複数の衛星とAI活用により、最短半日で広域災害の被災状況を把握可能 ~NTT東日本のインフラ復旧のための衛星画像ソリューション提供を開始~

サービスインフォメーション

2020年10月27日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、2020年10月より東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)に、広域災害の被災状況を早期に把握し、迅速なインフラ復旧を支援する衛星画像ソリューションを提供開始します。
本ソリューションは、指定エリアの災害前後の情報を衛星画像から取得し、現況把握と復旧計画の策定を支援するものです。従来衛星画像の提供は、衛星への事前予約等が必要であり、天候により撮影可否が決定するため、1カ月を要することもありましたが、異なる特性を持つ3つの衛星を組み合わせることで、最短半日での提供が可能となります。本ソリューションを活用して、NTT東日本の管理区域である東日本全域を網羅する衛星画像をあらかじめ整備し、発災後に新たに撮影した衛星画像との差分解析で、変化箇所を抽出します。これにより災害時の浸水域や土砂災害エリアを特定し、「面的点検の優先順位付け」「復旧ルートの検討短期化」「必要資材数の早期推定」に役立てます。
今後NTTデータは、2020年度中にも同様のニーズがある通信・電力業界などへ本ソリューションを展開し、2025年度末までに売り上げを100億円規模に拡大することを目指します。また引き続き、デジタル技術の活用で社会課題の解決に貢献していきます。

背景

2019年度の台風15号、19号など相次ぐ自然災害により、災害時における迅速かつ確実な現況把握を行うための仕組み作りが課題とされてきました。NTT東日本においても、台風、地震、津波等、自然災害発生時に電気通信サービスの提供を維持するため、り障回線注1(設備)の復旧対応を早期化し、復旧計画の精度を向上させたいという要望がありました。一方で、これまでは現地で人手による点検を行っていたため、河川の氾濫や土砂崩落による道路の寸断が起きた場合は、調査員を派遣するまでに数日間を要するなど、特に広域災害における全体の現況把握に多くの時間と人員が必要でした。そのため、被災状況の全体像が見えない中、管内全域を漏れなく、早期に状況把握する調査体制の構築が求められています。
NTTデータはこの課題を解決するため、全世界デジタル3D地図(AW3D®)注2と複数の衛星を活用し、広域災害の被災状況を早期に把握し、迅速なインフラ復旧を支援する衛星画像ソリューションを提供します。

図1:災害対応業務における課題

図1:災害対応業務における課題

概要(特長)

本ソリューションでは東日本全域を網羅するベースマップをあらかじめ整備し、発災後に緊急撮影した画像との差分解析を行います。従来、衛星による撮影には管内全域を撮影する広域網羅性や、発災後、指定日に撮影する確実性に課題がありましたが、これを解決するため異なる特性を持つ3つの衛星に撮影指示を出せる体制を整えました。また、AW3Dで培った大量の衛星画像を自動で処理するアルゴリズムと高い位置精度の計測、AIによる情報抽出の技術を活用し、被災箇所を特定します。複数衛星の活用とNTTデータのデジタル化の技術で、被災状況の早期把握に貢献します。

図2:NTTデータが提供する衛星画像ソリューション

図2:NTTデータが提供する衛星画像ソリューション

管内全域を漏れなく監視

衛星は広域を一度に撮影することができるため、管理区域全体の被災状況を1日で把握することが可能です。さらに、本ソリューションでは、日本全域をカバーする「AW3D日本全国高精細3D地図」注3を活用し、変化を把握するための発災前のデータを管内全域で整備します。また3D地形データも提供し、被災エリアの傾斜や周辺地形を考慮した最適な復旧対応の意思決定を支援します。

指定日に確実に撮影

従来、高解像度衛星での撮影では、撮影の優先順位や日程は衛星会社が判断していたため、お客さまから依頼された指定日までに撮影することを確約できませんでした。今回、NTTデータはMaxar社注4とのアライアンス強化により、自らがこれらを判断して直接衛星に撮影指示を出せるようになり、復旧計画の精度向上に寄与します。
Maxar社の光学衛星は商用衛星として最高の30cm解像度を持ちつつ、一度に1万㎢を撮影する能力を有しています。これに加え本ソリューションでは、より広域な災害が起きた場合に備えて、全世界を毎日撮影可能なPlanet社注5の小型光学衛星を組み合わせます。また、雲を透過して撮影できるICEYE社注6のSAR衛星注7も活用し、エリアの広さだけではなく天候にも左右されない、確実な撮影を約束します。

最短半日で被災エリアを抽出

発災前に予め整備したベースマップと、発災後に緊急撮影した画像の差分から変化箇所を抽出します。NTTデータが、世界各国1,600以上のプロジェクトで積み上げたデータで精度を高めたAIにより、道路や建物矩形など地物を自動で抽出し、最短半日で浸水域や土砂崩落エリアを特定します。NTT東日本では、この被災エリアと電柱やケーブルなどの設備の位置情報を重ねて地理情報システム(GIS)注8上で可視化し、詳細な現地調査が必要な場所の検討に役立てます。

図3:変化抽出のイメージ

図3:変化抽出のイメージ

今後について

NTTデータは2020年度内に、通信・電力業界など同様のニーズがある国内の企業へ展開していきます。また、災害対応サービスを各国に広げ、2025年度末までに売り上げを100億円規模に拡大することを目指します。今後、デジタル技術の活用で社会課題の解決に貢献していきます。

注釈

  • 注1り障回線とは、災害時に被害を受けた通信回線のことを指します。
  • 注2「AW3D」は、日本国内における株式会社NTTデータと一般財団法人リモート・センシング技術センターの登録商標です。
  • 注3AW3D日本全国高精細3D地図は、50cm解像度の三次元情報に基づき、地図縮尺1:2500相当の位置精度で日本全国を整備したデジタル3D地図です
    https://www.aw3d.jp/products/alljapan/
    https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2019/052201/
  • 注4Maxar社:https://www.maxar.com/
  • 注5Planet社:https://www.planet.com/
  • 注6ICEYE社:https://www.iceye.com/
  • 注7SAR衛星(SAR:Synthetic Aperture Radar=合成開口レーダー)はレーダー衛星とも呼ばれ、マイクロ波(電波の一種)を発射し、地表で跳ね返ってきたマイクロ波をとらえるため、天候に左右されず常に同じ条件で撮影することができます。
  • 注7GIS(Geographic Information System=地理情報システム)とは、地図や地形データ、航空・衛星画像などの空間情報と、地理的な位置に関連するさまざまなデータを統合的に扱うことができる情報システムのことです。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
宮尾
TEL:050-3646-0307

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
スマートビジネス統括部
営業企画担当
本間、神立
TEL:050-5546-2507

参考

AW3Dについて
2014年2月、NTTデータとRESTECは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち(ALOS))」が撮影した約300万枚の衛星画像を使い、世界で初めて5m解像度の数値標高モデル[Digital Elevation Model(DEM)]で世界中の陸地の起伏を表現している全世界デジタル3D地図のサービス提供を開始しました。
2015年5月からは、都市計画等の分野において利用を広げるために米国の民間衛星会社DigitalGlobeの衛星画像を活用した高精細版3D地図の提供を開始しました。これにより最高50cm解像度を実現し、都市エリアを中心とした「建築物」レベルの細かな起伏の表現が可能となりました。さらにAI等最先端技術を用いた地物情報抽出にも取り組んでおり、お客さま業務の短工期化、低コスト化を支援しています。
AW3Dは、世界130カ国以上・1,600プロジェクト以上で、新興国におけるインフラ整備や防災対策などの社会問題の解決に活用されており、社会および経済発展へ貢献しています。
AW3D Webサイト
https://www.aw3d.jp/

- NTTデータは、「これから」を描き、その実現に向け進み続けます -