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2022年5月30日技術ブログ

質の高いDXを実現する「つながり」の極意

質の高いDXを実現するために、必要なことは何か――?本稿では、まず従来のシステム開発とDXの品質保証の考え方の違いを解説する。更にDXで品質を高めるために必要なことを示し、最後に具体的な仕組みの一例を紹介する。
目次

デジタルトランスフォーメーション(DX)における品質とは

DXとはデジタルテクノロジーを活用した変革の実現や経営戦略の推進、新たな体験の創出であり、言うなれば、お客様の継続的成長のための手段と捉えることができます。

では、DXにおける品質とは何でしょうか。NTTデータでは品質を「お客様満足」としています。DXにおいても同様であり、冒頭の定義と合わせるとDXにおける品質の要点は以下のように示せます。

DXにおける品質の要点

  • (1)お客様がデジタル技術によるビジネス変革をできているか
    (デジタルサービスとしてのビジネス変革への貢献、経営戦略への寄与)
  • (2)お客様がDXを実行した結果に満足されているか

従来開発の品質保証に比べ、DXの品質保証に必要な視点は広がる

従来のシステム開発における品質保証とは、“お客様の要求通りにシステムが動作することを保証する”が中心でした。では、DXにおける品質保証とは何でしょうか。システム開発での品質保証のイメージに倣うと、“お客様の要求通りに変革することを保証する”なのでしょうか。「変革を保証することなど、果たしてできるのだろうか?」と疑問に思われたかもしれません。ご認識のとおり、確実に変革することの保証は難しい(むしろ、できない)と考えます。DXの品質保証について議論を進めるには、これまでとは視点を変える必要がありそうです。

改めて振り返りますと、前節で示したようにDXの品質の要点は「お客様がビジネスを変革し、その結果に満足されること」でした。
変革の目的は様々であり、DXを構成する要素は多種多様です。確実な正解は無いため、試行錯誤を繰り返しながら進めることも基本になるでしょう。このような状況では、変革によるお客様の継続的成長のために必要な営みを共に継続し、お客様の期待に応え続けることが必要です。従来のシステム開発の品質保証は引き続き大切ですが、その中の1要素に留まります。必ず変革が成功し満足頂けることの保証は難しいですが、そのために必要な活動を継続していくことを示すことが、DXにおける品質保証の視点だと、私たちは考えています(図1)。

図1:DXにおける品質保証では、視点を広げよう

図1:DXにおける品質保証では、視点を広げよう

DXの品質を高めるためには

DXの品質を高めるためには、まずDXの各構成要素(図1の各)における品質を高めていくことが必要です。例えば、価値設定やデザインにおいては、真の課題をとらえ望まれる解決方法を実現するためのデザインをするなどが求められるでしょう。技術においては、例えばAIを用いる場合は、用途に応じた精度を達成することが求められるかもしれません。システムの開発段階に至っては、従来と同じくその時点で固まった要望を確実に形にしていくことが求められると考えます。

その他に、DXの品質を高めるために必要なことはあるでしょうか。

ここで例を紹介します。DXに挑戦されるお客様から、「DXをやってみたものの、なんだかうまくいっていない」という声を頂くことがあります。DXを実現するために必要なことはやっている。しかし、途中で方向性が分からなくなったり、最終的な成果が望んだ価値と異なっていたり…という内容です(図2)。

図2:お客様から頂く声(※)

図2:お客様から頂く声(※)

これらの声を踏まえ、DX全体としての品質を高めるためには、各構成要素で品質を高めることに加え、各品質が目的(=何のためにDXに取り組むのか)に沿って繋がっていることも必要だと私たちは考えています(図3)。

図3:DXの品質を高めるために必要なこと

図3:DXの品質を高めるために必要なこと

(※)NTTデータ テクノロジーカンファレンス 2021 DX品質保証 ~デジタルでのお客様の期待を叶える裏側~

https://www.youtube.com/watch?v=1hnWH1Xaj_0

具体的にどうするか

NTTデータ品質保証部では、DXにおける品質保証を実践するために前述のPOINT2に着目しています。本稿の最後に、その取り組みを紹介します。
POINT2は「各要素の品質が目的に沿って繋がっている」でした。では、具体的にどうすればこの状態にできるのでしょうか。皆様にイメージ頂きやすいように、敢えて繋がっていない状態を考えてみましょう。

各要素の品質が目的に沿って繋がっていないとは、どういうことでしょうか。簡易的な例でイメージしてみましょう(図4)。ある企業の経営戦略が「これまでに無いユーザー体験を提供することで、他社との差別化を図る」だとします。そこには更に「今までにないフィジカルな体験を提供するために、“まだ全く世に出ていない機械や道具を通じた”価値の提供をしていきたい」という意図があったとしましょう。DXを進めていく上で、このような目的や意図が各メンバーに確実に伝わっていく必要があります。一方で、開発メンバーとしては「“スマホアプリ上で”、これまでに無いユーザー体験を提供すればよい」と思っていたら、どうなるでしょうか。スマホアプリとしては高品質なものを開発したが、経営戦略にて求められていた意図には合致せず、DX全体の取り組みとしては繋がっていないため、満足できない結果となってしまいます。

「DXがなんだかうまくいっていない」という声を元に分析した結果、このような状態が実際に発生しうると私たちは捉えています。この各要素の品質が繋がっていない状態を、DXの品質を阻害する“分断”が発生していると定義し、これを抑止することが質の高いDXの実現に寄与すると考えました。

図4:DXにおいて分断が発生している状態

図4:DXにおいて分断が発生している状態

では、このような分断は何故発生するのでしょうか?2つの要因が考えられます。
1つ目は、DXに関わるメンバーの立場や目線の違いです(縦の分断)。
2つ目は、DXにおける活動範囲の違いです(横の分断)。
DXは企業の変革を目的とするため、従来のシステム開発と比べ関わるメンバーや活動(フェーズ)も多岐に渡ります。そのため、メンバーの目線の違いやフェーズの違いによる分断が発生しやすくなり、その結果「DXが、なんだかうまくいってない」という問題が起きやすくなると考えています(図5)。

図5:DXの品質を脅かす「縦の分断」と「横の分断」

図5:DXの品質を脅かす「縦の分断」と「横の分断」

分断を防ぐための仕組み

このような分断を防ぐためには、縦の目線および横の目線それぞれで「何を目指しているのか?」という目的を明らかにし、目的の調整と合意をし続けることが必要と考えます。そこで、NTTデータ品質保証部では以下の仕組みを開発しました。
縦軸を“目線”、横軸を“活動(フェーズ)”とし、目線×フェーズのマトリクスを用意します。次に、分断を防ぐために特に重要となる各交点において、目的を中心に明文化します。

図6:目線×フェーズのマトリクス

図6:目線×フェーズのマトリクス

図幅の都合により詳細は割愛しますが、具体的には各交点において“問いかけ”を用意しています。「なぜ我々がDXに取り組むのか?」という問いに対し、表向きは理解しているが、実際は微妙な目的理解のズレがあるかもしれません。このズレが積み重なっていくと、最終的に「目指したものは、これじゃない」となってしまう恐れがあります。各交点で問いかけに対する答えを明文化し、DXに関わるメンバー全員で確認できるようにすることで、齟齬があった場合に早期に気付き軌道修正を可能にすることを狙います。

今後に向けて

本稿では、DXの各構成要素の品質を目的に沿って繋いでいくことの重要さと、それを阻害する分断に着目し、解決への取り組みをご紹介しました。発想自体はシンプルかもしれませんが、多種多様な価値観や不確実性をはらむDXにおいて、目的を合意・調整し続けることはDX全体の品質に関わる1つの重要な要素だと考えています。
この取り組みは現在進行形で改善中です。成果がまとまり次第、改めて皆様にご紹介できればと思います。

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