいただいたり、追加でどんな情報がほしいかなど、連続した対話や議論が生まれるような報告を工夫していました。また、プラットフォームビジネスにおいては、ステークホルダ全員にメリットがなければ成立しないため、「全員にとってのメリットの創出」にも頭を悩ませました。

佐藤 学 佐藤

大手人材紹介事業者の社長や役員との意見交換も、当時入社4年目だった越野さんが担当したのですから驚かれたかもしれませんね。今の越野さんは、誰に対しても安心して説明を任せられる人財に育っています。

安田 信仁 安田

ワークライフセキュリティ事業部の組織風土としても、若いメンバーの活躍を全力で推進したいと考えています。このチームは、まさにそうした思想が体現したものですね。個人的には、今後リスキリングのプラットフォームが事業化した際には、越野さんの名前をサービス名につけてもいいと思っているくらいです(笑)。

2050年は、自分たちの未来。社会保障フォーサイトに寄せる想い

――現在のプロジェクトの現在地と、今後の具体的なロードマップについて教えてください。

安田 信仁 安田

まずは私たちが描いた2050年の「社会保障フォーサイト」をホワイトペーパーという形で外部に公開し、NTTデータが描く世界観を広く世の中に認知していただく準備を進めています。初年度が仮説検証とディスカッションという「弾込め」の期間だったとすれば、これからは本格的な実行フェーズに入ります。ホワイトペーパーの発表をきっかけに、社外のステークホルダとの勉強会、ビジネスモデルのブラッシュアップ、そしてお客様への提案活動も始めていきます。

――ここから本格的に動き出すのですね。一方で、2050年という未来を見据えた時にはリスキリング以外のテーマもスコープに入ってくるのでしょうか?

安田 信仁 安田

もちろんです。現在はリスキリングという領域に集中して活動していますが、社会保障フォーサイトから導き出される課題はこれだけではありません。今回私たちが確立しようとしている「未来の社会課題から逆算してビジネスを作る」というアプローチを一つの型として定着させ、今後は他の潜在的な領域でも同様に仮説を立て、新たな領域を発掘し、ビジネスを連続的に拡大していくサイクルを作っていきたいと考えています。既存領域の延長線上ではないアプローチで、NTTデータの事業領域を押し広げていくことが目標です。

佐藤 学 佐藤

そうですね。日本社会は現在、多くの課題を抱えています。私たちが目指すのは、特定のシステムや一つの業務領域の改善にとどまらず、社会保障全体、ひいては日本社会の課題解決に直結するような提言やソリューションを提供し、「日本を根底から良くすること」です。NTTデータにはその可能性があると考えています。

越野 壱樹 越野

お二人のおっしゃる通りです。リスキリングの領域で事業化が実現した際には、そのプラットフォームや成功事例を他の領域にも横展開することで、同じような問題を抱える別の領域で事業を生み出せると考えています。

――社会保障フォーサイトのプロジェクトを通じて感じたNTTデータの強みを教えてください。

安田 信仁 安田

まずは大規模なシステム開発の知見と、それに付随する多種多様なアセットを持っていることです。今回のリスキリングプラットフォーム構想においても、個人のスキルや学習歴を証明するためには、マイナンバと連携した確固たる情報基盤が必要不可欠になります。そうした国家規模のインフラを構築・運用してきた実績とアセットが社内に既に存在していることは、労働領域における新規ビジネスを創出する上で大きな強みです。また、長年にわたって公共システムを支えてきたNTTデータだからこそ、官民連携のハブになることも可能です。

佐藤 学 佐藤

同感です。NTTデータには公共・社会基盤分野だけでなく、金融分野、法人分野でも知見を持っていますし、国内だけでなくグローバルでも事業を展開しています。結果として、様々な業界・国の知見が蓄積されています。また、私たちが向き合っている省庁のお客様に対して、システム構築や運用といった行政以外の視点を持って提案できるのもNTTデータの強みです。

越野 壱樹 越野

私が感じているのは、これまで積み上げてきた実績と信頼があるからこそ、長期的な視点に立った提案ができることです。仮に絵空事のように感じられたとしても、「NTTデータが提案するのであれば一度話を聞いてみよう」と、真剣に耳を傾けてもらいやすい土壌があるように感じています。NTTデータの開発・運用・保守のプロフェッショナルの方たちが、日本の社会インフラを止めることなく支え続け、「当たり前を当たり前にし続けてきた」という信頼の土台があるからこそ、社会課題を起点とした新しい構想にもチャレンジしやすいです。

――社会保障フォーサイトというプロジェクトを通じて皆さんが描く「未来像」を教えてください。

安田 信仁 安田

2050年の未来を考えた時、私は60歳を過ぎています。その頃の自分は何をしているだろうか、まだ働けているのだろうか。そう考えると2050年の社会保障というのは、けっして他人事ではありません。それこそ今取り組んでいるリスキリングのプラットフォームも、未来の自分にとって「あってほしいもの」の一つです。

佐藤 学 佐藤

私も2050年にはリタイアしているはずですが、高校生になる娘のことを考えてしまいますね。数々の深刻な課題がある中で、2050年に日本はどうなっているのだろうか、娘はどういう環境で働き、生きていくことになるのだろうか。やるべきことは無限にありますが、働きたい人がしっかりと働ける環境作りに貢献できれば、一人のビジネスパーソンとして「やりきった」と感じられるだろうと信じて、プロジェクトに取り組んでいます。

越野 壱樹 越野

2050年の私は50代で、まだ働いている可能性が高いです。私の場合、「自分がどうなっているか」というよりも、「若い人たちの働き方が今とは大きく変わっていてほしい」と願っています。価値観は変わってきたとはいえ、現在はまだ、学生時代にやってきたことや、これまでの経歴が重視される時代です。ですが、2050年には働く人の選択肢がもっと広がっていてほしいです。私たちの取り組みが、そんな未来につながることを期待しています。

2050年の未来からバックキャストし、日本の社会課題を解決するビジネスを創造する。これまでの延長線から大きくジャンプして、まっさらな目線で新しい価値創造に挑んでいるフォーサイトチームのメンバーたち。これまで長年にわたって公共システムを支えてきたNTTデータだからこそ、生み出せる未来があるはずです。今回のプロジェクトからは、単なる新規ビジネスという枠を超えた、希望あふれる未来を自分たちの手で引き寄せようという強い意思が感じ取れました。日本の社会保障の未来を作る壮大な挑戦は、まだ始まったばかりです。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです