中外製薬とNTTデータ、AI技術を活用した治験効率化ソリューションの実証を完了 ~治験関連文書の作成支援および後続プロセスへのシームレスなデータ連携~

ニュースリリース/NTTデータ

2020年9月9日

中外製薬株式会社
株式会社NTTデータ

中外製薬株式会社(代表取締役会長 CEO:小坂 達朗、以下:中外製薬)と株式会社NTTデータ(代表取締役社長:本間 洋、以下:NTTデータ)は、AI技術を活用した治験関連文書の作成効率化ソリューションの実証実験を2020年1月から6月に実施しました。
治験業務は、計画から実施、承認申請に至るまでさまざまな文書の作成や多くの手順が必要です。本ソリューションは、治験実施計画書注1から治験関連文書を作成するなど、文書作成に係るプロセスの効率化を目指すというコンセプトを基にNTTデータが開発を進めています。本実証では、本ソリューションのプロトタイプを用いて、中外製薬とNTTデータが共同でコンセプト検証を行い、本ソリューションの有用性の評価および今後のシステム課題の抽出をすることができました。
今後、本実証の結果を踏まえ、NTTデータは2021年度中に本ソリューションの商用サービス提供を目指します。さらに、本実証を通して得られた両社の協力関係を土台に、臨床開発業務のデジタルトランスフォーメーションに向けて協働し、新薬開発の効率化に向けた仕組みづくりに貢献していきます。

背景

新薬開発は、研究、治験での臨床データの収集・解析、有効性と安全性の評価などのプロセスを経て平均で9~17年程度注2かかり、治験に関わる業務やデータの品質確保のため、製薬企業と治験実施医療機関の双方で多くの労力が費やされています。また、高品質で効率的な治験関連文書の作成は、製薬企業共通の課題となっています。
NTTデータは、新薬の開発加速を支援するため、広範な治験プロセスを最先端のIT技術でつなぐ製薬企業・医療機関横断型の治験トータルソリューションプラットフォームの開発を進めています。
中外製薬は、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」注3の基本戦略の1つにバリューチェーンの効率化を掲げ、治験プロセスのさらなる加速を目指しています。中外製薬は、NTTデータの取り組みに賛同するとともに、中外製薬の豊富な経験を生かし、AI技術を活用した新たなソリューションの開発に向け、NTTデータと共同で実証実験を実施しました。

治験関連文書の作成効率化ソリューションについて

本ソリューションは治験トータルソリューションプラットフォームの1つとして、治験実施計画書をインプット情報としてさまざまな治験関連文書(患者さん用の同意説明文書、統計解析計画書、患者さんの治験データを入力する症例報告書、治験結果をまとめた総括報告書など)を、AI技術やオントロジー注4/セマンティック注5といった技術要素を活用して連鎖的・網羅的に生成できるようにします。

図:治験関連文書作成効率化ソリューション全体像

図:治験関連文書作成効率化ソリューション全体像

実証実験について

目的高品質で効率的な治験関連文書作成の課題を解決するために必要な要件を特定し、臨床開発業務におけるデジタルトランスフォーメーションの実現を目指して本実証実験を実施する。
実施内容臨床開発業務において必要とされる各治験関連文書を連鎖的に自動生成するコンセプトの有用性の検証とそれを実現する技術要素についての評価を行う。
具体的には、中外製薬の治験実施計画書をインプットとし、本ソリューションのプロトタイプを用いて「同意説明文書」および「症例報告書(blank)」作成業務に要した時間と、過去同業務の実績を比較。
実証期間2020年1月から2020年6月まで
実施結果ソリューションのコンセプトが有用であることが確認でき、今後のシステム課題の抽出をすることができた。なお、効果検証結果については、以下のとおり。
  • 削減効果率は、「同意説明文書」で平均61%、「症例報告書(blank)」で平均40%であった。
  • 両文書ともに、自動生成すべき部分の大部分を生成可能なことを確認でき、自動生成が難しいと予想される部分については、想定通り削減効果率は低かった。
  • 「症例報告書(blank)」では自動生成後に症例報告書に適した形にするためのマニュアル作業が発生し、削減効果率低下の一因となった。

今後について

NTTデータは、今回検証された技術要素を活用して、今後、治験関連文書の対象拡大、標準化テンプレートの提供、AIによるサジェスト機能注6、マルチ言語対応などの機能を本ソリューションへ順次実装していく計画です。また、本ソリューションの他、臨床データの収集支援・構造化ソリューションなども含む治験トータルソリューションプラットフォームの提供を目指します。そして、中外製薬とNTTデータは臨床開発業務のデジタルトランスフォーメーションに向けて協働するとともに、新薬開発の効率化に向けた仕組みづくりに貢献していきます。

各社コメント

治験文書の効率的・高品質な作成は製薬企業共通の課題です。AI技術を活用し、製薬企業・医療機関共通の治験プラットフォームの構築を通じて新薬開発の加速を目指すこの取り組みに、中外製薬の蓄積した臨床開発における知見と経験が貢献できることを大変嬉しく思います。中外製薬は、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」の下、自社のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターを目指しています。ヘルスケア産業におけるイノベーションをリードすべく、今後も外部パートナーとの協働に積極的に取り組んでまいります。

中外製薬株式会社 執行役員 デジタル・IT統轄部門長 志済 聡子

このたびは、中外製薬様とともに臨床開発業務におけるデジタルトランスフォーメーションを目指した実証実験を実施できましたこと、心より御礼申し上げます。両社による協働を通じて開発する革新的なソリューションが、製薬業界における臨床開発業務の共通課題の解決につながり、患者さまの元にいち早く新薬をお届けするための礎となることを期待しています。NTTデータは健康長寿社会と安心安全な暮らしの実現に向け、先進的なIT技術を活用し、お客さまとともに未来の社会づくりへ貢献してまいります。

株式会社NTTデータ 常務執行役員 第二公共事業本部長 公共・社会基盤分野副担当 茅原 英徳

注釈

  • 注1治験実施計画書とは、治験の目的や実施方法など、治験実施の際に順守すべき要件を記載した文書です。
  • 注2出典:日本製薬工業協会.「薬の情報Q&A」.http://www.jpma.or.jp/medicine/med_qa/info_qa55/q33.html,(参照 2020年9月1日)
  • 注3CHUGAI DIGITAL VISION 2030について
    中外製薬は2030年を見据えた「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げ、デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターを目指しています。「デジタル基盤の強化」「すべてのバリューチェーン効率化」「デジタルを活用した革新的な新薬創出」の3つの基本戦略によって、中外製薬のビジネスを変革し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供します。

    CHUGAI DIGITAL

  • 注4オントロジーとは、人が持つ知識を、概念体系として整理し、データモデル化したもので、関連を定義したり、ナレッジを拡張したりすることを可能にする技術です。
  • 注5セマンティックとは、データにメタデータの関係(主語・述語・目的語)をひもづけ、意味を持つデータとしたもので、モノとモノとの関連を表現するのに適したデータの持ち方のことです。
  • 注6サジェスト機能とは、検索した文字列に関連の深い語句を逐次予測して表示する機能のことです。
  • 文章中の会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

中外製薬株式会社
広報IR部
メディアリレーションズグループ
TEL:03-3273-0881

株式会社NTTデータ
広報部
宮尾
TEL:050-3646-0547

本実証実験・ソリューションに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
第二公共事業本部
社会保障事業部
関根、中川
TEL:050-5546-2505
E-mail:esource-solution@am.nttdata.co.jp

中外製薬株式会社について

中外製薬は、医療用医薬品に特化し東京に本社を置く、バイオ医薬品をリードする研究開発型の東京証券市場一部上場の製薬企業です。ロシュ・グループの重要メンバーとして、国内外で積極的な医療用医薬品の研究開発活動を展開し、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品の創製に取り組んでいます。
URL:https://www.chugai-pharm.co.jp/

株式会社NTTデータについて

NTTデータは、豊かで調和のとれた社会づくりを目指し、世界50カ国以上でITサービスを提供しています。デジタル技術を活用したビジネス変革や社会課題の解決に向けて、お客さまとともに未来を見つめ、コンサルティングからシステムづくり、システムの運用に至るまで、さまざまなサービスを提供します。
URL:https://www.nttdata.com/jp/ja/