組合せ最適化問題の計算手法「アダプティブ・バルク・サーチ」の実行環境を無償公開 ~複雑な物流配送ルートや金融商品のポートフォリオなどの研究がWeb上で可能に~

ニュースリリース/NTTデータ

2021年10月29日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、広島大学大学院先進理工系科学研究科(以下:広島大学)と共同で、組合せ最適化問題の解を高速に探索する計算方式「アダプティブ・バルク・サーチ」注1の実行環境を、2021年10月29日から研究評価向けに無償で公開します。
アダプティブ・バルク・サーチは、組合せ最適化問題を複数のGPU(グラフィクス向けプロセッサ)注2を用いて効率よく解く手法であり、2020年8月に両者が初めて公開しました。その後も手法の改善を重ね、この度、アダプティブ・バルク・サーチをWebブラウザーから誰でも簡易に実行できる環境を用意しました。複雑な物流配送ルートや金融商品のポートフォリオなど膨大な組み合わせが考えられる問題に対して、適切な解を導き出せるかを研究することができます。
今後も、量子コンピューターや次世代アーキテクチャーの技術者育成や応用探索を加速させ、先端技術をビジネスに適用できる分野の拡大を目指します。

背景

近年、量子アニーリングやGPU・FPGA注3を用いて、組合せ最適化問題を、高速に解くアーキテクチャーの研究開発が活発に行われています。NTTデータも広島大学の中野浩嗣教授らの研究チームと共同で、1秒間に1兆を超える解を探索する「アダプティブ・バルク・サーチ」の手法を2020年8月に開発し、検証結果を論文として公開しました。

技術公開後、実際にGPUを搭載したマシン上でアダプティブ・バルク・サーチを実行し、実際の組合せ最適化問題による検証を行いたいと多数の要望を受けました。今回、アダプティブ・バルク・サーチの実行環境を公開することで、量子アニーリングやイジングマシンの研究分野に興味のある技術者への評価・習熟環境の提供と、応用研究の促進による適用分野拡大を目指します。
ビジネスへの適用として、例えば、物流や交通流の改善、製造工程の改善、金融業などの実応用上の組合せ最適化問題を研究する技術者が、アダプティブ・バルク・サーチの評価を行うことができます。

図:アダプティブ・バルク・サーチを利用できるWebサイト

図:アダプティブ・バルク・サーチを利用できるWebサイト

利用環境

アダプティブ・バルク・サーチの利用Webページ(https://qubo.cs.hiroshima-u.ac.jp/)では、以下の環境および情報を提供します。

  • アダプティブ・バルク・サーチを研究評価の目的に限り、無償で実行できます
  • 研究開発中の最新のアダプティブ・バルク・サーチのアルゴリズムによる、計算結果や処理時間を確認できます
  • 現在実行可能な環境情報(ハードウエアスペック、投入可能な問題規模、結合数など)を公開します
  • 初学者にも理解しやすいよう、組合せ最適化問題の投入方法に関するマニュアルを公開しています
  • ベンチマークで一般的に用いられる、ランダム問題、Max-Cut問題、QAP問題、TSP問題などのサンプル問題を実行環境に投入可能な形式で提供します

より高度な利用について

Webページの実行環境と合わせて、NTTデータ 量子コンピューティングガイドライン注4を参照することで、量子コンピューティング全般の知識や、実世界の問題をマシンに投入可能な数式に変換する方法についても理解することができます。
また、NTTデータでは、2019年1月から、量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボのサービスを提供しています注5。さまざまな分野において、量子コンピューターや量子アニーリング・イジングマシンなどの次世代アーキテクチャーのさらなる高度な利用を希望するお客さまに向けて、業務要件に基づいた検証支援を行います。

今後について

NTTデータでは、本実行環境の公開により、技術者育成や応用探索を加速させ、流通、金融、製造分野における諸問題ならびにAI・機械学習の高性能化など、さまざまな分野での適用検討の加速を目指します。また、これまで解くことが困難であった問題を効率的に解くことで、エネルギー利用の効率化やスマートな物流網などの、社会課題解決に向けた適用可能性を拡大するとともに、広島大学と共同で本手法のさらなる改善に取り組んでいきます。

注釈

  • 注12020年8月17日ニュースリリース GPUの計算性能を最大限活用する組合せ最適化問題の新解法を公開
    ~1兆探索/秒を超えるアダプティブ・バルク・サーチ~
    https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2020/081701/
  • 注2Graphics Processing Unitの略で、元々はグラフィック処理のための集積回路です。計算処理能力の高さから、グラフィック処理以外のさまざまな処理を高速化することができるため、多くのスーパーコンピューターに搭載されています。
  • 注3Field Programmable Gate Arrayの略で、利用者が論理回路の構成を設定・変更できる集積回路です。
  • 注42021年1月28日サービスインフォメーション 「NTTデータ 量子コンピューティングガイドライン 量子アニーリング/イジングマシン編」を公開
    https://www.nttdata.com/jp/ja/news/services_info/2021/012800/
  • 注52019年1月25日ニュースリリース 量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボのサービス開始
    ~実用に向けた実機検証・評価を実施、効果的な活用方法を提案~
    https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2019/012501/

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
西澤、宮尾
TEL:070-4437-3848

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
技術開発本部
先進コンピューティング技術センタ
矢実、尾崎、香月
TEL:050-5547-0568

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