組合せ最適化問題の計算方式「Adaptive Bulk Search 2」のGPUエンジンを無償公開

トピックス

2024年1月25日

株式会社NTTデータグループ

株式会社NTTデータグループ(以下、NTTデータグループ)は、国立大学法人広島大学(以下、広島大学)注1と共同開発した組合せ最適化問題を効率よく探索する計算方式「Adaptive Bulk Search(ABS)」の改良版「ABS2」のGPUエンジンおよびAPIを研究評価目的に限り2024年1月25日から無償で公開します。同GPUエンジンおよびAPIを用いることにより、ユーザーが保有する重要情報もクラウドなどにアップロードすることなくセキュアに活用できるよう、ユーザー自身の環境で稼働可能です。また、ユーザーが保有する他の数理最適化ソルバー注2との連携処理が可能となり、高速な並列解探索を実現します。
組合せ最適化問題は、物流、製造、金融、化学などの多様な分野での活用が進んでおり、NTTデータグループ イノベーションセンタ注3の量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボ注4では、これらを実ビジネスへ活用する取り組みを進めています。本手法の開発により、組合せ最適化処理の応用分野の開拓がより進むと考えています。

背景

社会に存在する解決すべき問題の多くは、多数の選択肢から最適なものを見つける組合せ最適化問題として捉えることができます。しかし、個々の課題に合わせた専用の計算方式を開発するには莫大なコストが必要です。一方で、多くの組合せ最適化問題は二次非制約二値最適化(QUBO)と呼ぶ形式の問題に変換可能であることが知られています。こうした背景からNTTデータグループは社会貢献活動の一環として、広島大学と共同でQUBO問題の組合せ問題最適化の計算方式「Adaptive Bulk Search(ABS)」を開発し、研究評価向けに無償公開してきました注5。しかし、ABSも含めて外部資源を活用するためには一般的に、計算処理に必要な入力データをクラウドやユーザー環境外のサーバーへアップロードする必要があり、社外秘となるデータの活用は進まず、用途が限定されてきました。

ABS2の特長と利用環境

この課題を解決するためにNTTデータグループと広島大学は、ユーザー環境でABS2 QUBOソルバーを利用するためのC++プログラミング言語用APIを開発しました。このAPIを通じて、ユーザーはC++プログラムからABS2のGPUエンジンにアクセスでき、GPUを活用してQUBO問題の解を迅速に探索できるようになります。このGPUエンジンおよびAPIを2024年1月25日から非商用かつ研究評価目的に限り、無償で公開します。なお、NTTデータグループは2023年4月にイノベーションセンタによる先進技術導入支援サービス注6においてコンサルティングサービスの提供を開始しています。今回の取り組みは、その一環として実施している広島大学との共同研究成果です注7

ABS2のGPUエンジンの利用に関する詳細は以下のWebページをご覧ください。
ABS2 QUBO Solver(https://abs2.cs.hiroshima-u.ac.jp

今後について

NTTデータグループでは、ABS2 QUBOソルバーの性能向上を継続的に行うとともに、本手法に限らず、量子アニーラーや組合せ最適化問題に対するさまざまな新手法の開発・適用を進めていきます。今後は、グローバルにおいて量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボのサービスを展開し、今回公開するAdaptive Bulk Search 2のGPUエンジンの実行環境と合わせて、量子コンピューターや量子アニーリング・イジングマシンなどの次世代アーキテクチャーのさらなる高度な利用を希望するお客さまに向けて、業務要件に基づいた検証支援を行います。

注釈

  • 注1 広島大学大学院先進理工系科学研究科コンピューターシステム研究室 中野浩嗣教授
  • 注2 最適化ソルバーとは、最適化問題において最適解を得るためのアルゴリズムを搭載したソフトウエアのこと。
  • 注3 NTTデータグループは、中期経営計画において掲げる技術戦略において、技術の成熟度に応じたEmerging、Growth、Mainstreamの3つの領域における活動を推進しています。2022年8月に設立したイノベーションセンタはEmerging領域の活動であり、量子コンピューター、メタバースなど5~10年先に主流となる先進技術を見極め、お客さまとの共創R&Dを通し新たなビジネス創出に取り組んでいます。大学やスタートアップとも連携することで、各国で先行する技術情報をいち早く収集し世界トップクラスの先進技術活用力の獲得をめざします。
    参考:グローバル6カ国に「イノベーションセンタ」を設立
    https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2022/081900/
  • 参考:グローバル6カ国に「イノベーションセンタ」を設立
  • 注4 量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボのサービス開始
    https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2019/012501/
  • 注5 組合せ最適化問題の計算手法「アダプティブ・バルク・サーチ」の実行環境を無償公開
    https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2021/102902/
  • 注6 ブロックチェーン・デジタルツイン・量子アニーリングの導入支援サービスを提供開始
    ~イノベーションセンタに事業規模拡大を担うグローバルラボを設置~
    https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2023/042101/
  • 注7 共同研究成果詳細については、広島大学のニュースリリースをご覧ください。
    https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/81193

参考発表

広島大学とのこれまでの取り組みに関する発表。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータグループ
技術開発本部
イノベーションセンタ
E-mail:qcomputer@kits.nttdata.co.jp

ニュースについて

ニュースに掲載されている、サービス内容、サービス・製品の価格、仕様、お問い合わせ先、その他の情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更となる場合があります。また、ニュースにおける計画、目標などは様々なリスクおよび不確実な事実により、実際の結果が予測と異なる場合もあります。あらかじめご了承ください。

ニュースメール配信

ニュースの更新状況をいち早くお知らせするために、メール配信を行っております。

イベント・セミナー

NTTデータが出展・講演するイベント・セミナーの情報をご覧いただけます。