バチカン市国の16世紀の天文台「Gregorian Tower」を3Dデジタル化 ~ドバイで開催される国際博覧会(Expo 2020 Dubai)で公開~

ニュースリリース/NTTデータ

2021年10月8日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、バチカン図書館と協力しバチカン市国の保有する希少な文化遺産を初めて3Dデジタル化しました。2014年から取り組むバチカン図書館保有の貴重な手書き文献の2Dデジタル化・公開に加え、今回デジタルアーカイブソリューション「AMLAD®」を用いた事業で培った最新の3Dデジタル化技術を用いて、16世紀に建造された天文台「Gregorian Tower(またはTower of the Winds)」を3Dデジタル化しています。精緻なデジタル化により、災害等による損傷のリスクにさらされる希少な文化遺産の情報を確実に保全し修復や研究に活用することに加え、XR技術と組み合わせた新たな鑑賞体験が実現できます。今回デジタル化された「Gregorian Tower」は2021年10月よりUAEドバイで開催されるExpo 2020 Dubaiで公開されます。
NTTデータは、これまでの2Dデジタル化技術に加え、最新の3Dデジタル化技術を活用し、「Gregorian Tower」をはじめとする世界の希少な文化遺産や美術品等の保全と、オンラインでの公開やXR技術を組み合わせた更なる活用を推進します。また今後、NTTグループのXR事業推進の動きと連携し、NTTのVR空間プラットフォーム「DOOR」等を活用したバーチャルミュージアム事業にも取り組んでまいります。

背景

NTTデータはこれまで、バチカン図書館、秋田県立図書館、高野山大学等の希少な歴史的蔵書を数多く保有する公共機関や企業の2Dのデジタルアーカイブ事業を支援しています。さらに2020年には、ASEAN事務局が推進するASEAN諸国の貴重な歴史的文化遺産をデジタル化する「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive(略:ACHDA)」プロジェクトにおいて、ASEAN地域全体の文化遺産を集約するデジタルアーカイブシステムを構築し一般公開しています。このACHDAではNTTデータとして初めて3Dでのデジタル化を実現しています。

図1:マレーシア博物館局で保管される「BELT BUCKLE」

図1:マレーシア博物館局で保管される「BELT BUCKLE」

図2:バチカン図書館 ボッティチェッリの描いたダンテの『神曲』の挿絵

図2:バチカン図書館 ボッティチェッリの描いたダンテの『神曲』の挿絵

図3:バチカン図書館 世界で最も美しい聖書「ウルビーノ聖書」

図3:バチカン図書館 世界で最も美しい聖書「ウルビーノ聖書」

バチカン図書館とは2014年から、バチカン図書館が保有する貴重な手書き文献の長期保存・公開を目的とする、デジタルアーカイブソリューション「AMLAD®(アムラッド)」を活用した事業に取り組んでいます。これまで、手書き文献等を対象とした2次元画像によるデジタルアーカイブに取り組んで来ましたが、バチカン図書館とNTTデータは、この事業と並行してバチカン市国が保有する希少な文化遺産や建造物の3Dデジタル化による保全の検討も進めてきました。

この度、具体的な取り組みとして、歴史的建造物である「Gregorian Tower」の3Dスキャンを行い、デジタル化を成功させました。バチカン図書館と行うデジタルアーカイブ事業としては、初めての建造物の3Dスキャン・デジタル化となります。

Gregorian Towerについて

今回3Dデジタル化し公開する「Gregorian Tower」は、16世紀にローマ教皇グレゴリウス13世によって天文学の研究と暦の刷新の為に建築されました。ここでの研究を通じ、それまで広く利用されていたユリウス暦が、現在もなお世界中で広く利用されているグレゴリウス暦へと改訂されました。そのホールの天井や壁には豪華なフレスコ画の装飾が施されています。

図4:「Gregorian Tower」外観

図4:「Gregorian Tower」外観

スキャニング・デジタル化作業

スキャニングは、3Dレーザースキャナー2台とデジタルカメラ1台を用い、3日間かけて丁寧に実施されました。撮影枚数は合計で約600枚にも及び、非常にデリケートな空間かつ高さのある建物の中で、撮影のプロフェッショナルが光の当て方に気を配りながら作業を進めました。

図5:3Dスキャン・デジタル化作業の様子図5:3Dスキャン・デジタル化作業の様子

図5:3Dスキャン・デジタル化作業の様子

公開用、長期保存用に加工作業

撮影したデータには、Expo 2020 Dubaiで展示するための最適化作業と、長期的に保存し様々な用途で活用するための加工をしています。ウェブサイトやバーチャルアプリケーションなどのプラットフォームで閲覧のできるデータを用意することに加えて、価値ある文化遺産の情報を未来に継承し学術的研究や修繕・修復作業へと活用していくことを目的としています。
また、Expo 2020 Dubaiでの展示においては、COVID-19の影響で訪問者が身につけるタイプの装置(VRゴーグルなど)を使用することができないため、手の動きだけで3Dモデルの内部を自由に周遊し鑑賞できる環境を構築しています。

バチカン図書館チェーザレ・パシーニ館長のコメント

「NTTデータの協力により、バチカン図書館の文化遺産のデジタル化が進展したことを大変喜ばしく思います。このような継続的なデジタル化への取り組みは、人類の文化な記憶の保存と普及のために非常に重要なものであると考えており、バチカン図書館とNTTデータの建設的な協力関係が今後も末永く続くことを心から願っています。」

Expo 2020 Dubaiについて

Expo 2020 Dubai(2020年ドバイ国際博覧会)は、190以上の国・地域が参加、約2,500万人の来場を予定する大規模国際博覧会です。2020年に開催予定でしたが新型コロナウィルスの感染状況を受け、イベント名称はそのままに2021年に開催延期されています。

イベント名Expo 2020 Dubai(2020年ドバイ国際博覧会)
開催期間2021年10月1日~2022年3月31日
開催場所UAEドバイ
テーマConnecting Minds, Creating the Future(心をつなぎ、未来を創る)
公式HPhttps://www.expo2020dubai.com/
バチカン市国出展Holy See Pavilion at Mobility District

AMLADとは

「AMLAD」は、博物館・図書館・公文書館や企業・団体が保有する画像、動画、音声などのあらゆるデジタルコンテンツを一元管理し活用するものです。NTTデータが、文化遺産という「人類の資産」の後世への継承と新たな情報利用の機会を世界中の多くの方に提供するために開発しました。2018年にはバチカン教皇庁図書館が所蔵する歴史的な手書き文献3,000点のデジタル化を実施し、「AMLAD」を活用してその保全と公開を現在も行っています。その他、国立国会図書館や高野山大学など、世界有数の文化機関に対して提供されています。さらに2020年にはASEAN事務局が推進するASEAN諸国の貴重な歴史的文化遺産をデジタル化する「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive(略:ACHDA)」プロジェクトにおいて、ASEAN地域全体の文化遺産を集約するデジタルアーカイブシステムを構築し、第1フェーズとしてインドネシア、タイ、マレーシアの3カ国で文化遺産約160点の2D・3Dデジタル化を完了しました。インターネット上に公開されるアーカイブサイト「ACHDA」では、世界中からこれらの文化遺産を閲覧可能です。

VR空間プラットフォーム「DOOR」バーチャルミュージアムについて

「DOOR™」は、NTTが提供するVR空間プラットフォームです。NTTグループはリモートワールドの実現をめざし、「DOOR」を活用したXR事業推進に取り組んでいます。今後、NTTデータが展開するバーチャルミュージアム事業においても、「DOOR」の利用を検討していきます。

図6:「DOOR」の体験型美術展「Digital×北斎」

図6:「DOOR」の体験型美術展「Digital×北斎」

図7:「DOOR」×ASEAN文化遺産のコンテンツ

図7:「DOOR」×ASEAN文化遺産のコンテンツ

今後について

今後もバチカン図書館と協力し貴重な文化の保全に貢献してまいります。また、これまで実施してきた希少な文献や立体造形物の電子化・アーカイブ化の技術に加え、今回実施した建造物の3Dスキャン・デジタル化をノウハウとして蓄積し、また、それらを最新のXR技術と組み合わせることで、世界の希少な文化遺産や美術品等のデジタルデータの更なる活用に役立てていきます。

参考リンク

注釈

  • 「AMLAD®」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道機関からのお問い合わせ

株式会社NTTデータ
コーポレート統括本部
広報部
田中
050-3644-3022

製品・サービスに関するお問い合わせ

株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
デジタルソリューション統括部
営業企画担当
長谷部、神野、成川、野元
TEL:050-5546-2651

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