ドローン運航管理システム(UTMS)を活用した
複数運航者間での飛行計画調整によるドローン接近回避の実証に成功

トピックス

2025年5月16日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、複数のドローンが同一空域内で安全かつ効率的に運航する空を目指した運航管理の仕組みを検討し、ドローン運航管理システム(UTMS)を活用したドローンの接近を回避する飛行計画調整の実証(以下、本実証)に成功しました。本実証では、KDDI株式会社(以下、KDDI)推進のもと、NTTデータに加え、株式会社トラジェクトリー(以下、トラジェクトリー)、Terra Drone株式会社(以下、Terra Drone)のUSP(UTMサービスプロバイダー)注1と共に、各社が希望する飛行計画の共有および調整の仕組みを構築し、「ドローン運航管理システム(UTMS)」の適切な機能の確認や運用評価を行いました。その中で、NTTデータは国土交通省航空局が運用する「ドローン情報基盤システム2.0(以下、DIPS2.0)注2」とUSP間での連携の在り方を検証するため、DIPS2.0を模擬する機能と、複数のUSPによる検証システムを構築し、ドローンの運航管理サービスを提供するUTMサービスプロバイダーに求められる機能要件の実現性を確認しました。
なお、本実証は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト注3」の一環として実施しました。

図1:実証全体構成

1.背景

近年、ドローンの利用範囲は農薬散布、空撮、測量、インフラ点検から物流や災害対応へと急速に広がり、産業分野での重要性が増しています。しかし従来の運航管理手法では、複数のドローンが同一の空域を運航する場合や、有人機との接近リスクが高いエリア(飛行場周辺、災害現場など)では、安全性や効率性の確保が難しいという課題があります。
このような背景から、ドローンを安全かつ効率的に運航するために、飛行計画、フライトステータス、気象・空域情報を統合的に管理するUTMの整備が必要とされており、ドローン運航者に対して、そのサービスを提供するUTMサービスプロバイダーのうち、適正な機能を持つプロバイダーを認定する制度について、国土交通省航空局が検討を進めています。この制度により各事業者が安全かつ効率的な運航を行うための新たな運用枠組みが確立されると期待されています。
本実証は、実運用を想定したUTMの検証環境を構築し、UTMサービスプロバイダーの認定開始に向けた、機能性および運用性の確認を目的とした取り組みです。

2.実証内容

本実証により、DIPS2.0の外部システムインターフェースを模擬した検証用環境とUSPが連携した環境において、USPを利用していないドローン運航者とUSPを利用しているドローン運航者双方に対しての飛行情報や気象・空域情報などの情報共有、USP間での飛行計画調整の実現性を確認することができました。実施内容は以下の通りです。

実証日 2025年2月19日~20日
実施場所 福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)
参加企業 KDDI株式会社、株式会社トラジェクトリー、Terra Drone株式会社、株式会社NTTデータ
実証項目 各社が開発・構築したUTM運用基盤を使用し、実運用を想定したシナリオを用いて評価を行いました。具体的な検証内容は以下の通りです。
  1. 複数のUSPが共存する場合における飛行計画の調整手法
  2. 国際標準フォーマットに準拠した、関係者間でのドローン制限空域の情報連携
  3. 実機の試験飛行による業務運用
シナリオ 複数USP間での飛行計画調整を想定した具体的なシナリオは以下の通りです。
  • 飛行調整が重複した場合のメッセージによる計画調整(重複解消)
  • 飛行調整が重複した場合の飛行実態の把握による計画調整(飛行時間調整)
  • 災害時、緊急用務空域が設定された場合の計画調整
実証結果
  • USP間での飛行実態の把握や、国際標準フォーマットに準拠した空域情報の共有など、機能面の正確性が確認できました。
  • 運用面において、複数USP間での重複する飛行計画の相互調整やUSPを利用しないドローン運航者とのデジタルツールよる情報共有の有効性を確認し、社会実装に向けた課題を抽出しました。

また、本実証と合わせて、NTTデータはドローンの飛行リスクの高いエリアにおける高密度運航を見据え、ヘリコプターなどの有人機との接近リスクの高い飛行場周辺での有人機との情報連携についても検証を実施しました。

図2:複数USP間での調整シナリオ例

図3:飛行計画の調整例

3.今後の展望

今後は、「UTMサービスプロバイダー認定制度」開始に向けた環境整備および、多数機同時運航の拡大に向けて、より高密度な運航を実現するため、官民連携によるドローン運航における官民連携エコシステムの開発を推進します。また、NTTデータがもつドローン運航管理アセットである「airpalette® UTM」注4を活用し、防災・災害対応、巡視・点検、測量などのさまざまな分野におけるドローンの利活用拡大や社会課題解決の一翼を担うとともに、安心・安全な空のインフラ構築に寄与することを目指します。

注釈

  • 注1 ドローン運航者に対して運航管理サービスを提供する事業者です。
  • 注2 航空法に基づくドローンの登録申請、飛行許可・承認申請、飛行計画通報等の各種手続きをオンラインで行うことができる申請システムです。通称DIPS(Drone/UAS Information Platform Systemの略)。(https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/
  • 注3 低高度空域を飛行するドローン・空飛ぶクルマ・既存航空機がより安全で効率的な飛行を実現できる統合的な運航管理技術の開発などを実施しています。通称ReAMo(リアモ)プロジェクト。(Realization of Advanced Air Mobility Projectの略)。
    https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP2_100181.html
  • 注4 複数ドローンの集中管理および空域管理を実現するドローン運航/交通管理ソフトウエアパッケージです。
    https://www.airpalette.net/ja/utm
  • 「airpalette」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
第一公共事業本部
モビリティ&レジリエンス事業部
航空システム統括部
羽鳥
E-mail:info.nttd_utm@hml.nttdata.co.jp