IT化の潮流
情報処理技術、ネットワーク技術、センサ技術の普及により、IT化の流れが加速しています。従来は企業内業務のIT化による業務の効率化や高度化が中心でした。現在はインターネットを通じた顧客接点のIT化によるビジネス拡大やサービスレベルの向上が実現されています。今後は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やM2M(Machine to Machine)技術の進展により、社会インフラのIT化が進み、「環境変化の捕捉」による全体最適が可能になると考えられます。環境変化の捕捉は、医療・防災・交通・行政・エネルギー等、街や生活を構成する様々な社会インフラを生活者のニーズや環境の変化に合わせて適切かつリアルタイムに制御し、様々な社会課題にも自律的に対応できる世界を実現します。
図:社会インフラのIT化の流れ
サイバー・フィジカル・コンピューティングについて
社会インフラがIT化した時代では、環境変化をセンサで補足することを通じて、環境やニーズの変化に合わせて実世界を高度に制御する、あるいは実世界を拡張して人間の行動支援を行う「サイバー・フィジカル・コンピューティング」が重要となります。サイバー・フィジカル・コンピューティングを構成する技術は、環境センシング、センサネットワーク、画像による物体認識などの「センシング技術」、ロボティクスなどの「制御技術」、そして、AR(Augmented Reality:拡張現実)、3D映像などの「実世界を拡張する技術」があります。
環境変化をセンサで補足する具体例としては、NTTデータが提供している橋梁モニタリングシステム「BRIMOS®参考1」があります。橋梁に設置した各種センサを用いてリアルタイムに橋の状態を監視するものです。環境やニーズの変化に合わせて実世界を高度に制御する例としては、車の自動運転が挙げられます。道路状況に合わせたリアルタイムな判断が要求される運転は従来人間にしかできない行為でしたが、多様なセンサの登場、センサの高性能化、物体認識や制御の高度化により、近年では自動運転が実現されています。また、実世界を拡張して人間の行動支援を行う例には、バーチャルフィッティング参考2があります。実物の商品を使わず仮想的に服を試着することで、物理的な制約を受けずに商品選択・購買判断を効率よく行えます。
サイバー・フィジカル・コンピューティングにまつわる将来象
実世界を制御・拡張する技術が進展することで、将来はスマートシティのようなITに支えられた社会生活が実現されるでしょう。例えば次のような生活シーンが想定されます。
- 交通
車の自動運転に加え、交通状況に応じて信号間隔や車線を制御し、渋滞の発生を抑える交通管制システムが導入される。
- エネルギー
町全体で消費量をモニタリングすることで最適な発電量/蓄電量をコントロールし、二酸化炭素の発生を最小限に抑える。
- 防災
災害時の避難方向をAR技術を用いてモバイル端末にリアルタイムに示すことで、個人ごとに最適な経路を提示。
これらの例のように、ITが社会インフラを制御することで、社会の最適化と物理的制約からの解放が進むと考えられます。
参考文献
- 科学技術振興機構(JST)