システム移行などに際して、データの信頼性・整合性を確保する「データマネジメント」の重要性について、株式会社リアライズの大西浩史が解説します。

1.「データマネジメント」と高齢者の所在不明問題

人は毎日、何らかのデータをもとに意思決定し、行動しています。食品を購入するのであれば、価格や消費期限、生産地のデータなどを参考にしているでしょう。ビジネスにおいても個人と同じく、あるいはそれ以上に厳密に、社内外にあふれるさまざまな統計データを基に事業や投資に関する戦略の意思決定を行っています。
しかし、頼りにするべきそれらの根拠となっている「基礎データ」そのものに、故意・過失を問わず、入力ミスや不備が多々含まれていて、データの信憑性に問題があったのでは、ビジネスを誤った方向へと導く「壊れた羅針盤」になりかねません。

例えば、顧客の購買履歴から取った統計データを分析して顧客ターゲットを想定し、販売戦略などに役立てるという作業は広く行われていますが、これがもしも誤ったデータに基づく営業施策になってしまっていたら、販売機会のロスや不良在庫を抱える事態を招き、時にはビジネスに致命的な影響をおよぼすことにもなりかねません。
昨今の厳しい経済環境下において、これまで以上に「正しい現状の認識」に基づいた意思決定が重要となっているといえます。あらゆる事業領域にコスト削減が求められる中、ビジネスの原点に立ち返り、十分に活用されてこなかった既存のデータ資産に着目して、有効に役立てようという動きも出てきています。
多数の高齢者が戸籍や住民票などの公的記録上は存在しているものの、実際には生死や所在が判明しないという、いわゆる高齢者の所在不明問題も、さまざまなデータを適切に管理できずにきたことに起因するといえるでしょう。経済や社会を支える「データ」を適切に管理し、信頼性・整合性を確保する「データマネジメント」、その重要性に注目が集まっているのです。

【図】

図:ある大企業が保有していたデータの実例

2.データマネジメントという観点がなければ情報は守れない

適正なシステム投資のもとで大切に守られてきたはずの「データ」はなぜ、その信憑性が疑われる事態になってしまうのでしょうか。その第1の理由として、データの活用について十分に考慮しないまま、データの入力、システム連携・統合、移行といった流れが進んでしまっていることが挙げられます。これは、データベース同士の情報連携の不備などの技術的な問題に加えて、「入力ルールや組織体制といったデータ運用の問題」に起因しています。
その具体例として、複数の営業担当者が日常の業務の中で入力を行う各種業務データを基にして顧客データベースが形成される場合を考えてみましょう。担当者の交代により、見積もりなどのデータが更新されないまま放置されたり、同一顧客が別人として新たに登録されたりといったことがしばしば発生しがちですが、こうしていわば結果的に生じてしまうデータの不備は、データ入力作業の怠慢やずさんな管理というより、データの品質管理という観点に基づくチェック機能や運用体制が適切に機能していないことによるものといえます。
データの信憑性が問われる第2の理由として、これまでの使い方では問題なかったものの、コンプライアンス対応や企業合併といった予測できない事態の発生に際して、そうした新たな事態に対応するのが容易でなかったり、フレームワークの変更が追いつかなかったりといった、求められるデータ要件の変化によって問題が顕在化してくるようなケースが挙げられます。

【図】

図:求められるデータ要件の変化によって顕在化してくるデータの問題

3.「クラウド」の前に、マスターデータの整備が必要

昨今、エンタープライズ用途で話題となるクラウドコンピューティングの導入に際して、しばしば議論の的になるのが、データをどこに置くのか、システムのどこまでをクラウドの対象にできるのかといったテーマです。ただ、懸念されるのは、そうした仕組み以前に、データがきちんと統一された視点やルールで管理可能なのか、自社内に残る基幹系などのデータ資産と整合性をもってコントロールされるかどうか、といった「データマネジメント」の視点がないまま、システム移行が進んでしまうことです。
ハードウエアがメインフレームからオープンシステムへ、プログラム言語がCからJavaへ移行するといったように周辺技術が変化したり、SaaSやクラウドの一般化などインフラ面の変化があったりしても、システムを経営に活用するための土台として、適切なデータの管理が必要であることに変わりはありません。「アプリケーションはいかに進化して変わり続けても、データは不変」なのです。換言すれば、マスターデータの管理さえしっかりしていれば、そこを基点に吐き出されるトランザクションデータそのものの置き場所は「雲」の先にあっても構いません。しかし、データ品質の管理や内外の整合性が確保されていない状況のまま、クラウドコンピューティングやBI(ビジネスインテリジェンス)といった議論を始めても、結局本来の目的が達成できずプロジェクトの失敗につながってしまう可能性が大きいといわざるを得ません。
既存のデータをビジネスに役立てたい、制度や規制強化に対応したいといった経営者視点からの要請にIT側が応えるためにも、システムという「枠」に加えて、肝心な「中身」のデータ管理、「データマネジメント」の導入が不可欠となりつつあります。

【図】

図:システムの活用に不可欠なデータマネジメント

4.「データマネジメント」の具体的な導入効果とは

これまで「データマネジメント」の必要性について述べてきましたが、実際に導入すると、どういった効果が得られるのか、具体例を通じて説明しましょう。

[事例紹介1] 調達コストの低減+タイムリーな購買分析の実現

大手企業における物品調達に関して、詳細な調達データ分析を実施しつつ、これまで紙で保存されていた発注伝票の原票類との突き合わせやデータの名寄せ・正規化といったデータクレンジングを実施したことにより、これまで同じ製品でも異なる発注金額で購入していたなどの無駄が一目瞭然となり最安値での発注が実現。数億円におよぶコストダウン効果を得ることができました。

【図】

図:事例紹介1「調達コストの低減+タイムリーな購買分析の実現」

[事例紹介2] タイムリーな営業の「見える化」の実現

これまで組織別に顧客が管理されており、一元化するのに時間や膨大な手間がかかるといった課題を抱えていた企業に対して、現状の情報の流れやあるべき情報の流れ、機能要求の精査といった整理に加えて、現状データの分析を実施して実際にデータのクレンジング作業を行うといった「データマネジメント」を実施。これにより、営業の見える化が図れた上、顧客別の営業状況やリソース投入状況を随時把握したいという経営層からの要望にも応えることができ、ビジネスチャンスにつながる環境が整備されました。

【図】

図:事例紹介2「タイムリーな営業の「見える化」の実現」

これら例のように、「データマネジメント」を実施することにより、業務の改善・効率化に加えて、コスト削減などの具体的な導入効果を得ることができます。

次回は「データマネジメント」の具体的な内容や、成功させるための秘訣について紹介します。

著者プロフィール

(株)リアライズ代表取締役社長 データマネジメント・エヴァンジェリスト
大西 浩史

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