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2023年11月2日展望を知る

脱炭素で企業・製品価値を高めるアプローチ ~デジタルで企業努力をインセンティブに変える~

気候変動問題は、自然災害のリスクを顕在化させるだけでなく、ビジネスの世界で競争ルールを大きく変える転換期をもたらしはじめている。しかし、現在の日本企業の取り組みは、義務的な受け身の対応に留まってしまう場合が多く、気候変動対策とビジネスとの距離がまだ遠い状況にある。この記事では、脱炭素をビジネスの機会として捉えて、企業や製品の価値を向上させていくために、どんなアプローチが必要かを紹介する。具体的には、脱炭素が達成された未来社会を「企業努力が適切に反映される社会」と定義しつつ、企業努力をインセンティブとして取り込むアプローチを紹介する。加えて、デジタル技術がこのアプローチにどう貢献できるか解説する。
目次

企業にとって気候変動はどんな意味を持つのか

近年、気候変動に関連すると思われる異常気象のニュースが増えています。例えば2023年は史上最も暑い年になると言われており、グテーレス国連事務総長は「地球沸騰化の時代が来た」と述べました。

熱波・洪水・豪雨といった異常気象の進展とともに、脱炭素の要請はビジネスの世界でも強まっており、今や気候変動問題への対応として事業を変革することは重要な経営課題の1つです。特に、現在はコンプライアンス要件・資金調達要件・取引要件といったさまざまな観点から、脱炭素を前提とした新たな競争ルールが形成されつつあります。そして、こうした新たなルールを機能させるために、企業に対して気候変動に関する取り組み状況の情報開示を義務化する動きも進んでいます。

図1:脱炭素に関する競争ルールの転換

図1:脱炭素に関する競争ルールの転換

想定される未来社会像

このように企業の競争ルールが脱炭素を前提として変わっていく先に、どのような未来社会が待っているでしょうか。社会全体のネットゼロ(※1)が実現された未来社会とは、「企業努力が適切に評価される社会」だと考えられます。脱炭素にいち早く取り組む企業や製品が市場から選択される一方、GHG排出量の多い企業は競合に後れを取る構造になるため、どの企業も自然と脱炭素に取り組むようになるでしょう。脱炭素に向けた変革は数十年にわたる取り組みになるからこそ、今から他社に先駆けて取り組むことが重要です。

(※1)

CO2などの温室効果ガスに関して、大気中への排出量から除去量を差し引いた値がゼロである状態。現時点ではカーボンニュートラルよりも定義が明確な場合が多いため、海外ではカーボンニュートラルでなくネットゼロという表現を用いる傾向にある。

ネットゼロ社会の到来を見据えて企業がとるべきアプローチとは

続いて、企業努力が適切に評価される社会を念頭に置くと、企業はどんなアプローチをとるべきでしょうか。その答えは、自社の排出削減をインセンティブとして活かすことです。具体的には、GHG排出量の「可視化」「削減」、さらに削減努力の「価値訴求」からなるサイクルを回し続けることで、自社の企業価値や製品価値を高めていくアプローチです。
「可視化」では、バリューチェーン全体の排出量を算定する際は業界平均値に頼ることが多くなります。しかしサイクルを実現するためには、企業の排出削減努力を取り込めるよう“リアルな排出量データ”を用いる必要があります。「削減」では、ただ単に追加費用を生む施策をとるだけでなく、デジタル技術を用いて最適化することで、脱炭素施策を仕組み化することが重要です。最後の「価値訴求」は、可視化や削減の結果がどのような価値を生みだすかについて、非財務情報開示に限らずステークホルダーに伝えていくことです。デジタル技術を活かすことで、顧客に企業努力をデータとして伝達することもできます。価値訴求は、TCFD賛同数やSBTi目標認定数では世界で有数の実績がありながら、地理的な制約で再生可能エネルギーの導入が遅れている日本企業にとって最も重要なプロセスと言えます。

図2:企業努力をインセンティブとして活かすためのサイクル

図2:企業努力をインセンティブとして活かすためのサイクル

デジタルは脱炭素にどう貢献できるか

前述のアプローチを実現するために、デジタル技術は大きく貢献できます。この具体例ついて、NTT DATAのソリューションを例にとりながら解説します。

(1)可視化:C-Turtle®

「C-Turtle®(シータートル)」(※2)は企業全体のGHG排出量について、自社でコントロールできるGHG排出量だけでなく、バリューチェーンにわたるGHG排出量についても、個社の削減努力を反映しながら可視化できます。国際NGO「CDP」が保有する排出量データセットなどを用いることで、「総排出量配分方式」を採用し、リアルな可視化を実現しています。

図3:C-Turtle®の概要

図3:C-Turtle®の概要

(2)可視化:C-Turtle ForeSus

企業全体でなく製品・サービスごとのGHG排出量可視化については、NTT DATAが提供してきた製品別カーボンフットプリント管理基盤をもとに、新たに「C-Turtle ForeSus」(※3)を提供しています。これは基幹システム、工場のデータ、BoMなどを組み合わせることで、精緻で複雑な製品・サービスごとの排出量を可視化できます。

図4:C-Turtle ForeSusの概要

図4:C-Turtle ForeSusの概要

(3)削減:ECONO-CREA CEMSサービス

電力小売事業者向けの電力需給管理サービスを活かして、特定地域内でEVや蓄電池などの分散型電源を管理するCEMSサービス(Community Energy Management)を提供しています。分散型電源が太陽光や風力といった再エネ電源の発電量変動を吸収できるようになり、出力制御などの無駄をなくして発電を最適化する結果、再エネをより大規模に導入することに繋がります。

図5:再エネの大規模導入を支援する仕組みづくり

図5:再エネの大規模導入を支援する仕組みづくり

(4)削減:人流予測AI「HUCAST™」を用いたビルの空調最適化サービス

室温に最も影響を与える人流と外気温の変化をAIが分析することにより、フィードフォワード型の空調コントロールを実現します。ビルのエネルギー消費量で大部分を占める空調の運用を最適化することで、設備改修などの大規模な初期投資を抑えながら、電気使用コストとGHG排出量を削減します。

(5)価値訴求:TCFD情報開示支援

企業努力を正しく伝える第一歩として、非財務情報に関するTCFD情報開示コンサルティングサービスを提供しています。100件以上の支援実績をもとに、デジタル化まで支援することで、顧客自身で持続的にTCFD開示を対応できるよう伴走します。

図6:TCFD開示支援コンサルティングサービスの概要

図6:TCFD開示支援コンサルティングサービスの概要

(6)価値訴求:企業間のデータ連携

欧州では現在、GHG排出量などさまざまなユースケースを対象に、企業間でデータを流通させる検討が進んでいます。自動車業界の「Catena-X」が有名な具体例です。これらは見せたい相手にだけデータを見せられる「データスペース」という新たな仕組みであり、NTT DATAは、日本企業がデータ主権を保ちながら海外データスペースと連携できるよう取り組んでいます。欧州電池規則に基づくEVバッテリーのトレーサビリティ管理が日本企業にとって喫緊の課題であるため、NTT DATAは官公庁や業界団体とともに課題検討・要件定義・実装準備などを行っています。

(※2)GHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle」

https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/c-turtle/

(※3)サステナビリティ経営管理基盤「C-Turtle ForeSus」

https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/c-turtle-foresus/

脱炭素のその先へ

本記事はサステナビリティに関する取り組みのうち気候変動について解説しましたが、自然資本・人権・人的資本など、企業が取り組むべき課題はますます広がりを見せています。しかし、自社のインパクトに関して、「可視化」「削減」「価値訴求」により企業努力をインセンティブとして取り込むアプローチであれば、いかなる課題にも対応できると考えられます。
また、本記事のさらに詳細な内容については、ホワイトペーパーとして確認できます。ぜひ参照ください。

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