規制とその緩和をめぐって論争が繰り広げられてきたネット販売は安倍政権の成長戦略の後押しもあって、規制緩和への動きが活発化している。この動向を当社も検討会の事務局として参加する不動産業界を中心に報告する。

この4月下旬頃の日経朝刊の1面トップに、「不動産ネット取引解禁~国交省検討 対面不要、来年にも~」という記事が掲載されたのを見かけたという読者の方はいらっしゃるだろうか。不動産取引の契約に際して宅地建物取引主任者が行う重要事項説明(重説)は、対面で行うこととされており、インターネットを通じて行うことは認められていない。また、契約の際に交付が義務付けられている書面の電磁的方法による交付も認められていない。このような現状に対し、国土交通省が学者や業界代表らで構成する検討会を立ち上げ、ネット取引解禁に向けた具体案づくりを始めるというものだが、実は、この検討会の事務局は当社が行っている。

会員の中にネットを通じた不動産の情報提供サービス専業業者がいる新経済連盟(代表理事:楽天三木谷社長)等が急先鋒の推進者となり、大企業や中小の不動産業者を会員とする不動産4団体等が慎重派となって議論を戦わせているが、当社は5月に事務局への起用が決まると同時に、急ピッチで準備を進めて5月末には社内で、重説にSkypeのTV電話機能を使った実証実験を行い、大きな問題は認められないという結論をまとめた(表)。

【表】

表:実証実験から得られた結果

現在、中間とりまとめ(案)が6月26日に行われた第3回検討会に提出されたところとなっている。案としてリスクの少ない賃貸物件とプロ同士ともいえる業者間取引についてまずは取り組むという方向が出されたが、この点についても、賛否両論が推進派、慎重派の両方から出されており、どういう表現ぶりとなるか調整中である。

この取り組みは、IT戦略本部下の「規制・制度改革分科会」が課題として取り上げ、開始されたものであるが、同じような取り組みは医薬品のネット販売の分野でも行われてきた。こちらの方の攻防の歴史は古く、5年前から楽天の医薬品通販子会社のケンコーコム等が国を相手取った裁判を繰り広げ、一旦は事実上の解禁を勝ち取り、2013年6月に閣議決定された「成長戦略」に織り込まれたりもしたのだが、その後の厚生労働省の設けた専門家会合等の検討により、劇薬などを含む「要指導医薬品」についてのネット販売は禁止となった。これを受けて三木谷氏が産業競争力会議の民間議員の職への辞意を示すなど物議を醸したりしたことは記憶に新しいのではないだろうか。

不動産については、今後複数回の検討会と必要に応じた追加の実証実験等を経て、12月には最終の取りまとめが提出される予定である。医薬品分野に比べれば、取り組み開始が遅かったことはあるが、既得権益者の抵抗・反対というよりは、ネット販売に対応しきれていない業界や消費者への配慮といった面が濃いので、裁判による決着を要するようなこともないだろうと考えている。一方、医薬品の方はネット業界からの反発はくすぶっており、裁判による再度の攻防もあり得るのではないだろうか。

以上、ネット販売を巡る最近の動向をお伝えしたが、両業界とも今後大きく動いていくと考えられ、注視を続けていきたい。

著者プロフィール

株式会社NTTデータ経営研究所
特別理事 兼 エグゼクティブコンサルタント 小田島 労

某発動機会社に入社して後、米国スタンフォード大学への留学を期にコンサルティング業界に転身。現在は社会課題の解決に役立つICTソリューションを中央府省等に向けて政策提言していくことに注力している。

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