疾患リスクアドバイスシステムを九州大学医学部と共同開発 〜福岡県久山町の住民向けにシステムの試行運用を実施〜

ニュースリリース/NTTデータ

2004年4月13日

株式会社NTTデータ

 (株)NTTデータは、九州大学大学院医学研究院の飯田三雄教授、清原裕講師らの研究グループとの共同研究の成果として、個々人の健康診断の情報から糖尿病などの生活習慣病の発症率を予測し、医師や保健師などが行う生活習慣の改善アドバイスを支援するシステム「ひさやま元気予報(仮称)」を開発しました。
 本システムは、福岡県久山町で約40年間にわたり行われてきた疫学調査*1を基盤として開発されたもので、現在、久山町が実施する健康相談会の参加者に対する健康アドバイスツールとして、有効に活用されています。このようなITシステムを活用した住民向けの健康アドバイスとしては、他の自治体においても過去に例がない先進的な試みです。

 なお、本研究は、文部科学省の平成14年度の21世紀型革新的先端ライフサイエンス技術開発プロジェクトである「ゲノム疫学に基づくEBMデータベースの開発とテーラーメイド医療の実現」*2の一環として研究を実施しています。

【システムの概要】
 本システムは、図1のように、個々人の年齢、体重、血圧、運動量などの健康診断の情報から、今後10年の間に生活習慣病を発症する可能性を、久山町の健診データを解析し、導き出した疾患リスク算出式を用いて予測し、その予測状況に応じて、運動、食事、喫煙などの個々人の生活習慣を加味した、健康アドバイスを行うことができます。
 また、本システムの重要な利用方針として、医師や保健師などの医療従事者がシステムを操作し、医療従事者としての知見を生かしつつ、住民ら被験者にも分かり易い言葉でアドバイスすることを前提として開発されています。これにより、疾患の予測結果に対する被験者の不安を回避し、納得がいくアドバイスをすることができます。

図1:システムフロー

【システムの特徴】
本システムの特徴は、以下のとおりです。
1. 個人情報を守るセキュリティ基盤
(1) 指紋によるユーザ認証機能
本システムでは、健康診断などの個人情報を扱うことになり、操作するユーザは、限られた医師及び保健師に限定しています。そのための認証機能として、指紋認証を利用しています。

(2) 個人情報の匿名化
本システムでは、健康アドバイスを行うために必要な各住民の氏名情報は、健康診断情報とは別のサーバにて管理する形態をとっており、健康診断情報を格納してあるサーバ内の情報だけでは、個人を特定できない仕組みを実現しています。

2. アドバイス効果を高める画面表示
 アドバイス効果を高めるため、疾患の発症率の表示と同時に、その疾患に関連する健康診断情報(血圧、体重など)を表示し、それらの値をスライドバーで可変にできます。これにより、例えば、スライドバーを動かしながら、「体重を5kg減らせば、発症率をここまで減らせますよ。」というように、わかり易くアドバイスを行うことができます。

3. 健康診断情報が不足している場合でも発症率を算出
 被験者により、健康診断時の測定ミス等により、発症率の算出に必要な情報が取得できていない場合があります。その際には、該当の健康診断情報の久山町におけるの平均値を利用し、発症率を算出します。あわせて、該当の健康診断情報の最大値、最小値を利用した場合の発症率を、変動幅(ex.平均値での発症率が20%で、最小値と最大値での発症確率では、10%〜40%)として表示する事もできます。

【今後の展開】
 本システムは、現在のところ、脳梗塞、虚血性心疾患、糖尿病、高血圧に対応していますが、今後は、胃癌、高脂血症などへ拡張を図る予定です。また、将来的には、個々人の遺伝子情報を加味することにより、より的確な健康アドバイスが行えるようになります。


*1 久山町における疫学調査
 福岡県久山町では九州大学医学部が、昭和36年から約40年にわたり、精度の高く、質の高い、生活習慣病の疫学調査を行っています。久山町では、全住民を対象(40歳以上)とした健康診断・往診の受診率80%以上、健康診断後の発症可否の追跡率99%以上、死因特定のための剖検率80%以上を実現しています。このような疫学調査は、久山町住民の理解と協力、九州大学医学部の努力によるもので、日本だけでなく、世界的に見ても、疫学研究において非常に貴重な存在として知られています。

*2 「ゲノム疫学に基づくEBMデータベースの開発とテーラーメイド医療の実現」
 本共同研究では、日本人の平均的集団である久山町住民を対象に、環境要因とともに日本人の健康状態の表現型と遺伝型の双方の情報を兼ね備えたデータベースを構築する。
 これに、別のプロジェクトで創設される疾患感受性遺伝子のゲノム疫学データベースを結合し、患者個々人の特性に応じて生活習慣病の発症を一定の確率で予測しうるデータベースシステムを構築する。
 このシステムの活用によって、種々のリスクレベルに応じて生活習慣の改善を促すための基本原理を見いだし、より効果的・定量的な生活習慣病の予防法を構築するとともに、質の高いテーラーメイド医療の実現を目指す。

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