近年、ネットワークに繋がる車"Connected Car"が増え続けている。"Connected Car"は、車載機(ナビやオーディオなど)とスマートフォンを連携し、マップ表示や音楽を再生したり、センサーから収集したデータをクラウドで分析し、その分析結果をドライバーに提供したりすることができる。

1."Connected Car"の現状

技術の進化により、"Connected Car"の割合が増加しています。現在、販売されている車のうち、約30%は"Connected Car"が占めており、10年後には50%を超えると予想されています。

では、"Connected Car"とは何か、代表的なユースケースを以下に示します。

  • 「Telematics Service」(例:Intelligent Transport System(ITS)など)

    渋滞情報や安全運転支援などの情報を提供する。

  • 「Smartphone Link」(例:Android Auto/CarPlay/Miracastなど)

    ナビなどの車載機とスマートフォンを連携して、マップや音楽再生など、Infotainment参考1を提供する。

  • 「ECU Information」

    センサーから情報を収集して、エンジンやブレーキ、バッテリーなどの状態を分析し、結果をドライバーに提供する。

これらはコネクティビティ技術とも呼ばれ、クルマの走行支援、車両診断、渋滞緩和や交通管理、危険予知や交通事故削減、保険サービスなどのサービスに活用されており、今後も進化を続け、自動運転車(Autonomous Car)の実現に必要な要素となっています。

2."Connected Car"の普及とAutomotive Grade Linuxの活用

急速に普及する"Connected Car"ですが、現在の車載機開発では、ナビやマルチメディアなど、共通的な機能があるにも関わらず、各メーカーが独自に開発しているため、開発量やコストの増大、開発期間の長期化などの課題が出てきています。

これらの課題を解決するため、Linux Foundation参考2が中心となり、自動車メーカーやソフトウェアベンダ、チップベンダなど91社(2017年3月現在)が参加し、共通のプラットフォームを構築するプロジェクト『Automotive Grade Linux(AGL)』参考3が結成されました。

AGLは、"Connected Car"向けフル オープン ソフトウエア スタックですが、ナビやマルチメディア、メーターの機能もパッケージされています。そのため多くの機能は、AGLから提供されるため、これらの開発にかかっていたコストが削減でき、開発期間の短縮も期待できます。また、独自機能の開発にリソースを注力することも可能となり、他社との差異化が図られ、魅力的な製品の開発に繋がります。

3.AGLを活用したNTTデータMSEの取り組み

NTTデータMSEでは、AGLの初期バージョンから活動を開始し、コネクティビティ技術をAGLに実装することを目的とした研究開発を行っています。

第一弾として、スマートフォンやタブレットをWi-Fiで車載機に接続し、スマートフォンやタブレットに表示された画面を車載ディスプレイに転送する『Miracast参考4』を実装しました。既に国内外の展示会でデモを実施し、高い評価を得ています。

また、実装の際に発生した課題と解決方法については、AGLのイベント内で講演し、参考情報として公開しています。この情報を元に、さまざまなベンダーがAGLアプリケーションを提供すれば、AGLの発展に繋がると考えています。さらに今後は、実装したソースコードをAGLに提供することにより、誰でもコネクティビティ技術を実装できるようにしたいと考えています。

現在、新たな取り組みとして、『SmartDeviceLink(SDL) 参考5』を実装中です。今後もAGLをベースにして、新しい技術の実装に挑戦していきます。

参考文献

  • 参考1Infotainment

    Infotainmentとは、「情報(Information)」と「エンターテインメント(Entertainment)」を提供するシステム。従来のナビ機能やオーディオ機能だけではなく、ネットワークなどで得られた情報を活用し、新しい機能をドライバーや搭乗者に提供します。

  • 参考2Linux Foundation

    Linux Foundationは、オープンテクノロジの開発や商用展開を加速するエコシステム構築のための非営利のコンソーシアム

  • 参考3Automotive Grade Linux(AGL)

    Automotive Grade Linuxは、Linux Foundation協業プロジェクトで、コネクテッド カー向けフル オープン ソフトウエア スタックの開発導入を促進するオープンソース共同開発プロジェクトです。

  • 参考4Miracast

    Wi-Fi Allianceによって策定された、1対1の無線通信によるディスプレイ伝送技術です。

  • 参考5SmartDeviceLink (SDL)

    Fordの車載機向けアプリケーション開発基盤「AppLink」をベースにした、スマートフォンと車載器を連携するためのオープンソースです。

著者プロフィール

株式会社NTTデータMSE プラットフォーム戦略室 プラットフォーム戦略課 課長代理 前田 圭一郎

携帯端末のLinuxシステム開発に携わり、システムインテグレートや評価などの分野を担当。その後、携帯電話基地局開発や社外での駐在を経験し、2016年より、AGLを活用したコネクティビティ技術の実現に関する研究開発を担当している。

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