APAC各国のデジタルペイメントを分析した調査結果を公表 ~キャッシュレス社会の覇権獲得に向けた各国市場の競争が明らかに~

お知らせ

2020年6月15日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、IDCと共同で実施したAPAC主要10カ国・地域における決済手段の概況、各市場で多様化するデジタルペイメントサービスと今後5~10年の主要な決済手段の動向に関する最新の調査結果“ASIA IN A NEW ERA OF DIGITAL PAYMENTS”を公表しました。

本調査においては、IDCの分析、各国政府の情報、主要な決済事業者、小売り、eコマース業界等のCEOへのインタビュー等を通じ、決済ビジネスの急激な変化をけん引する5つのマクロトレンドと、多様化する各国の決済手段の動向および特徴をまとめました。

本調査結果は現在の決済手段の利用状況、オンラインペイメントの成長率、現在と将来における決済ビジネスの動向、さまざまな決済事業者による消費者の取り込み、および公共機関、民間事業者の動向に関する重要な要素を明らかにしています。

NTTデータグループでは、APAC No.1ペイメントサービスプロバイダーを目指し、APACにおけるシームレスな決済の実現をグローバルに支援していきます。

調査概要

本調査は複数国をまたぐ決済手段を必要とする企業への情報提供を目的とし、IDCと共同でAPAC主要10カ国・地域(中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、韓国、ベトナム)における決済手段の動向を調査、分析しています。IDCの有する情報、各国政府からの情報に加えて、主要な決済事業者、小売り、eコマース業界等のCEO等を対象に詳細なインタビューを実施し、より深い知見と各市場の動向をまとめました。

APACの市場と決済手段の多様性について

世界人口の60%、GDPの40%を抱えるアジアの決済ビジネス市場は多層化、複雑化しています。それぞれの市場、国ごとに異なるプレーヤーが存在し、一社による地域全体の市場の独占を困難にしています。中国は現在、今後ともにアジアのモバイル決済の発展をけん引しており、今ではその90%の消費者がAlipayまたはWeChat Payのモバイルウォレットを利用しています。韓国市場における一人当たりのクレジットカード利用率は世界でも有数であることと対照的に、日本ではクレジットカード、コンビニ決済、オンライン/モバイルバンキング支払い等の複数の決済手段が並立しています。インドネシア、インド、マレーシアなどの新興市場では中国と同様、モバイルウォレットが大幅に成長しています。決済手段の変化における各市場のこれらの多様性は、各国の金融サービスに対する歴史的、文化的な嗜好の組み合わせから生じています。IDCはこれらの各国の決済手段の変化をけん引する5つの大局的なトレンドを明らかにしています。

  • キャッシュレス社会の実現
  • デジタルエコシステムの台頭
  • 決済データの活用
  • クロスボーダー取引の台頭
  • ファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)の手段

キャッシュレス社会の実現

公共機関にとってキャッシュレス社会の実現は非効率性の排除、透明性の向上、経済発展促進、詐欺・汚職・マネーロンダリング等の違法行為抑制といったメリットがあります。企業にとっても同様に、現金の取り扱いに関するセキュリティーやコストと言った問題の低減につなげることが出来ます。中国は現金決済からモバイル決済に移行し、韓国はクレジットカードを利用してキャッシュレス社会を実現しました。その他の地域では、一つの決済手段が優位な立場を占めることなく、クレジットカード、デビットカード、モバイル決済およびその他の決済手段を組み合わせて活用していくことが予想されます。

デジタルエコシステムの台頭

中国におけるデジタルエコシステムの進展はTencent、Alibabaを筆頭に成熟段階に達し、さらに顔認証決裁、デジタル通貨等へと突き進むことが予想されます。東南アジアにおいてGrab、Gojek等のライドシェア、その他サードパーティの決済事業者が中国に近い状況をもたらしつつあります。Grabはライドシェア、フィンテックサービス、フードデリバリーをはじめとしたサービスを単一のアプリ上で提供しており、オンライン・オフラインの決済すべてにGrabの提供するモバイルウォレットを利用可能です。Grabをはじめデジタルエコシステムはオンライン、オフラインにおいて新たな通貨を生み出します。新たな決済手段の導入は、事業者に成長の機会をもたらします。一方で、デジタルエコシステムはそのエコシステム外に対し閉鎖的であるため、自らのビジネスにより適したエコシステムの選択が重要です。

決済データの活用

eコマースや配車サービスを手掛ける企業はデータに基づいてビジネスモデルを構築しています。会員情報や店舗アプリといった従来のスキームに比べ、決済データの活用は顧客に関する有用な情報を容易に収集可能です。すでにアジア全域に展開する決済サービス事業者によりデータ提供が行われています。提供された業界全体のデータを分析することで、各企業の独自のデータを利用する場合よりもさらに深い洞察をもたらします。

クロスボーダー取引の台頭

クレジットカード事業者やデジタル決済事業者は国際市場全体でサービスを拡大しており、海外でも使い慣れた決済手段を提供することで、より多くの利便性をもたらします。オンライン取引でも顧客の使い慣れた決済手段を提供することで、カート離脱率を低減し顧客ロイヤルティーを高めることが可能です。一部のeコマースビジネスでは、国境を越えた注文が収益のかなりの割合を占めています。一方で複数の決済手段をサポートするために複数の決済事業者と提携をすることにより、注文の追跡とリコンサイル(取引照合)に関する問題が生じる恐れがあります。単一プラットフォーム上でさまざまな決済手段を提供するソリューションを活用することで、これらの問題を回避可能であり、加えて複数の通貨を扱うことにより生じる問題の多くを軽減できます。

ファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)の手段

インドネシア、フィリピン、ベトナムなどの市場では、銀行利用者の比率が全人口の35%-45%と低く、フィンテック主導の金融サービスの事業者にとって大きなビジネス機会が存在します。決済事業者による金融包摂のメカニズムとして最も主要かつ重要なものに、銀行口座の資金の出し入れを可能にするモバイルウォレットがあります。また、多くのフィンテック企業はこれらのモバイルウォレットを活用し、顧客の行動プロファイルと取引履歴に基づいて小口ローンやその他の付加価値的な金融商品を提供しています。

各決済手段の状況

アジアの消費者の間では、さまざまなモバイル決済事業者の市場参入を背景とし、その利便性に後押しされ、状況に応じたさまざまな決済手段が普及しつつあります。アジアにおいては、全体的に他のエリアと比較して、環境や文化的要因により、消費者の支払い方法により多くの多様性が見られます。

クレジットカード

クレジットカード決済において、韓国はアジア地域をけん引しています。中国は伝統的にクレジットカードの利用が少ない市場であるにもかかわらず、クレジットカード取引の成長率は地域最高です。これは、海外旅行の増加、国内支出の増加、モバイルウォレットのチャージなどのいくつかの要因によるものです。

デビットカード

デビットカードの利用状況はクレジットカードとは非常に異なります。2019年の中国のデビットカードの利用額は、2位の韓国と比べても3倍以上と突出しており、そのほとんどがUnionPayによるものでした。それ以外ではマレーシア、タイにおいても政策や普及教育の後押し等により普及が進んでいます。

モバイル決済

モバイル決済市場の約半分をAlipayとWeChat Payが支配しており、中国のモバイル決済の一人当たりの利用額は第二位の韓国の約28倍と圧倒的です。

Buy now, pay later

ShopeeやLazadaなどのデジタルプラットフォームで利用できる後払い支払いおよび分割払いローンサービスである「Pay Later」が非常に注目されています。このような後払いローンは、イギリスやオーストラリアなどですでに人気が出ており、現在、プラットフォームの大小を問わず一般的に利用可能です。

各国の詳細状況

各国の詳細については本調査結果をご参照ください。

将来の動向

仮想通貨

仮想通貨はその透明性とセキュリティーの観点から非常に注目されています。現在最も進んでいるのは中国のデジタル元プロジェクトです。2020年から深圳で始まるトライアルは、次世代の通貨の世界標準として、および現在の米ドル覇権に挑戦する存在として世界中から注目されています。

従来の決済手段のデジタル化

従来のクレジットカードがデジタルに置き換わりつつあり、将来的に物理的なカードは完全にデジタル化される可能性があります。これはセキュリティー向上の目的で物理カードのトークン化としてすでに行われており、ApplePayやSamsungPayなどの主要な支払いシステムで使用されています。

決済手段提供から決済情報提供へのシフト

競合他社との差別化は、決済事業者が提供する情報に大きく依存するようになっています。行動分析、消費者分析、来店者のデータは新商品やサービスを導入し、新たな成長分野を見いだすためのツールの一部となります。

2030年のオンライン決済

モバイルウォレットは2030年までにかなりの割合で浸透し、今回取り上げた10の国と地域のうち、7つの市場で最も利用頻度の高い決済手段になると予測されています。今後10年間、政府と企業双方にけん引されてオンライン決済における現金決済が減少すると見られます。

終わりに

競合他社に先行するためには、ビジネスモデルに適した新しくて安価でシームレスな支決済手段を利用することが重要です。各国の支払いシーンの複雑さと広がりを理解している決済手段のパートナーを見つけることが、キャッシュレス社会に向けた変革に取り組むすべての事業者の最初のステップとなります。本調査結果は、顧客のニーズと急速に変化する支払いの状況を先取りするために必要な情報を提供します。

調査結果のダウンロードについて

本調査結果の調査結果“ASIA IN A NEW ERA OF DIGITAL PAYMENTS”は、こちら(https://www.nttdata-gps.com/white-papers/asia-in-a-new-era-of-digital-payments)(英語)のサイトからダウンロード可能です。

今後について

今回の調査を通じ、アジアのペイメント市場は各国の文化、経済、歴史的な背景から多様化複雑化しているものの、大局的にはどの市場においても同様にキャッシュレス社会の実現に向けた大きな転換点にあることが明らかになりました。

NTTデータグループでは、APAC No.1ペイメントサービスプロバイダーとして、アジア各国における決済サービス及びシームレスなクロスボーダー決済の実現をグローバルに支援していきます。

本件に関するお問い合わせ先

ITサービス&ペイメント事業本部
グローバルペイメント&サービス事業部
柳澤、天満(てんま)
E-mail:globalpay-js@kits.nttdata.co.jp