量子コンピューターを利用したアプリ開発の効率化に向けた実証実験を開始

サービスインフォメーション

2021年12月1日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、Classiq(読み:クラシック、本拠地:イスラエル)と、金融領域での量子コンピューターを利用したアプリケーション(以下:量子アプリ)開発の効率化に向けた実証実験を2021年10月より開始しました。
Classiqは、量子アプリの開発において専門性が必要となる量子回路注1の作成を自動で行う技術を保有しています。本実証では、この技術をオプション・プライシングなどの金融領域での量子コンピューターのユースケースに対して適用し、既存のミドルウェアと比較したときにどの程度開発時間が削減できるかの検証を行います。
本実証により、現在は高い専門性が必要となる量子アプリの開発を容易にし、金融領域をはじめとした新たな適用領域の拡大を目指します。また、量子コンピューティング技術全般の活用を促進することで、エネルギー効率の改善などの社会課題の解決に向けた取り組みを進めていきます。

背景

金融領域ではモンテカルロ・シミュレーション注2と呼ばれる計算方法がさまざまな業務で用いられていますが、複雑な条件下では、非常に高い計算負荷がかかります。そのため、計算負荷削減が期待できる量子ゲート型の量子コンピューターを適用して、既存のコンピューターとは全く異なる量子技術に基づくアーキテクチャーにより高速計算を実現するアプリケーションを開発できないかと検討されています。
一方で、量子アプリの開発には、一般的なアプリケーション開発とは異なる専門性が必要となります。そのため、金融領域への適用検証を行う際は、金融業務だけでなく量子コンピューターの知識も備えておく必要があり、実施する難易度が高まる要因となっています。
そこでNTTデータは、量子アプリの開発の効率化を目指した実証実験を開始しました。

実証について

本実証では、NTTデータが想定する金融領域のユースケースに対して、Classiqが保有する量子回路の作成を自動で行う技術の適用検証を行います。具体的には、以下のユースケースに対して、既存のミドルウェアを利用して開発した場合と比較したときにどの程度量子アプリの開発時間が削減できるかの検証を行います。

  • オプション・プライシング

    オプション取引と呼ばれる金融取引の権利価格を算出する業務です。特に、エキゾチック・オプションなど複雑な計算条件を持つ取引では権利価格をシンプルな数式で表現することができないため、計算負荷の高いモンテカルロ・シミュレーションが必要であり、将来的に量子技術による計算負荷削減が期待されています。

  • 市場リスク量計算

    金融機関におけるリスク管理と呼ばれる業務のうち、株式や債券などの金融資産の価値変動に起因するリスクを算出する業務です。特に、債券など価値変動が複雑なものは、オプション・プライシングと同様にシンプルな数式で表現することができないため、将来的に量子技術による計算負荷削減が期待されています。

今後について

NTTデータでは今回の実証結果を基に、金融分野での活用をはじめとして幅広い領域で量子コンピューターの活用を推進していきます。また、量子ゲート型だけでなく、量子アニーリング型や疑似量子技術も含めた、量子コンピューティング技術全般の活用を促進する注3ことで、エネルギー効率の改善などの社会課題の解決に向けた取り組みを進めていきます。

注釈

  • 注1量子回路とは、量子コンピューター上で計算を行うためのロジックを記述したものです。
    量子コンピューターで動かすアルゴリズムは全て量子回路で記述する必要がありますが、作成には複雑な計算理論を理解している必要があります。
  • 注2モンテカルロ・シミュレーションとは、サイコロの目のように、いくつかの結果が確率的に発生する場合に、それらの結果を何度も出してみて、得られた数多くの結果から平均や分散などの統計的な値を推定する方法です。
    結果が複雑な条件に基づいて決まる場合には、大量の結果に基づいて推定を行う必要があるため、計算負荷が高くなる傾向があります。
  • 注3NTTデータ 量子コンピューティングガイドライン 量子アニーリング/イジングマシン編」を2021年にWeb公開。

本件に関するお問い合わせ先

量子コンピューターについて

株式会社NTTデータ
技術革新統括本部
技術開発本部
先進コンピューティング技術センタ
矢実、川又
E-mail:qcomputer@kits.nttdata.co.jp

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