NTT DATAがAIでイニシアチブを取り
世界をリードする

NTTデータグループを持ち株会社とし、国内・海外に幅広く事業展開するNTT DATAは、2025年9月にNTTの完全子会社になった。連結売り上げ4兆6000億円を超えるITサービス企業であり、今も成長を続けている。今後の成長の鍵はどこにあり、どのような展開を目指しているのか。2025年11月に開催された日経フォーラム第27回世界経営者会議(主催=日本経済新聞社、IMD)で講演したNTTデータグループ代表取締役社長の佐々木裕に話を聞いた。

AIはゲームチェンジの可能性を秘めている
AIを前提とした再設計を

――NTT DATAの現況について教えてください。

株式会社NTTデータグループ 代表取締役社長
佐々木 裕

佐々木 2022年5月に海外事業会社のNTTリミテッドを統合したことで、海外のデータセンタービジネスが加わりました。現在の売り上げ4兆6000億円の約60%が海外で、約20万人の従業員の約75%が外国人と、売上構成も人員構成も大きく変わってきました。

私たちが統合によって得たものは2つあります。ITサービス企業として世界第8位のポジションを占めるビジネススケールによって認知が大きく広がったことと、幅広い事業ポートフォリオによってお客様が必要とする幅広いサービスを提供できるようになったことです。

  • Gartner®, Market Share: Services, Worldwide, 2024, Neha Sethi et al., 11April 2025, Vendor Revenue Basis.

特にビジネススケールが大きくなったことで、パートナーとのアライアンスが組みやすくなりました。マイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、グーグルといったビッグテックともやり取りがしやすくなっています。

――そうしたグローバルな視点から見た場合、日本企業の課題はどのようなところにあると思われますか。

佐々木 私が危機感を持っているのは、人工知能(AI)を戦略的に活用している企業が欧米に比べて少ない点です。特に生成AIはこれまでの技術とは全く異なります。進化が速く、今では視覚、聴覚、発話など、ヒトと拮抗するレベルまで来ています。

さらに重要なのは考える能力や数学の能力、ソフトウエア開発の能力などが非常に高まっていることです。コンピューターリソースさえ注ぎ込めば、ヒトを超える能力を発揮することさえできます。このことを経営者の方たちはしっかり認識すべきでしょう。

今日本ではChat(チャット)GPTのような対話形式のAIが普及し始めています。確かに論理立てた回答を瞬時に得られて便利です。しかし、これから重要になるのは、業務をこなすタスク処理型のAIです。

AIの能力は人間を超越しつつある

AIをフル活用し
ヒトの役割の再定義を

――タスク処理型のAIはどのような変化をもたらすのでしょうか。

佐々木 AIは24時間働くことができますし、瞬時に業務を処理できます。ヒトの10人分、20人分の業務をこなせるのです。このAIを1つの塊として業務プロセスの中に組み込んでタスク処理に活用するという発想を持つことで、組織も生産性も大きく変わってきます。

今はヒトの生産性を基準にチームを編成しているわけですが、タスクの一部をAIに任せて役割分担することで、業務プロセスをリエンジニアリングすることができる時代になってきています。

チャット型も確かに便利ですが、ヒトとのやり取りを通して処理をしてくれるものです。日々の業務が楽になることはありますが、それだけで利益が増えるわけではありません。しかし、タスク処理型では業務プロセス全体が再設計されることで、少ない人的資源で最大のパフォーマンスを上げられるようになります。

例えばコンサルティングファームの新人が担当してきた基礎的な調査の仕事やIT企業の基本的なプログラミングなどはAIが担当し、人には全体のガバナンスやプロセス設計、管理監督などの役割が求められるようになるでしょう。AIが社会に広がることでヒトの役割分担も再定義する必要が生じてきます。

新しい技術をいつ取り入れるのかといった判断もヒトの役割になり、企業の成長にヒトがしっかり関与するようになります。AIをフル活用すれば、将来的に週休3日でGDP(国内総生産)が増えていくといった幸せな時代が来るかもしれません。

パブリックAIとプライベートAIの
ハイブリッド活用へ

――そうした状況を生み出すには、コンピューターリソースを支えるインフラも必要です。世界シェア第3位のデータセンター事業者として、どのような戦略を持っているのでしょうか。

佐々木 AIに使われる画像処理半導体(GPU)の進化に伴うエネルギー問題への対応が国の競争力を左右する時代になり、省電力や冷却の技術の進化も求められています。

もう1つの側面としてAIの利用形態の変化もあります。これまでのAIは公開されているデータを使ったパブリックAIが牽引(けんいん)してきました。しかし、今は企業などが保有する機密データを扱うプライベートAIもあり、オンプレミス(自社保有)や国内事業者が国内でデータを管理するソブリンクラウドといったクローズドな利用形態へのニーズも高まっています。

インフラは米国が圧倒的なポジションを占めていますが、プライベートAIの領域ではまだ競争できます。NTTが2025年10月に軽量でありながら高性能な日本語処理性能を持つ大規模言語モデル「tsuzumi2」を公開しました。金融や医療、公共の組織など独自のデータを学習させて利用できます。オンプレミスやソブリンクラウドでの国産AIの活用は既に始まっています。

自社の持つ独自データを使ったAIはナレッジが活用できて差異化要因にもなりますが、同時にセキュリティー面でのガバナンスも必要になります。こうした課題をクリアした上で、パブリックAIとプライベートAIを組み合わせる時代になっていくでしょう。

パブリックAIとプライベートAI

イノベーションによる
持続的な価値提供へ

――急速に広がるAI活用へのニーズにどんなスタンスで対応していくのでしょうか。

佐々木 今年私たちのミッションステートメントに日本語だけではなく「Accelerate client success and positively impact society through responsible innovation.」という英文を併記しました。

現在グローバルに事業を展開しているので、海外の社員にも、社会を意識して貢献してもらうために英文を作成したのですが、私が一番気に入っているのは「responsible innovation」というフレーズです。

例えば、AIは進歩的な技術ですが、お客様に対して使ってくださいと言ってそのままお渡しするようなものではないと思っています。最大の価値を発揮できるアーキテクチャーを採用し、業務プロセスを再設計して業務プロセスに組み込み、ヒトの役割を再定義してセキュリティーガバナンスを確立することで、初めて安心して活用できて成果が上がるものです

量子コンピューターもそのままフルに活用できるお客様はそれほどいません。私たちはテクノロジーを使えるようにしてお届けすることに、責任を持って臨みたいと考えています。

――11月にシリコンバレーにAIの新会社を設立していますが、狙いはどのようなところにあるのでしょうか。

佐々木 シリコンバレーに新会社を設立したのは、AIの領域でビジネスをけん引したいという思いからです。進化の早いAIの世界の最新技術の動向やユースケースをしっかりキャッチして日本のお客様に提供していくには、シリコンバレーで会社を立ち上げるのが最も効果的だと考えました。

最新の状況を素早くキャッチアップするには、西海岸に経験豊富な優秀な人材を配置し、その人的ネットワークを通じて、世界で一番進んでいる技術やユースケースを手に入れることが近道だと思っています。

高度なAI人材をそろえて、グローバル水準のAI活用を常にアップデートして、ユースケースから勘所としてのテンプレートを用意し、パートナーのエコシステムにフィードバックして共創することで、責任あるイノベーションをお客様にお届けして、持続的な価値を提供していくつもりです。

Profile

佐々木 裕

1990年にNTTデータ通信(現在のNTTデータグループ)に入社。2021年から2年間、NTTデータ常務執行役員コーポレート統括本部長として、NTT Ltd.との海外事業統合や2023年7月に設立した国内事業会社の設立などに取り組んできた。また、事業戦略室長を兼務し、2022年からスタートしたNTTデータグループの中期経営計画の策定にも貢献。2023年に株式会社NTTデータ代表取締役社長、2024年に株式会社NTTデータグループ代表取締役社長に就任。東京大学大学院工学系研究科修士課程を修了。

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