米国電気電子学会のトップジャーナル(IEEE SMC: Systems)に論文掲載 ~少数の心理アンケートで脳活動を取得していない個人に対する脳活動推定が可能に~
2021年8月2日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)と、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下:NICT)脳情報通信融合研究センター(以下:CiNet)、および芝浦工業大学注1との共同研究の論文が、専門家による厳正な査読を通じて研究の新規性、重要性、信頼性が認められ、論文誌IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics: Systems(以下:IEEE SMC: Systems)にて採択、掲載されました注2。
論文において、NTTデータとNICTおよび芝浦工業大学は、fMRI注3で取得した動画コンテンツ視聴時の脳活動に対しネットワークグラフ型数理モデルを用いることで、従来は困難であった個人間の脳活動の類似度を数値化し、さらに機械学習を用いることで、同じ個人から別途取得した心理アンケート注4から脳活動の類似度を推定できることを示しました。
この成果を用いることで、少数の心理アンケートに回答するだけで脳活動を取得していない個人に対する脳活動を推定することが可能となり、脳情報を軸としたスモールマスやパーソナライズサービスへの適用が見込まれます。
NTTデータは、今後も世界に先駆けた次世代の脳情報通信技術の研究開発とその社会還元を目指して、産学共創体制の下で脳情報通信産業活性化に向けて取り組んでいきます。
米国電気電子学会について
米国電気電子学会(以下:IEEE)は1963年に設立された電気・情報工学分野における世界最大規模の学術研究団体で、技術標準化機関でもあります。IEEE SMC: Systemsはシステム工学、マンマシンシステム、およびサイバネティックスに関する革新的な研究開発を行うIEEEの専門家団体です。
このたび、NTTデータとNICTおよび芝浦工業大学が共同で投稿した論文が、厳正な審査のもと、新規性、重要性、信頼性の点において審査基準を満たしたことを受けて採択、ジャーナル誌への掲載となりました。
論文情報
タイトル: | Reduction of information collection cost for inferring brain model relations from profile information using machine learning |
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著者: | 新熊亮一(芝浦工業大学(2021年3月まで京都大学))、西田知史(NICT CiNet)、前田直哉(NTTデータ)、角将高(NTTデータ)、西本伸志(NICT CiNet) |
論文概要: | 近年の脳情報研究の進展やNeuroAI®の登場により、人間の脳活動に基づいたコンテンツのレコメンドシステムが現実のものとなってきましたが、人々から脳情報を収集するコストが高いという課題がありました。この論文では、心理アンケート等プロファイル情報を使用した脳活動の推定パフォーマンスの向上と、プロファイル情報の収集コストとの間のトレードオフを解決する方式を提案します。 提案する方式では、ノード間の関係性情報と機械学習で作成されたネットワークグラフ型数理モデルがプロファイル情報から脳活動を推定し、さらに特徴選択方法を適用することで、プロファイル情報を収集するためのコスト、つまりアンケート項目の数を削減することができます。重要度が最も高い上位のアンケート項目のみを使用するため、アンケート項目の数を制限しながら、推定のパフォーマンスを可能な限り高く維持することができます。 実際に撮像した情報で作成された脳情報モデルと、実際のプロファイル情報から作成されたプロファイルモデルを使用したパフォーマンス評価により、提案されたスキームの有効性を示すことができました。また、さまざまな実験パラメーター、さまざまなコンテンツ動画の長さ、さまざまな機能選択方法でのパフォーマンス評価の結果により、提案した方式が、脳情報モデルの推定に最も大きく寄与する上位のアンケート項目を正常に識別していることを確認することができました。 この成果を用いることで、少数の心理アンケートに回答するだけで脳活動を取得していない個人に対する脳活動を推定することが可能になり、脳情報を軸としたスモールマスやパーソナライズサービスへの技術的枠組みを提供できると期待しています。 |
実験詳細についてはこちら
参考
各機関の役割分担
芝浦工業大学: | 研究開発と技術検証 |
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NICT: | 脳反応データ取得と研究開発支援 |
NTTデータ: | 技術の事業展開 |
論文書誌情報
名称 | IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics: Systems |
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発行元 | IEEE |
発行日 | 2021/7/16 |
URL | https://ieeexplore.ieee.org/document/9487498 |
注釈
- 注12021年3月までは国立大学法人京都大学との共同研究として実施
- 注2国立研究開発法人情報通信研究機構 2021年7月20日「簡易アンケートでCM視聴者の脳反応の個人差を予測」
https://www.nict.go.jp/press/2021/07/20-1.html
芝浦工業大学 2021年7月20日「簡易アンケートでCM視聴者の脳の反応を予測」
https://www.shibaura-it.ac.jp/news/nid00001688.html - 注3fMRI(functional magnetic resonance imaging)とは、MRIを利用してヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つで、機能的磁気共鳴画像法と呼ばれています。
- 注4株式会社NTTデータ経営研究所の人間情報データベースを使用しています。
https://www.nttdata-strategy.com/services/advanced_technology/human_information.html
- 「NeuroAI」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
- その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
営業企画担当
前田、角(かど)
TEL:050-5546-2895
E-mail:neuro-biz@kits.nttdata.co.jp