インタビュー動画
0:00 オープニング
0:20 プロフィール
0:30 ガバメントクラウドのアセット化とは
2:09 直面した「壁」と乗り越え方
4:30 仕事を経て得られた成長の手ごたえ
7:03 NTTデータでのキャリア像
ガバメントクラウド開発の生産性向上に向け、アセットを整備
──まず、皆さんが所属しているガバメントクラウドアセットチームのミッションや役割を教えてください。
川上
私たちが所属する公共・社会基盤技術戦略推進部(通称:公共技戦)は、公共・社会基盤分野においてプロジェクトの技術支援やモニタリングを行い、プロジェクトの成功に貢献する組織です。その中で私たちガバメントクラウドアセットチームは、ガバメントクラウド開発における生産性向上を目的としたアセット整備および案件支援を行っています。具体的には、ガバメントクラウド案件のメンバーに向け、開発ガイド、設計標準、設計標準に紐付くIaCスニペット、運用ガイドなどを整備するとともに、実案件への技術支援や横断的なナレッジ展開も実施しています。
──2023年にガバメントクラウドアセットチームが発足した背景を教えていただけますか。
川上
ガバメントクラウドはデジタル庁が主導して整備・運用する政府共通のクラウド基盤であり、デジタル庁によるガバナンスの確保されたパブリッククラウドになっています。ガバメントクラウドを利用する上では、レガシーな構成から脱却し、AWSなど各種CSPを活用したモダンなアーキテクチャに移行していくことが強く求められるようになったのです。ですが、デジタル庁の公開情報は多岐にわたるため要件を整理するのが困難で、かつモダン化のノウハウも不足していました。
──公共・社会基盤分野のシステム開発において、モダン化は大きな変化だったのでしょうか。
川上
非常に大きなパラダイムシフトでした。公共システムはミッションクリティカルなものが多いことから、トレンドを追いかけるよりも、安定した「枯れた技術」を重んじる文化が根付いていたからです。しかし、ガバメントクラウドの登場により、今までのオンプレミスとは全く異なる領域に取り組む必要に迫られました。
川添
社内でも戸惑いの声は大きかったです。これまでの公共分野のシステムとは発想自体が大きく違う、新たな領域でトレンドの技術をキャッチアップしていくのは相当困難なことでした。インフラをコードで管理するCDK(Cloud Development Kit)についても、非常に高い障壁があるだろうことは容易に想像できました。一方で、CDKを使いこなすことができれば非常に優れたツールとなり、従来のIaC構成に比べて構築にかかる時間を半分程度にまで短縮できる可能性がある点も魅力でした。
吉田
そうですね。現場のナレッジが不足している場合、公共技戦のメンバーたちが技術支援という形でプロジェクトに参画していますが、当然ながらリソースには限界があります。そこで、ガバメントクラウド開発を効率化するためにガバメントクラウドアセットを整備しています。アセットは、メンバーたちが迷った時の「道しるべ」となるような存在でもあります。
──ガバメントクラウドアセットの整備から展開に至る流れを教えてください。
川上
チームが発足した2023年度、基盤リーダーのポジションにいた私は、まずデジタル庁が公開している要求事項を読み解き、ガイドラインとして整理しました。その上で、要件に即したサンプルのアーキテクチャや設計書、CDKスニペットなどをアセットとして整備していきました。そして2024年度は、実際にアセットを引っ提げて公共技戦の技術スペシャリストがプロジェクトの支援に入っていく展開フェーズでした。
川添
当時、私は技術スペシャリストとして技術支援に入っていましたが、提供されたアセットは多くのガバメントクラウド案件で活用され、開発の生産性向上や計画遅延リスクの低減など、めざましい成果を上げることができました。一方で、現場からは予想と異なる反応も出てきました。
──現場からはどのような反応があったのでしょうか。
川上
アセット自体の完成度には自信を持っていたのですが、現場のプロジェクトメンバーからは「難しくて使いこなせない」という声も数多く上がったのです。いくら完璧なものを作り上げても、現場で適切に活用されなくては意味がありません。
川添
事実、現場にはクラウドやCDKのスキルを持つ人財が圧倒的に不足していました。そのため、アセットの意図が正しく伝わらず、現場で無理にコードが改変されてしまい、設計段階からアーキテクチャに「ねじれ」が生じてしまうケースが散見されました。我々から見たら「なぜ、このような構成になってしまったのだろうか」というような形に改変されて使われてしまっていることもありました。
川上
当初、私は「アセットの意図を正しくキャッチアップしてほしい」という思いが強く、技術的な理想を追求していました。ドキュメントは用意して公開しているのだから、それをキャッチアップできない受け手のスキルセットに問題があるのではないか、とさえ思っていた時期もありました。しかし、現場の全メンバーに必要な知識を得てもらうのは、莫大な教育コストと時間がかかります。ただでさえ高度なスキルを持ったクラウド人財自体が世の中的にも少ない中で、全員にCDKをマスターさせるのも現実的ではありません。技術的理想と、現場のリアルなスキルセットとの間に、埋めがたい大きなギャップが生じていたのです。
現場メンバーはコア領域のプロ。発想の転換で導く新たな支援モデル
──技術的理想と現実とのギャップという問題に対して、どのようにアプローチしたのでしょうか。
川上
2025年度はインターフェースを改善するなど、外側を分かりやすい形に「ラッピング」して提供することで対応していました。そして2026年度からは、さらなる進化としてAIを活用するとともに、支援モデルを大きく転換しています。
──どのような支援モデルを構築したのでしょうか。
川上
従来は「オールインワン」のアセットを提供し、現場のメンバーにアセットを利用してもらうための活動を行っていました。ですが、ガバメントクラウド開発は一度きりのものであり、導入コストの高いアセットがすべてのプロジェクトで十分に活用されているわけではありませんでした。そこで、どのプロジェクトでも共通して必要になる、ガバメントクラウド要件に関わる「コモディティ領域」については、私たちアセットチームが引き受け、効率的に構築する。そして現場のメンバーには、お客様の業務課題やプロジェクト特性といった「コア領域」に特化してもらう。この役割分担の明確化が、新たな支援モデルです。
──この方針転換と同時期、川添さんは2026年度から基盤系リーダーとなり、現在はアセットの整備に携わっているそうですね。チーム内での異動の背景を教えていただけますか。
川添
私は2023年からアセットチームに参画し、技術スペシャリストとしてガバメントクラウド案件に対する技術支援を実施してきました。川上さんが作り上げたアセットは美しくて完璧なものだったからこそ、それが現場で理解されなかったり、適切に活用されないことにはもどかしさを感じていました。一方で、現場に近い立場だったからこそ、ガバメントクラウドアセットに対する現場メンバーの声や反応は間近で触れてきました。現在はアセットを「作る側」の立場として、それまでに蓄積してきた現場の声を活かしたアセットの整備に取り組んでいます。
──具体的な取り組みの内容について教えてください。
川添
「コモディティ領域」と「コア領域」の切り分けの下、ガバメントクラウド要件として共通化できる領域については、既に整備されているアセットを活用しながら、アセットチーム側で重点的に支援を行う体制づくりを推進しました。その上で、現場のメンバーが業務の固有要件や個別課題といった「コア領域」により注力できるよう、支援範囲の整理や役割分担の定義を進めました。
――2026年度からはAIの活用も推進しているそうですね。
川添
はい。限られたリソースで多くの案件を支援するためには、AI活用が不可欠です。私たちが持ち帰るガバメントクラウドの要件部分については、生成AIを活用し、案件の特性にフィットしたCDKコードを自動生成する仕組みづくりにも取り組んでいます。公共案件に求められる高い品質を担保するため、完全に自動化するのではなく、AI-DLCの仕組みを取り入れながら、人のレビューを前提としたフローを組み込み、社内のAIチームや外部研修からもヒントを得て試行錯誤しています。アセットをベースにコモディティ化される部分のカスタマイズを、品質面を担保しながらAIを使ってどう作っていくか。ここは非常に難しく、同時に面白い部分でもあります。
──吉田さんは運用系リーダーとして、どのような取り組みを行っていますか。
吉田
ガバメントクラウド案件における運用アセットの整備と、案件支援モデルの構築を行っています。基盤側と同様に、ガバメントクラウド案件に共通する運用要件はアセットとして整備し、各プロジェクトメンバーが個別要件に注力できる体制づくりを進めています。ただし、先ほどコモディティ領域とコア領域の役割分担の話が出ましたが、運用領域は特にプロジェクトごとに文化ややり方が大きく異なり、汎用化が難しい領域です。また、各事業部がプロジェクトごとに運用の部隊を作ってきた歴史があるため、事業の文化が根強く残っています。その上、公共技戦には基盤系のスペシャリストは多いものの、運用の知見を持つメンバーは不足しているという課題がありました。
──それらの課題に対して、どのようなアプローチを取っているのでしょうか。
吉田
運用に強みを持ったグループ会社と協業し、そのグループ会社が提供する一次運用サービスの活用を前提としながら標準化を推進しています。グループ会社が持つ知見やノウハウを吸収し、内製化できる部分については内製化することを見据え、知見を共有・移転してもらえる連携体制づくりを意識しています。
──一次運用サービスについてはAIを活用した運用の効率化や品質向上にも取り組んでいるそうですね。
吉田
はい。一次運用サービスを現場に「使いたい」と思わせる魅力づくりのために、AIの活用を検討しています。例えば、過去の膨大なインシデント対応のナレッジをAIに学習させ、障害発生時に類似事例や対処案をサジェストして対応を迅速化する仕組みなどを構想しています。ただ、技術的な実現可能性だけでなく、実際にアセットを使うプロジェクトメンバーにとって「本当に価値があるか」という視点でのテーマ選定に苦心しました。机上での検討に留まらず、プロジェクトのメンバーに実際にヒアリングを行い、テーマの確度を高めていきました。受け手側のスキルや経験の差によって回答までに時間がかかるといった課題を、AIによる平準化で解決できればと考えています。
多様な志向性が交差するチーム。公共×先端技術でキャリアを築く
──皆さんは現在の業務に対して、どのようなやりがいを感じていますか。
川添
今までは支援が中心のキャリアだったので、ある程度作るものが決まっている中で「どうパフォーマンスを出すか」という世界でした。しかし今は、川上さんと一緒にゼロから新しいものを作る世界にいます。「どういうものを作ったらもっと会社のためになるのだろうか」と考えるのは、非常に難しくもあり、同時に大きな面白さでもあります。今まで働いてきた感覚とは全然違う頭を使って進めている、と感じています。
吉田
私はこれまで現場に技術支援で入る業務が多かったのですが、今はマネジメントスキルを培えている点にモチベーションを感じています。一方で、技術的に「面白い」と思えるだけでなく、「最終的にビジネスに着地させる」という点に難しさも感じています。
川上
私はもともとクラウドの基盤エンジニアなので、今でも川添さんの業務には技術的な観点から意見を伝えますし、今取り組んでいる業務も、自分のやりたかった理想に近い部分があります。だからこそ、しっかりと今の支援モデルを作り上げたいと考えています。そして支援モデルが完成して別のプロジェクトにチャレンジすることになった時にも、今の経験は非常に良い糧になると思っています。
──お話を伺っていると、川上さんは技術的理想を追求する「プロダクトアウト思考」、川添さんと吉田さんは現場のニーズを重視する「マーケットイン思考」と、異なる個性が混ざり合っているように感じます。チームの雰囲気はいかがですか?
川上
その通りです。私は経験者採用でメーカー出身ということもあり、「自分が美しいと思うアーキテクチャを作りたい」というプロダクトアウトの思考が強いタイプです。一方で、川添さんたちは「現場にどう喜んでもらうか」というマーケットインの発想を持っています。出自や思考の根幹が違うので、意見を混ぜ合わせるのには苦労することもあります(笑)。
川添
そうですね。川上さんは「こういう風に作ったら美しいよね」と提案してくださるのですが、私は「それでは現場で使われませんよ」と返すような、率直な議論も多いです(笑)。技術的な理想を追求するプロダクトアウトの思考と、現場のニーズを重視するマーケットインの思考をぶつけ合い、互いの意見を尊重して混ざり合うことで、より良いコンセプトや支援モデルが生まれてきていると感じています。
吉田
フラットに議論を行えるチームですよね。チームのメンバーは技術好きな人が多く、いろんな人のアーキテクチャの考え方などを聞けるのがすごく楽しいですね。「そんな考え方があったのか」といった発見が日々あり、いろいろな意見を聞きながら業務を進められるのはこのチームの大きな特色だと思います。
──最後に、NTTデータの公共・社会基盤分野、特にガバメントクラウドアセットチームの活動に関心を持っている方に向けてメッセージをお願いします。
吉田
大規模でミッションクリティカルなシステムに携わりながら、クラウドやAIといった最新のトレンド技術に触れられるのは、このチームならではの魅力です。技術を探求するだけでなく、それをどうビジネスに着地させるかという視点も養える、非常にやりがいのある環境だと思います。また、個別のプロジェクトに対して深く技術支援に入るだけでなく、今回のアセット施策のように年単位のスパンで、自分たちから発信していけるところも魅力です。
川添
ガバメントクラウドでAWSを使う場合、ガバメントクラウドの要求はAWSのベストプラクティスに則しているため、ここで経験を積むことで、クラウドのトレンドをしっかりと学ぶことができます。また、吉田さんが挙げたように新しい技術にチャレンジする機会が多いため、公共システムのイメージからは想像できないほど、自由度が高い点もアピールしたいです。
川上
私も同感です。私自身がNTTデータで働いている理由でもありますが、省庁や地方自治体のシステムに関わりながら、レガシーからトレンドの技術まで幅広い技術に触れることができる会社は、そうそう存在しないと思います。また、私自身はメンバーに裁量をしっかり渡しているつもりですし、「これを学びたい、こういう技術をやりたい」という強いウィル(意志)を持つ人にとっては、魅力的な環境だと考えています。技術に関心がある人はもちろんのこと、マーケティング的な発想や調整力など、様々な強みを持った人に来ていただきたいです。
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ガバメントクラウド開発というパラダイムシフトの中で生まれたアセット群。しかし、技術的に完璧なアセットを提供するだけでは、現場の真の課題は解決しないーー。その気づきから始まった、ガバメントクラウド開発における支援モデルへの転換。決して技術的理想の押し付けに終わらず、「現場のプロジェクトをどう支えるか」を真摯に問い続ける彼らの挑戦は、今も続いています。


