納豆が生活習慣病に与える影響に関する効果確認研究について 〜「納豆で生活習慣病予防」効果の実証〜

ニュースリリース/NTTデータ

2006年4月27日

国立循環器病センター
ヒュービットジェノミクス株式会社
株式会社NTTデータ
佐賀県有田町

 国立循環器病センター(大阪府吹田市)、ヒュービットジェノミクス株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:一圓 剛)、株式会社NTTデータ(東京都江東区、代表取締役社長:浜口 友一)および有田町(佐賀県、町長:岩永 正太)は、共同研究「納豆が生活習慣病に与える影響に関する効果確認研究」を平成18年1月から試験全体で61名のご参加を得て実施し、この度終了しました。
 本研究の主評価項目は、血中総コレステロール値、血中HDLコレステロール値、血中LDLコレステロール値の10%以上の低下であり、副評価項目はBMI(body mass index)、ウエスト・ヒップ比、腹囲、体脂肪率、血圧(安静座位)、空腹時血糖値、HbA1c値、インスリン値、尿酸値、アディポネクチン値、NOx値の10%以上の低下、でしたが、これらのどの項目も試験前および試験後、納豆摂取群および非摂取群ともに統計的に有意な改善を認めませんでした。しかし部分解析(サブグループ解析)の結果からコレステロール値の高い人や中性脂肪の高い人については、それぞれの臨床検査値の有意な改善が認められました。また納豆を継続的に摂取することにより便秘の改善等のQOL(Quality of Life)の向上が認められました。このことから、納豆の継続的摂取により生活習慣病と関連する高コレステロール血症や高中性脂肪血症の改善効果およびQOLの改善が期待されることが判明しました。
 なお、本研究における成果は、The International Conference on Nutrigenomics & Gut Health(平成18年4月30日〜5月3日、NEW ZEALAND)において、国立循環器病センター・北風政史部長らとの共同研究として学会発表する予定です。

1.研究の背景
 近年、わが国においては高齢化社会への移行が急速に進み、医療費削減が国としての急務の課題となっていますが、そのような状況に伴って国民の意識も次第に病気の治療から予防へとシフトしつつあります。
 有田町(旧西有田町)では、健康診査による住民の健康管理を目標にした健康保健事業を国立循環器病センター、有田共立病院(旧西有田共立病院)と実施しております。この内容は健康診査による生活習慣病の早期発見と同時に生活習慣病患者で発症リスクが高いとされる脳血管疾患や心疾患を予防し、町民の「ゆたかで健康な生活を実現する」ものです。この健康保健事業では、健康診査結果に対して国立循環器病センターの医師や有田共立病院(旧西有田共立病院)の医師が個人の状態に応じた指導を行い、さらに町の健康福祉課の保健師が日常生活の指導に積極的に介入することで、運動の奨励や食生活の改善を訴え、この4年間で喫煙率の低下、受診者の境界型高血圧、境界型高脂血症などの罹患者が減少する成果を上げてきました。(第70回日本循環器学会総会シンポジウムにて発表済み)
 この成果を基に、医療費を抑制できる21世紀型の健康推進事業に挑戦するために、食生活改善を目指した予防策の開発を行うことを目的として、住民の自由意志での参加によるモニター試験を実施しました。

2.研究の概要
 このような背景の中で我々は、共同研究「メタボリックシンドロームの予防および症状緩和を実現する機能性食品に関する研究」において、日本独自の食文化の代表的素材である納豆を研究課題として選択し、「納豆が生活習慣病に与える影響に関する効果確認研究」を実施しました。納豆は周知のごとく納豆菌により大豆を発酵させた食品であり、近年分析手法が進み、納豆が含有する種々の成分が様々な効果を示すことが報告されていますが、その効果については食品の有効性の判定基準が明確ではなく更なる科学的な検証が必要でした。
 本研究では、納豆成分の論文的検証から有効成分を推定し、これらの生活習慣病に対する効果を確認するモニター試験を佐賀県の有田町(旧西有田町)住民の希望者に対して実施し、脳血管疾患や心疾患の危険因子である生活習慣病の一次予防効果に納豆が有効であるかを検証しました。

※ メタボリックシンドローム…生活習慣病につながる複数の数値が異常値を表している状態。ウエストが男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪型肥満)で、さらに脂質代謝異常、糖代謝異常、血圧異常などの数値のうち、2つ以上が異常値である場合、メタボリックシンドロームと診断される。

3.研究方法
 本研究は、有田町(旧西有田町)住民で平成17年度に町が実施した健康診査を受診済みであり、その結果の血圧・脂質・血糖・肥満のいずれかがメタボリックシンドロームの基準値の境界域に該当する男女52名(男性14名、女性38名、平均年齢65歳)に対して、研究概要・方法などの十分な説明後に文書による同意を得た上で、納豆1パック(30g)を4週間、毎朝食時に継続して摂取してもらうモニター試験を実施しました。また、対照群として納豆非摂取群(9名)を設定いたしました。その際、試験開始前および試験終了後に血液検査を含む臨床検査を実施し、また対象者の方には毎日食事日記を記録することにより、納豆の摂取状況の確認および栄養データの収集を行いました。さらに専門スタッフによる毎週の問診を実施し、試験期間中の生活習慣および副作用の影響についてのデータ収集を行い、これらのデータについて総合的な解析を実施しました。
 尚、本研究では、日本古来の様式によって製造された納豆(あづま食品提供)を使用しました。

4.研究結果の結果
 本研究により以下のような結果が認められました。
 本研究の主評価項目は、血中総コレステロール値、血中HDLコレステロール値、血中LDLコレステロール値の10%以上の低下であり、副評価項目はBMI(body mass index)、ウエスト・ヒップ比、腹囲、体脂肪率、血圧(安静座位)、空腹時血糖値、HbA1c値、インスリン値、尿酸値、アディポネクチン値、NOx値の10%以上の低下、でしたが、これらのどの項目も試験前および試験後、納豆摂取群および非摂取群ともに統計的に有意な改善を認めませんでした。
 その上で納豆摂取者について部分解析(サブグループ解析)を行った結果、以下の効果が認められました。
  • 高コレステロール値群(≧220mg/dl)は、納豆摂取により、総コレステロール値が有意に低下しました。一方、正常群には有意な差は見られませんでした。
    (総コレステロール値平均低下率:高コレステロール群 ▲7.7%、正常群 ▲1.5%)
  • 高中性脂肪値群(≧150mg/dl)は、納豆摂取により、有意に中性脂肪値が低下しました。一方、正常群には有意な差は見られませんでした。
    (中性脂肪低下率:高中性脂肪群 ▲12.9%、正常群 ▲3.5%)
 また、本研究でのモニターへの対面式のヒアリング調査により以下の結果を得ました。
  • 便秘症状自覚者25人のうち、20人に改善が見られました。(QOLの向上)
 なお、本試験期間中、納豆摂取による副作用等の影響は認められませんでした。

(図1) 総コレステロール(T-Cho)値の変化(図2) 中性脂肪(TG)値の変化
【図】【図】

(表1) 納豆摂取による便秘症状への効果(QOL)
【表】

5.役割
 本研究は以下の役割分担にて実施しました。

(国立循環器病センター)
  • 研究デザインの妥当性の評価
  • 採用症例等の評価
  • 臨床検査支援
  • 解析結果の評価

(ヒュービットジェノミクス株式会社)
  • 統計データに基づく試験デザインの設計
  • 健康指導支援システムの開発
  • 臨床検査の補助および匿名化されたデータの管理
  • 適切な解析手法の検討、解析

(株式会社NTTデータ)
  • 健康指導支援システムの開発
  • 個人情報の取り扱い方針策定および共同研究中のセキュリティ方針に関するコンサルティング
  • 食事調査の技術開発
  • 適切な解析手法の検討、解析

(有田町)
  • 住民の納豆摂取期間前後の臨床検査
  • 情報の匿名化
  • 健康保健事業の観点からの住民への本研究結果返却・健康指導

6.今後の展開など
 有田町では、本研究結果を含め健康増進に役立つ情報を積極的に発信し、地域住民の健康増進に取り組んでいきます。また、国立循環器病センターとの連携事業を引き続き継続していく予定です。
 国立循環器病センターは、本研究で得られた地域疫学コホートに対する介入研究の手法を生かし、食生活改善、運動推奨などの介入の効果を検証しつつ、地域医療との連携のモデルケースとして長期追跡を行いつつ、個人個人の生活習慣や体質に適した生活習慣病・循環器疾患予防プログラムの開発を目指します。
 ヒュービットジェノミクスは、有田町をはじめとする地域社会や大学との連携によるゲノム疫学研究を基盤とした医薬品分野での研究開発に加えて、今回の研究協力を通じて得られた食品の機能評価研究に関するノウハウをもとに、今後は食品関連事業に本格的に取り組む予定です。これにより、治療から予防までを対象として、健康な生活とオーダーメイド医療の実現に向けた研究成果の創出を目指します。
 またNTTデータでは、医療・ヘルスケア領域を中心としたライフサイエンス事業を今後IT利用が進んでいく成長分野と考えております。本研究については、中期経営計画の重点項目である「積極的な新商品・サービスの創造」のための施策である、新規ビジネスのパイプライン管理、新規ビジネス支援ファンドを活用しており、将来的にはオーダーメイド医療の実現を目指し、医療・医薬・ヘルスケアサービスの共同事業化を視野に入れた情報システム基盤構築に取り組んでいきます。
本件に関するお問い合わせ先

国立循環器病センター
心臓血管内科
金 智隆(キム チユン)
TEL:06-6833-5012


ヒュービットジェノミクス株式会社
経営管理部
不破
TEL:03-5212-3360


株式会社NTTデータ
■報道関係のお問合せ先
広報室 塩手
TEL:03-5546-8051

■上記以外のお問合せ先
ビジネスイノベーション本部
バイオサイエンスサービスユニット 本田・金子
TEL:03-3503-0360


佐賀県有田町
健康福祉課 奥本
TEL:0955-43-5065