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日本の自動車行政を支える「MOTAS」をデジタル化。組織の枠を超えた連携で、次世代のインフラをつくる

1970年代から稼働し、日本にある自動車すべての登録・検査を管理する自動車登録検査業務電子情報処理システム、通称「MOTAS」。この日本の車社会の安心・安全を根底から支える中枢システムの第7次更改プロジェクトが本格始動しました。少子高齢化による人手不足や社会のデジタル化の中で、どのような「あるべき姿」を描くのか。多様なステークホルダーが関連する大規模システム更改において、自動車行政のデジタル化を目指すプロジェクトの中核メンバー3名に、その舞台裏と醍醐味を聞きました。

目次

Profileこの記事に登場する人

Project プロジェクトの意義

日本の自動車行政を支える巨大インフラ

1970年代から稼働し、日本の自動車を管理する「MOTAS」。人手不足や業務の複雑化といった課題を背景に、第7次更改では自動車行政のデジタル化というミッションに取り組みます。

分野横断の連携で困難を乗り越える

複雑なステークホルダー間の調整や数多くの要望といった難局を、営業と開発の強固な連携で突破。さらに金融分野や法人分野、グループ会社などの知見も結集し、広大なスコープを乗り越えます。

ベンダを超え、未来をつくるパートナーへ

半世紀にわたる実績と信頼、組織の総合力を武器に、システムベンダを超えて制度設計からともに考える事業パートナーへ。お客様とともに、より良い社会をつくる使命に挑みます。

インタビュー動画

0:00 オープニング
0:26 プロフィール
0:36 PJのアウトライン
1:57 PJの難題と乗り越え方
5:02 PJを成功に導く“鍵”とは

自動車行政の基盤である「MOTAS」。その意義と第7次更改への挑戦

――今回のプロジェクトの舞台となる自動車登録検査業務電子情報処理システム、通称「MOTAS」とはどのようなシステムなのでしょうか。

秋元 岳 秋元

MOTASは、国土交通省様が管轄する、日本の自動車行政の中枢を担うシステムです。簡潔に言えば、日本で保有されているすべての自動車の登録情報と検査情報を管理し、車検証を発行したり、ナンバープレートの番号を払い出したりするためのシステムです。

私たちが普段当たり前のように車に乗り、安全に道路を走れているのは、このシステムによって「誰が持ち主か」「きちんと整備され、安全基準を満たしているか」が厳密に管理されているからです。NTTデータの社内でも非常に歴史が古く、1970年から半世紀以上にわたって稼働し続けている、まさに日本の「自動車産業のインフラ」とも言える、重要な社会基盤です。

真柴 竜児 真柴

自動車行政の基盤となるシステムでありながら、制度改正や時代の変化に応じて変化を続けているのもMOTASの特徴です。直近の第6次更改では、電子車検証の導入という大きな進歩もありました。現在、私たちが取り組んでいる第7次更改では、自動車行政の総デジタル化という目標に向けて動いています。

――他のシステムと比較して、MOTASならではの特徴や難しさはどのような点にあるのでしょうか。

濱本 裕太 濱本

まずはステークホルダーの多さと複雑さが挙げられます。自動車保有関係の手続きにおいては、国交省様だけでなく、警察や地方自治体などとも横串での連携が求められます。私たちから見たメインのお客様としては国交省様になりますが、他のステークホルダーの意見も考慮する必要がありますし、何より実際に申請する国民の立場に立って、使いやすいシステムをつくらなければなりません。

秋元 岳 秋元

その通りです。このように各省庁を横断する制度とシステムは他に例がありません。全員のステークホルダーの要望を満たしつつ、現場職員の方々や申請者にとっての利便性も確保しなければなりません。高度な調整が求められるプロジェクトですね。

真柴 竜児 真柴

開発目線でのMOTASの特徴としては、日本のみならず海外を見渡しても「同じ仕組みのシステムは他に存在しない」という、独自性の高いシステムである点です。「絶対に止めることができない」というミッションクリティカル特性は他の大規模システムとも共通していますが、「参考にできる事例がない」という違いは大きいです。また、日本の法制度や業務運用と一体となったシステムである一方で、お客様の事業環境におけるスピードや複雑性は年々高まっています。その結果、制度設計とシステム開発が並行して進む局面も増え、従来の完全なウォーターフォール型プロセスが通用しにくくなっています。こうした背景から、より柔軟な開発対応が求められており、それが本案件の難しさを一層高めています。

――今回の第7次更改にあたり、お客様である国土交通省様はどのような課題を抱えていたのでしょうか。

秋元 岳 秋元

前回の更改における電子車検証の導入などでデジタル化が部分的に進んでいますが、窓口申請とオンライン申請が混在している過渡期であるため、運輸支局等の職員の方々の負担が増大してしまっているというリアルな問題がありました。一方、少子高齢化による人手不足も進んでおり、デジタル化を進めなければ、制度をこのまま維持することさえ難しくなっていくという危機意識がありました。

濱本 裕太 濱本

そうですね。特に自動車行政は制度が複雑であるため、申請に対して適切に対処するためには支局ごとの人財育成が不可欠でした。ですが、それも人手不足によって維持が難しくなってきています。デジタル化できる業務はデジタル化し、職員の方々は本当に重要な業務に集中する、という業務の棲み分けも重要な課題でした。

――自動車行政という社会基盤が岐路に立たされているわけですね。これほどに社会的意義が大きく、なおかつ難易度の高いプロジェクトに対して、皆様はどのような想いを持って臨んだのでしょうか。

秋元 岳 秋元

例えば自動運転や人手不足など、自動車を取り巻く環境は大きく変わってきています。また、人口は減少に向かっている一方で、日本の自動車登録台数は大きく変わっていないというデータもあります。こうした中で、今後、より少ない人数で日本の自動車を管理していくにはMOTASが重要な役割を担うという使命感を持ってプロジェクトに臨んでいます。

濱本 裕太 濱本

私も同感です。先にお伝えした通り、ステークホルダーが非常に多いシステムのため、プロジェクトを前進させるためには関係者の間に立って意思決定を支援していく存在が必要です。たしかに難易度の高いプロジェクトではありますが、営業としては自分の介在価値を感じられる、やりがいのあるプロジェクトですね。「自分の働きかけによってプロジェクトが動いた」という手応えを感じられる瞬間が多々あるのも、モチベーションを後押ししています。

真柴 竜児 真柴

お二人と同じく、社会の仕組みづくりに関わっているという点は、開発においても大きなやりがいです。開発期間が長かったり、体制が大きくなると、目の前の作業に追われ、仕組みづくりに関わっている感覚が薄れてしまいがちですが、メンバー含めてその感覚を感じられるような経験を積んでもらいたいと考えながら業務に取り組んでいます。

自組織ではカバーしきれないスコープの広さを、分野横断の連携で超える

――プロジェクトにおける具体的な取り組みを教えてください。まず営業の立場では、プロジェクトの受注に向けてどのようなアクションを取りましたか?

秋元 岳 秋元

まずはお客様の直近の課題意識を正しく把握するところからスタートしました。システム更改は大きなイベントであり、お客様もこのタイミングで大きな変革を行いたいという意識が強く、第7次更改で「何を・どこまで」達成するのかをすり合わせることが重要でした。一方で、NTTデータは長年にわたってMOTASに携わってきた立場として、単に直近の課題に対する「処方箋」を考えるだけでなく、今後顕在化してくる問題にも対応できるよう、将来のあるべき姿についてもお客様と議論しながら中長期的なゴールイメージを描いていきました。

濱本 裕太 濱本

私は営業の現場リーダーとしてお客様と緊密にコミュニケーションを取り、「数多くの関係者による合意形成」という難航しがちな調整をリードしていきました。当初はシステムの輪郭すら曖昧な状態から、お客様に仮説をぶつけ、少しずつ形をつくり、コンセプトとして昇華していきました。

――数多くのステークホルダーからなる複雑な調整をどのようにリードしたのでしょうか?

濱本 裕太 濱本

多角的に情報を集めるとともに、本当に課題解決になると信じられる情報を掴み取ることを心掛けました。お客様側はそれぞれ立場の異なるステークホルダーの集合体であるため、誰か一人のキーマンだけの意見を反映したシステムでは、真に課題解決できるものにはなりません。現場の運用に詳しい方、法制度に詳しい方、外部団体との利害関係調整に長けた方など、それぞれの立場を踏まえてリレーションを構築しながら適切な情報を収集し、そこに私たちが持つシステムの知見を加えることで、初めて意味のある提案ができると信じていました。

秋元 岳 秋元

そうですね。もう一つ、合意形成の難しさに関わる要因を挙げると、行政機関であるお客様は経済合理性だけを重視するわけではありません。民間企業であれば、経済性の観点から一気呵成にデジタル化を進める判断もありえるかもしれませんが、国交省様はITを使いこなせない人のことを切り捨てることはしません。そのため、私たちとしても「デジタルデバイド(ITの恩恵を受けられる人とそうでない人の格差)」を考慮しながら、適切なバランスの提案を持っていく必要がありました。

――その一方、開発側ではどのような山場がありましたか?

真柴 竜児 真柴

プロジェクトの受注後、要件定義を進めていく中で発生した、お客様側からの新たな要望がありました。これもステークホルダーの多さに起因するのですが、プロジェクトの進行に伴い、国交省様のもとには関連団体から様々な要望が寄せられます。それらの要望一つひとつに対して計画に含めるかどうかを検討していると要件定義が終わらず、後工程の設計に入れません。そこで追加の要望をまとめてリスト化し、営業と連携しながらお客様と相談を行い、優先度や予算などに応じて対応を決めていきました。

濱本 裕太 濱本

その際、お客様に判断を委ねるのではなく、どこまでなら計画に入れられるか、あらかじめ線引きした上でお客様に話を持っていきました。お客様の組織力学に対する理解をもとに「意思決定しやすい」土台を作って話を持っていくことを心掛けたため、前向きな方向性を見出すことができました。

真柴 竜児 真柴

その後の基本設計では、外部仕様の検討でもう一つ山場がありました。今回の更改では、ユーザーが利用する新たな端末を陸運局に設置することになっており、初めて端末に触れる人でも迷わずに利用できる画面設計が肝でした。そこで、NTTデータのデザイナー集団「Tangity」と連携して、デザイン思考をもとに画面設計を進めていきました。デザイン思考で画面のモックアップを作成し、お客様にも実際に操作いただいた上で仕様を凍結することができ、お客様満足にも寄与できたと考えています。他組織との連携は、NTTデータの強みを実感した出来事でもありました。

――組織間での連携という点では、今回、金融分野やグループ会社などとの連携もあったそうですね。

秋元 岳 秋元

はい、今回のシステム更改は関連プロジェクトも含めると非常にスコープが広く、公共・社会基盤分野だけでカバーしきれるものではありませんでした。例えばキャッシュレス支払いの導入というプロジェクトでは、豊富な知見を持つ金融分野と連携。また、窓口専用の自動受付機の導入プロジェクトでは、筐体の知識を持ったグループ会社と連携しました。

濱本 裕太 濱本

今回の第7次更改とは別のスコープの話になりますが、法人分野とも連携し、より中長期的な制度設計を見越した議論もお客様と実施しました。自動車自体が進化し、自動運転技術も登場している中で、「車検はこのままでいいのだろうか」という論点もあったからです。そこで私たちは法人分野と連携して自動車メーカーや自動車産業側の声も取り入れ、より視座の高い提案を行い、お客様と意見交換を行いました。目の前のシステム更改だけにとどまらない幅広い議論ができたのは、他分野との連携があったからこそです。

システムベンダから、お客様とともに未来をつくる事業パートナーへ

――プロジェクトの現在地と今後の展望について教えてください。

真柴 竜児 真柴

現在は設計工程の終盤に入っており、この後に製造工程が控えています。まだ道のりは長いのですが、スコープが定まって具体的なものづくりの工程に入りつつあるという点で、最初の大きな節目は超えたとも言えます。もちろん、これまでお客様とともに描いてきた構想を、きちんと動くシステムとして形にするという意味で、開発担当としては非常に重要な局面に来ているという緊張感も感じています。また、製造においても過去のやり方を踏襲するだけでなく、生成AIを開発やレビューに取り入れるなど、開発プロセスの変革もセットで進めています。

秋元 岳 秋元

営業の視点から言えば、今回のシステム更改を無事に完遂させることが第一ではありますが、既に話に出てきたキャッシュレス支払いや窓口専用の自動受付機など、設計開発以外のプロジェクトも控えています。今後、他プロジェクトの提案も行い、お客様から評価いただき、受託できるように尽力していくつもりです。まだまだ先は長いですね。

――この大規模プロジェクトを通じて皆様が実感した、NTTデータが社会に提供できる価値や強みは何だとお考えですか。

秋元 岳 秋元

一番の価値は、半世紀以上にわたって培ってきた官公庁のお客様との「ロングタームリレーションシップ」です。単に発注者と受注者という関係を超えて、ともに日本のインフラをつくり上げてきたという信頼関係があるからこそ、私たちは制度の根幹に関わるような提案を行うことができます。

濱本 裕太 濱本

同感です。また、今回の更改プロジェクトでは、社会やテクノロジーの変化が激しい中で、自組織のケイパビリティだけでは実現したいことをカバーしきれなくなっていることを実感しました。そこで自分たちの強みとして活きたのが、NTTデータの総合力とインテグレーションする力です。他分野の組織やグループ会社、時には外部のプレーヤーの知見も借りながら、リーダーシップを発揮し、一つのプロジェクトとしてまとめあげていく。SIerとして大規模システムを手掛けてきたNTTデータには、そういった動きに長けている人財が多いことを実感しましたね。

秋元 岳 秋元

たしかに昨今は省庁横断や官民連携が求められ、お客様も一つの組織だけでは政策の実現が難しい複雑な社会になっています。そうした中でこそ、NTTデータが様々なフィールドで培ってきた技術や、幅広い業界における知見、複数のプレーヤーをまとめてプロジェクトを推進する力が活きてきます。お客様との絆を最大限に活用し、社会全体をより良くする仕組みづくりに貢献できることは、NTTデータの最大の強みになると考えています。

真柴 竜児 真柴

二人の話と同じく、長年にわたって公共システムをつくり上げてきた実績や、お客様の業務理解を下地とした信頼関係はNTTデータの強みです。お客様の御用聞きになるのではなく、「こうした方がもっと良いものができる」と提言する場面もありますね。

――これまでのお話で、MOTASの第7次更改だけが皆さんのゴールではないことがよく分かりました。今後、NTTデータとしてどのようなことに挑戦していきたいか教えてください。

秋元 岳 秋元

社会の構築において、もはやデジタル技術の活用は欠かせないものになりました。だからこそ、政策決定や制度設計といった超上流の段階からデジタルを有機的に結びつけ、お客様とともに未来を描いていくパートナーの重要性が増しています。そのような中で、NTTデータは未来を「提言」するだけでなく、それをシステムとして実行し、成果を創出するところまでを一気通貫で担える企業です。今後も、より良い社会づくりの一端を担い続けたいです。

濱本 裕太 濱本

かつてのNTTデータは、お客様がやりたいことをシステムで実現するシステムベンダの立ち位置だったかもしれません。ですが、長い関係性の中で少しずつ、システムにとどまらない議論ができる事業パートナーとしての信頼関係が築かれています。今後も、「MOTASのベンダ」という立ち位置を超えて、将来の社会を見据えて制度設計の際に価値を提供できる存在を目指していきたいです。

真柴 竜児 真柴

MOTASは長い歴史を持つシステムでありながら、制度や時代の変化に応じて常に進化を続けています。そして「世界で一つだけのシステム」と表現した通り、MOTASは過去の履歴も含め正確で信頼性の高いデータが膨大に集まっている唯一無二の財産でもあります。MOTASの新たな活用方法を見出すことで、今までにない価値を生み出せるのではないか。将来的には、そのような議論もお客様と交わしていきたいですね。

1970年代から日本の自動車行政を支え続けてきた巨大インフラ「MOTAS」。その第7次更改という大規模プロジェクトの裏側には、世界に一つだけの複雑なシステムに挑むプロジェクトメンバーたちの連携がありました。システムのベンダを超えて、お客様とともに社会をつくる事業パートナーに向けて。日本の自動車行政の未来、そしてより良い社会づくりに挑むプロジェクトメンバーたちの挑戦は、これからも続いていきます。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです