再生可能エネルギー利用拡大に貢献するテーラーメイドADRシステム活用に向けた実証前調査を開始 ~ポルトガル共和国で、需要家の快適性とディマンドレスポンスの効果を両立した電力需給制御を検証~

ニュースリリース/NTTデータ

2015年8月12日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)とともに、2015年7月23日に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が実施する「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業 ポルトガル共和国における自動ディマンドレスポンス注1実証事業」注2の委託先に選定されました。これに伴い、2015年8月下旬より「テーラーメイド自動ディマンドレスポンスシステム(以下、テーラーメイドADRシステム)」活用に向けた実証前調査を開始します。

「テーラーメイドADRシステム」は、空調機等を需要家注3の特性に応じて自動で運転管理を行うものです。本実証では、公共ビルや一般家庭の協力の下、本システムの活用および空調機の自動運転管理を通じて、需要家の快適性を保ちつつ需給調整を行うことを計画しています。また、再生可能エネルギー注4の利用割合拡大を計画するポルトガル共和国において、空調機等の電力利用を風力などの再生可能エネルギーによる発電量が多い時間帯へシフトすることも検証します。

NTTデータは、実証前調査を2016年1月末まで行った後、NEDOによる事業化評価を経て、実証事業を2018年度末まで実施することを目指します。その後は、ポルトガル共和国での本格運用を進めるとともに、ディマンドレスポンスを用いた仕組みの世界的な普及に向け、エネルギー政策・制度を考慮したビジネスモデルの構築を進める計画です。

背景

ポルトガル共和国は、欧州連合(EU)指令に基づくCO2削減を目的として、最終消費エネルギー注5に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに31%に増やす予定です。特に電力においては、総電力消費量の再生可能エネルギーの割合を55.3%に増やすという目標を設定しています。2013年の時点では、総電力消費量に占める再生可能エネルギー比率は平均49.2%となっていますが、目標達成に向け、風力発電および太陽光発電のさらなる拡大を計画しています。

このような自然の力を利用した再生可能エネルギーは、その時々の状況により発電量に差が生じるため、人々が再生可能エネルギーによる電力を安定して利用するためにはディマンドレスポンスが有効と考えられています。これを行う上で、ポルトガル共和国では、電力利用のピークカットやピークシフト等のディマンドレスポンス本来の目的に加え、風力による発電量が多い時に電力利用をシフトする信号を需要家に送り、風力発電等の利用のさらなる拡大も図ります。

今回、NTTデータは、ポルトガル共和国において「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業 ポルトガル共和国における自動ディマンドレスポンス実証事業」を行うNEDOより、ダイキン、日本総研とともに、本実証前調査を実施するための委託先として選定されました。

従来の自動ディマンドレスポンスでは、需要家の都合にかかわらず、空調機の温度制御やオンオフをシステム側が自動的に行うため、需要家の快適性が損なわれやすい等の課題がありました。そのため、本実証では、機械学習機能を持つシステムを開発し、各需要家が過去のディマンドレスポンス信号にどのように反応したかを蓄積、分析することにより、次回以降、各需要家の行動パターンに合わせた温度設定を行う等のきめ細やかな制御を行うことを計画しています。

実証の概要

本実証では、空調機等を需要家の行動特性に応じて自動で運転管理するテーラーメイドADRシステムを設計・活用し、風力による発電量が多い時間に需要をシフトするとともに、需要家の快適性を両立した電力需給調整を行う自動ディマンドレスポンスの有効性を検証する予定です。

本実証は、実証前調査と実証事業の2つのフェーズで構成されており、まずは2015年8月下旬より実証前調査を行います。実証前調査の内容は以下の通りです。

  • 実施期間

    2015年8月下旬~2016年1月末

  • 対象エリア

    ポルトガル共和国リスボン市

  • 対象者

    公共ビルや商用ビル等の大規模需要家、中小規模産業用需要家または一般家庭

  • 調査内容

    風力発電電力、電力卸取引市場価格、需要家消費電力パターン等の監視・分析

実証前調査終了後、事業化評価を基に、実証事業を実施することを目指します。実証事業においては、まず空調機の設置等を行う対象や規模の策定、テーラーメイドADRシステムの開発を行う計画です。一例として、ダイキンが製作するディマンドレスポンス機能を装備したビル用空調機および空調制御システムをオフィスビル等に設置・運用し、「温度設定の自動変更を、一定の時間以上は続けてほしくない」、「特定の時間だけは自動制御を望まない」等の利用者の執務状況に合わせて、サイクリング制御、送風、温度設定、能力制御、台数制御等のさまざまな制御を行い、その有用性および効果を共同で検証する予定です。

実証前調査における各社の役割

NTTデータ

  • 実証前調査全体を統括
  • テーラーメイドADRシステムの要件定義、設計
  • 普及可能性調査の実施

ダイキン工業

  • 需要家の電力需要量を調整することができるビル用空調機の要件定義
  • 電力需給情報等を基に動作する空調制御システムの要件定義
  • 普及可能性調査の実施

日本総合研究所

  • 現地の政策、規制等についての調査の実施
  • 本技術を用いたビジネスモデルの検討
  • 普及可能性調査の実施

今後について

NTTデータは、実証前調査を2016年1月末まで行った後、その調査結果を踏まえた事業化評価を経て、実証事業を2018年度末まで実施することを目指します。その後は、ポルトガル共和国での本格運用を進めるとともに、ディマンドレスポンスを用いた仕組みの世界的な普及に向け、エネルギー政策・制度を考慮したビジネスモデルの構築を進める計画です。

注釈

  • 注1ディマンドレスポンスとは、電力の供給量と需要量のバランスの調整を、供給量の調整(発電量の増減)ではなく、需要量の調整(利用電力量の増減)により行うことを指します。
  • 注2国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業 ポルトガル共和国における自動ディマンドレスポンス実証事業とは、NEDOがポルトガル共和国において同国国立エネルギー地質研究所(LNEG)と共同で推進予定のスマートコミュニティの実証プロジェクトです。
  • 注3需要家とは、商品やサービスの供給を受け、利用する者を示し、ここでは、電気の利用者のことを指します。
  • 注4再生可能エネルギーとは、有限の資源となる石炭、天然ガスによる発電ではなく、風力、水力、太陽光、地熱などの無限の資源を用いて発電した電力を指します。
  • 注5最終消費エネルギーとは、産業、民生、運輸等の部門で需要家が消費するガスやガソリン等を含めた全てのエネルギーを指します。
  • 文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
後藤(尾)
TEL:03-5546-8051

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株式会社NTTデータ
第一公共事業本部
第一公共事業部
ビジネス企画推進室
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TEL:050-5546-2845