バーゼルIII流動性規制対応システム「Liquidity Master™」の開発開始 横浜銀行が導入を正式決定

ニュースリリース/NTTデータ

2013年8月9日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータは、バーゼルIII流動性規制(以下、流動性規制)対応システム「Liquidity Master」の開発を開始します。また同ソリューションの導入を、株式会社横浜銀行(本店:横浜市、代表取締役頭取:寺澤 辰麿、以下横浜銀行)が正式決定しました。

今後、2015年より段階的に施行される流動性規制では、まずは海外に支店を有する銀行(以下、国際基準行)において、金融庁当局への報告の必要性が生じます。NTTデータは2015年より規制が適用される国際基準行向けに、また、その後規制の適用が予定される、国内のみに支店を有する銀行(以下、国内基準行)に向けても、安定してパッケージシステムを提供できるよう、開発を進めます。

背景

2015年より段階的に施行される流動性規制では、国際基準行において、短期間で流動性リスクに対する強靭性に関する複雑な計算および監督当局への報告が求められています。これに対応すべく、NTTデータでは2012年7月より監査法人と提携し、各地方銀行と計2回の勉強会を設けるなど、積極的な検討を進めてきました。

横浜銀行においても、流動性規制対応のため当初からシステム導入を検討しており、また既に利用しているNTTデータ提供のバーゼル規制対応信用リスクアセット計算システム「Basel Master®」、市場リスク・ALM計算システム「Banking Analyze Master®」、外部格付配信サービス「Global Rating Master®」との親和性もかんがみ、バーゼル規制対応で国内トップシェアを持つNTTデータのパッケージシステムを導入することを決定しました。

流動性規制について

バーゼル規制とは、国際的に活動を行っている銀行に対して、銀行システムの健全性および銀行間における競争条件の公平性確保の観点から、銀行経営管理の最低基準として1988年に日米欧など13か国の銀行監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会注1が設定した国際ルールです。2007年から施行されたバーゼルII規制では、銀行経営におけるさまざまなリスクの基準として、例えば銀行の経営が健全かどうかを示す自己資本比率について、国際基準行の自己資本比率は8%以上であること、などが具体的に決められています。

バーゼル銀行監督委員会は、今後起こりうる金融危機への対策としてバーゼルIII規制を施行することを決め、2010年12月にその一部として流動性規制案を公表、2015年から日本を含めた全世界のグローバルな金融機関への適用を開始します。流動性規制では、2008年にバーゼル委員会から公表された「健全な流動性リスク管理およびその監督のための諸原則」を順守していることを確認するため、「流動性カバレッジ比率(LCR)注2」、「安定調達比率(NSFR)注3」の、資金流動性にかかわる二つの最低基準を導入し、潜在的な流動性ショックに対する銀行の強靭性を高めることを目的としています。

この流動性規制の適用により、国際基準行においては、LCR、NSFR各指標を算出するため銀行全体の運用改善も含めたシステム導入へのニーズが高まっています。

システム概要・特長

横浜銀行をはじめ、本パッケージシステムを導入することで、銀行の流動性リスク態様の短期的強靭性を保証するLCRだけでなく、長期的な強靭性を保証するNSFRも算出可能となります。なお、LCRは2015年から適用が開始されますが、NSFRは2018年からの適用が予定されており、今後適用に向けてさらに規制の内容に修正が入る可能性があるものの、NTTデータでは、それらにも対応する予定です。また、国内基準行向けに今後適用されうる同様の規制に対しても、NTTデータは検討を進めます。

本システムはバーゼル規制対応信用リスクアセット計算パッケージシステム「Basel Master」、市場リスク・ALM管理パッケージシステム「Banking Analyze Master」の計算ロジックを最大限活用し、NTTデータが開発するものです。システムの開発にあたっては、当社が提携している監査法人のコンサルタントと規制内容のすり合わせを行うことで、短期間で、導入金融機関にとって負荷の少ない開発を実現します。さらに地域金融機関の実情に即し、オペレーション負荷の少ない使いやすさを念頭に置いた機能設計を実施します。

システム機能概要

LCR、NSFRの計算・検証・レポーティング機能

本規制対応上必要となる単体・連結でのLCR、NSFRなど各種指標値の計算・検証・レポーティングについて、さまざまな規制上の論点を踏まえた機能を実装します。

シミュレーション用環境

ストレステストの実施のために、通常環境での計算結果に影響を与えることなく、インプットデータ、掛目等のマスタ設定を変更可能な環境を実装します。

帳票出力機能

月次で行われる当局への報告に最大限活用可能なよう、QIS注4と同等の帳票を出力します。監査法人のコンサルタントが設計に携わることで、お客さまの実業務面でのニーズにも応えます。

資産・負債の振り分け機能

資産や負債などについて、規制で定められた流動資産のカテゴリーへの分類や預金の流出率を適用するため、本システム内で取引単位での各種振り分けが可能となります。

キャッシュフロー生成機能

預貸や確定利回りの有価証券について、パッケージ内部でのキャッシュフロー生成が可能となります。これにより、上流システム側でのデータ準備負荷軽減や、資金流出入の算定期間の変更が可能になる等、柔軟な対応が可能となります。

今後の展開

NTTデータは、金融機関向けの流動性規制対応システムとして「Liquidity Master」の国内シェアNo.1を目指すとともに、国際基準行・国内基準行含めて、平成27年度までで累計30システム、20億円の受注を目指します。

「Liquidity Master」担当チームはまた、2013年10月17、18日に予定されている金融国際情報技術展「FIT2013」に目玉ソリューションとして出展・講演を予定しています。

注釈

  • 注1バーゼル銀行監督委員会

    国際決済銀行(BIS:世界各国の中央銀行が出資する国際機関で1930年に設立。本部はスイス・バーゼル)において定期的に開催されるG10中央銀行総裁会議によって1975年に設立。アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港特別行政区、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国の銀行監督当局および中央銀行の上級代表者によって構成され、国際間における金融システムの安定化や、銀行間競争の不平等を是正することなどを目的として1988年にBIS規制を発表した。BIS規制はG10諸国を対象とし、BIS規制による自己資本比率8%を達成できない銀行は、国際業務から事実上の撤退を余儀なくされる。

  • 注2流動性カバレッジ比率(LCR)

    銀行が、監督当局の特定する最も厳しい流動性ストレスシナリオの下において、処分に制約のない、即時に現金に換金できるような高品質の流動資産を適切な水準で保有することを確保することを目的とする。本比率は、高品質の流動資産÷30日間のネット資金流出として定義される。高品質の流動資産に分類するためには、当該資産がストレス時においても市場での流動性があり、理想的には中央銀行の担保適格になっているものでなければならない。本指標のシナリオ下でのネットの資金流出額は、先行き30日間について計算され、本比率は100%を下回ってはならない。銀行は、潜在的な厳しい流動性ストレスに備えるため、継続的にこの要件を満たし、処分に制約のない高品質の流動資産を保有することが求められる。

  • 注3安定調達比率(NSFR)

    市場流動性が潤沢なときでも、大口の市場調達に過度に依存しないように制限を設けることを目的とするとともに、オン‐オフ バランスシート全体にわたる流動性リスクをより正しく評価するよう動機づけすることを目的としている。本比率は、利用可能な安定調達額(ASF)÷所要安定調達額(RSF)として定義される。"安定調達"とは、長期的なストレス下で、1年超に及ぶ期間でも信頼に足る調達源となることが期待されるような資本性、負債性の調達の総額と定義される。本比率は、100%より大きくなければならない。本基準は、流動性カバレッジ比率(LCR)基準を補完するための最低限の強制的な仕組みとして策定されたものであり、短期調達のミスマッチから、資産と事業に対するより安定した長期調達へ、流動性リスク・プロファイルの構造的変化を動機付けることにより、監督上の他の取り組みを補強するものとなっている。

  • 注4QIS

    バーゼル銀行監督委員会が発表した文書にかかわる規制や提案の影響を評価するため実施する、包括的な定量的影響度調査(Quantitative Impact Study)のことを指す。通常、規制の施行前に実施し、各国の当局に裁量のあるパラメーターを調整するため、対象金融機関に当局が中期的な提出を求めることとなる。今回の流動性規制においては国際基準行のみが対象であり、定期的に日本の金融庁当局へ報告が求められている。

  • 「Basel Master」、「Banking Analyze Master」、「Global Rating Master」は、日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • 「Liquidity Master」は、日本国内における株式会社NTTデータの商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

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