IOWN® APNを用いたデータセンター相互接続の技術検証を実施

~地理的に分散したデータセンターを活用した次世代金融システムの構築をめざす~

トピックス

2026年10月23日

株式会社三菱UFJ銀行
株式会社NTTデータグループ
NTT西日本株式会社

株式会社三菱UFJ銀行(取締役頭取執行役員 大澤 正和、以下三菱UFJ銀行)、株式会社NTTデータグループ(代表取締役社長 中山 和彦、以下NTTデータグループ)、NTT西日本株式会社(代表取締役社長 北村 亮太、以下NTT西日本)は、IOWN Global Forum注1での金融ユースケースの取り組みの一環として、IOWN® APNを活用したデータセンター相互接続の技術検証を実施しました。

本検証では、地理的に分散した複数のデータセンターを活用する将来の金融システムを想定し、複数拠点に配置した分散データベースについて、広域環境での処理性能と、一部拠点との通信が途絶した場合のシステムの挙動を評価しました。

その結果、IOWN® APNを用いた環境では、模擬IP-VPN環境に比べ、拠点間距離の増加に伴うデータベース処理性能の低下を抑えられることを確認しました。さらに、銀行の振込処理を模擬したシナリオでは、1,000km相当の条件で、IOWN® APN環境では、単位時間あたりの処理件数が模擬IP-VPN環境の約1.7倍注2注3となることを確認しました。

また、一つの拠点との通信を遮断した場合、一時的に処理性能が低下するケースが確認されたものの、その後、残存する拠点でデータ処理を再開できることを確認しました。本検証で評価した更新処理では、データの欠落や重複は確認されませんでした。

三社は、今回の検証で得られた知見と課題を踏まえ、地理的に分散したデータセンターを有効活用し、災害等の発生時の金融サービス継続性向上をめざす次世代金融システムの実現に向け、引き続き検討を進めます。

背景

金融システムには、高い信頼性や可用性に加え、大規模な災害等の発生時にもサービスを継続するための耐災害性が求められます。その対策の一つが、地理的に離れた複数のデータセンターの活用です。

従来の災害対策では、平常時のメインサイトとは別にバックアップサイトを設け、データのバックアップやレプリケーションを行う方式が一般的です。一方、複数のデータセンターを平常時から稼働させれば、システム資源の有効活用に加え、障害時の切り替えや復旧方式の高度化につながる可能性があります。

ただし、データセンター間の距離が長くなるほど通信遅延が増加し、複数拠点にまたがるデータベース処理の性能に影響するため、広域環境への適用には技術課題があります。

こうした課題に対し、低遅延通信を特長とするIOWN® APNの活用により、地理的に離れた複数のデータセンターをより一体的に利用できる可能性があります。

三菱UFJ銀行およびNTTデータグループは、次世代金融システムの構築に向け、IOWN®技術の活用を検討し、IOWN Global Forumを通じ、2024年7月に金融業界のデジタルトランスフォーメーションに寄与するIOWN®技術の活用策をまとめたホワイトペーパー注4を、2025年2月にIOWN®技術の実装時の参考となるアーキテクチャーと技術検証の手引きをまとめたホワイトペーパー注5を発表しました。

さらに、三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本は、これらのホワイトペーパーに基づく技術検証の結果をPoCレポート注6としてIOWN Global Forumを通じて公開しています。今回、三社はこの取り組みをさらに進め、IOWN® APNを活用し、広域に分散したデータベースシステムの処理性能と障害発生時の挙動を検証しました。

各社の役割

企業名 役割
三菱UFJ銀行 金融分野の分散データセンター活用シナリオの検討、検証条件の提言
NTTデータグループ プロジェクトマネジメント、データベースシステム設計・構築、検証推進
NTT西日本 APNを含む検証環境の提供、ネットワーク基盤設計・構築

検証の概要

検証1.広域に分散したデータベースシステムの性能評価

日本国内3拠点5ノードに配置したデータベースノードを平常時からすべて稼働させ、IOWN® APN環境と模擬IP-VPN環境でのデータ読み込み・書き込み性能を測定しました。

検証では、遅延制御装置を用いて250km、500km、1,000km相当の拠点間遅延を再現し、拠点間距離の増加がデータベース性能に与える影響を評価しました注2。その結果、いずれの環境でも距離の増加に伴う処理性能の低下が確認された一方、IOWN® APN環境では模擬IP-VPN環境に比べ、距離の増加に伴う性能低下を抑えられることを確認しました。

また、仮想的な銀行の振込処理を模擬したシナリオでは、1,000km相当の条件で、IOWN® APN環境では、単位時間あたりの処理件数が模擬IP-VPN環境の約1.7倍となることを確認しました注3。

No. 評価観点 主な評価内容
1 データベース 読み込み・書き込み性能、レイテンシ、スループット等
2 銀行業務模擬 振込処理を模擬したトランザクション処理性能

検証2.一つの拠点との通信断を模擬したシステムの挙動評価

検証1と同じ分散データベース環境で、一つの拠点と他拠点との通信を遮断し、一部のデータベースノードにアクセスできない状態を模擬しました。この状態で、障害発生前後のトランザクション処理の挙動、残存拠点での処理再開状況と更新データの整合性を評価しました。その結果、ネットワーク通信の遮断直後は、一時的に処理性能が大きく低下するケースが確認されたものの、その後、残存拠点のデータベースノードで処理を再開できることを確認しました。

また、本検証で正常終了したトランザクション数とデータベース側の更新結果を照合した結果、評価対象の更新処理で、データの欠落や重複は確認されませんでした。

一方、ネットワーク通信の遮断直後は、障害が発生した拠点に直接依存しない処理でも性能が低下するケースや、処理再開後も障害発生前より処理性能が低下するケースが確認されました。実システムへの適用に向け、システム構成やデータ配置、障害時の制御方式等を継続して検討する必要があります。

No. 評価観点 主な評価内容
1 処理継続性 ネットワーク通信遮断後のシステム挙動、処理再開状況
2 データ整合性 評価対象の更新処理でのデータ欠落・重複の有無
3 縮退時性能 障害後のレイテンシ、スループット等

今後の展開

三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本は、今回の検証で得た知見を活用し、地理的に分散したデータセンターの活用や災害等の発生時の金融サービス継続性向上など、次世代金融システムの実現に向けた検討を進めます。三社は引き続き、金融分野で光ネットワークを活用した技術検証等を予定しており、IOWN Global Forumを通じて、今回の検証で得た知見や課題を共有し、パートナー企業による多様なユースケースの創出やIOWN®技術の社会への広がりに貢献し、新たな価値の共創を進めます。

注釈

  • 注1 IOWN Global Forumとは、異業種のデータ、活動、人々が一体となったスマートな世界を実現することで、人と社会が自分と環境にシームレスに合わせた高度な技術から恩恵を受ける、完全に接続されたインテリジェントな社会の実現をめざすコンソーシアムです。次世代フォトニクス基盤技術などの最先端技術により、低消費電力、超広帯域、大規模シミュレーション、超臨場感UI/UXなどの高度な機能を提供できる「革新的光・無線ネットワーク(IOWN®)」の実現に取り組んでいます。フォトニクスの研究開発、分散コネクテッド・コンピューティング、ユースケースとベストプラクティスなどの分野における新技術、フレームワーク、仕様、リファレンスデザインの開発を通じて、将来のデータとコンピューティングの要求を満たす新しい通信インフラのイノベーションと導入を加速することを目的としています。三菱UFJ銀行およびNTTグループが参画する当コンソーシアムには、2026年9月現在において170を超える世界中の企業・研究機関・自治体などが加盟しています。
  • 注2 論理的な拠点間距離について:本検証での250km、500km、1,000kmの拠点間距離は、遅延制御装置で通信遅延を付与し、光ファイバーの伝搬距離に換算した論理的な距離です。当該距離の実回線を用いた検証ではありません。
  • 注3 模擬IP-VPN環境について:公開されているIP-VPNサービスの通信品質情報等を参考に、遅延およびパケットロスを実験環境上で再現したものです。商用IP-VPN回線とIOWN® APNを直接比較したものではありません。
  • 注4 「Services Infrastructure for Financial Industry Use Case, 2025年4月改訂」(https://iowngf.org/content-type/use-cases/)
  • 注5 「Reference Implementation Model and Proof-of-Concept Reference of Services Infrastructure for Financial Industry Use Case」(https://iowngf.org/content-type/technology-docs/)
  • 注6 「Inter-DC VM Migration and Long-Distance DB Replication for Financial Industry」(https://iowngf.org/content-type/proof-of-concepts/)
  • 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
  • 「IOWN®」はNTT株式会社の登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部
Innovation技術部
梅森、後藤
E-mail:iown@kits.nttdata.co.jp

NTT西日本株式会社
デジタル革新本部
技術革新部
IOWN推進室
菅野、近藤
E-mail:iown-pr@west.ntt.co.jp