国立情報学研究所の研究者向けクラウドシステムを構築 ~次世代フルOSSクラウド構築ソリューションとして商品展開予定~

ニュースリリース/NTTデータ

2012年6月6日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:山下 徹、以下NTTデータ)は、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(所在地:東京都千代田区、所長:坂内 正夫、以下NII)の研究者向けのクラウドシステムを、オープンソースソフトウエアおよび、ネットワークを仮想化できる技術「OpenFlow」を利用して構築しました。本システムは、マシン性能を最大限に引き出すことができ、また、既存のネットワーク環境からシームレスに利用できる、研究に適した次世代のクラウドシステムです。NIIは本システムの運用を2012年7月より開始します。

背景・概要

従来のクラウドでは、リソースの利用効率を向上するため、仮想化技術を利用し複数のユーザーを1台のマシンに収容する方法が取られてきましたが、仮想化によるオーバーヘッドのため、研究分野などでマシンを専有しその性能を100%引き出す用途には向きませんでした。そのため研究者の間では、高性能なマシンをクラウドとして借り、既存のネットワークと統合してクラウドの一部であることを意識せずに、シームレスに利用したいという要望がありました。

そこでこのたび、NIIはオープンソースソフトウエアdodai-compute注1/dodai-deploy注2を活用し、仮想化技術を使わず直接物理マシンを貸し出すと同時に、研究に必要なソフトウエアの自動インストールが可能な研究クラウドシステムを所内へ提供します。

NTTデータは、研究クラウドシステム構築にあたってOpenFlow技術を利用し、物理マシンの貸出時にネットワークの配線変更などを行うことなく、ソフトウエアにより制御することで動的なネットワーク構築が可能で、また、貸し出された物理マシンを各研究室のネットワークに直接接続することができ、研究室の環境からシームレスに利用可能であるネットワークシステムを実現しました。

そのため、研究クラウドシステムは、拠点集約による物理マシンの運用効率の向上というクラウドが持つメリットと、必要な計算処理能力を提供できる物理マシンが持つメリットを融合し、さらに動的なネットワーク構築が可能である、次世代のクラウドシステムとなっています。

【図】

研究クラウドシステムの特長

研究クラウドシステムは、研究者が必要とする計算機リソースを必要なときに必要なだけオンデマンドに貸し出す設計をしており、次の特長を持っています。

  • 物理マシンの性能を最大限に引き出す「ベアメタルクラウド」

    従来のクラウドでは、仮想化技術を使って利用者に仮想マシンを払い出していましたが、仮想化によるオーバーヘッドのため、仮想化しない場合に比べ計算性能が10%~30%程度低下していました。研究クラウドシステムでは研究用に物理マシン(ベアメタル)を丸ごと貸し出すことによって、マシン性能を100%利用して研究用ソフトウエアを高速で実行することができます。

  • 研究者が自分自身で研究用ソフトウエアを導入し、利用(研究)を開始できるセルフサービス型の利用モデル

    研究者が自分の端末からセルフサービスで、研究クラウドシステムのマシンプール注3から研究に必要な台数の物理マシンを借り出すことができます。さらに、借り出したマシンに、OpenStack注4やHadoop注5などのクラウド基盤ソフトウエアを自動的にインストールする機能がついており、研究用の物理マシン構成を簡単に作成することができます。

  • 従来のネットワークとの統合

    研究クラウドシステムではOpenFlowコントローラを用いることで、セキュアな閉域ネットワーク注6をネットワークの配線変更などを行うことなく、物理マシンの払い出し時にソフトウエアにより制御することで動的に構築することができます。また、この閉域ネットワークは、各研究室のネットワークに接続することができ、研究室の環境からシームレスに利用できます。

採用された技術について

研究クラウドシステムのベアメタルクラウドを実現する基本機能として、NIIを中心に開発を進めているオープンソースソフトウエアdodai-computeおよびdodai-deployを採用しました。dodai-computeは物理マシンの管理機能を提供し、dodai-deployはクラウド上に導入するソフトウエアの構成を管理するシステムです。

また、ネットワークを仮想化し、柔軟な制御を行うために、NTTデータが開発したOpenFlowコントローラを利用しています。

今後について

この研究クラウドシステムで利用した、物理マシン管理機能やOpenFlow技術を使ったクラウド機能については、既にNTTデータが提供している「BizXaaS注7フルOSSクラウド構築ソリューション」の次世代バージョンとして、秋以降に一般提供する予定です。

注釈

  • 注1dodai-computeは直接物理マシンを使ったクラウドを制御することのできる、オープンソースのハードウエア管理ソフトです。NIIを中心に開発が進められています。
  • 注2dodai-deployは各種のソフトウエアをクラウド上に自動的にインストールすることのできる、オープンソースのソフトウエア管理ソフトです。NIIを中心に開発が進められています。
  • 注3マシンプールは、利用者に貸し出すことのできる物理マシンを管理するための場所です。
  • 注4OpenStackはOpenStackプロジェクトの開発している、オープンソースのクラウド基盤ソフトウエアです。
  • 注5HadoopはApacheプロジェクトで開発している、大規模データの分散処理のためのミドルウエアです。
  • 注6閉域ネットワークは、他の閉域ネットワークから完全に独立しており、他のクラウド利用者の影響を受けずに安全にシステムを構築運用できるネットワーク環境のことです。
  • 注7BizXaaSは、NTTデータの総合クラウドサービスのブランドです。長年NTTデータグループが培ってきたシステム構築ノウハウを応用した「安心・安全・信頼」のエンタープライズ向けトータルクラウドサービスです。
  • 「BizXaaS」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
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TEL:03-5546-8051

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