インタラクティブコマース
世界のeコマース市場は2018年には2.5兆ドルまで成長する見込みであり、リアル店舗とインターネット販売は今後も激しく競合することが予想されています。こうした中で、近年はオムニチャネル参考1と呼ばれる戦略を取る企業も増えて来ました。オムニチャネルとは、店舗やウェブといった顧客接点=チャネルを包括的に連携させることで、さまざまなタイプの顧客要望に応えていく考え方です。例えば、実店舗で商品の現物を見てから自宅でネット通販にて決済し、商品が届いてから問題があった場合に電話で問い合わせて返品処理を行うようなケースや、TVで紹介された商品を電話で注文し、今すぐ必要な場合に最寄りの店舗に取りに行くようなケースなど、多様な購買行動に合わせて適切な包囲網を整備することで顧客を獲得します。顧客側からすると、いつでもどこでも商品の発見、検討、購入、受取、返品などが可能になり利便性が高まる一方、販売側がオムニチャネルを実現するには、物流や顧客対応が従来よりも複雑化するなど、業務フローの面でも設備投資の面でも多くの課題があります。現在は緩やかな変化ですが、将来はこうした課題を乗り越え、リアル店舗とeコマースがお互いの特徴を取り込みながら顧客中心に進化すると考えられます。また、オムニチャネルの他に、ビーコンの活用参考2やデジタルマーケティング参考3にも注目が集まっています。ビーコンを活用すると、屋内でもスマートデバイスを用いて来訪者を効率的に誘導でき、位置情報を基にした行動分析などのきめ細かいサービスが可能となります。デジタルマーケティングでは、例えば自社のECサイトとSNSをソーシャルログインで繋ぐことで、具体的に誰がどんな行動を取っているのか、顧客行動の特徴を把握・分析することができます。新しい技術の登場と活用を通じて、顧客接点はますます高度化すると考えられます。
デザインイノベーション
製造業を中心に、ITを活用することで生産性や品質を高めコストを削減するアプローチは古くから行われています。例えば自動車の耐久性実験では、実際に現物の自動車を衝突させて評価する方法から、コンピューター上で自動車が衝突する様子をシミュレーションする方法に変えることで、実験に掛かる時間や費用を大きく削減しています。こうした変化は製造業以外にも波及しており、例えば建設業界ではBIM(Building Information Model)やCIM(Construction Information Modeling)参考4と呼ばれる建物の3次元デジタルデータ管理が進んでいます。また、システム開発業界では設計情報からソフトウエアを自動的に生成するような生産技術革新が起こっています。このようにITを活用したデザインイノベーションは徐々に進化・浸透してきていますが、近年は3Dプリンターの登場など、特に顕著な動きが見られます。大きなものとして、「3Dプリンター」、「IoT(Internet of Things)」、「状態別メンテナンス」などが挙げられます。「3Dプリンター」は、3Dデータを元にさまざまな材質で積層成型する製造方法です。これまで実現できなかった機能性形状を持つ製品や、個人の身体にフィットする製品など、新たな製品価値を生み出す可能性を秘めた手法と言えるでしょう。「IoT」は物同士がネットワークで繋がる状態を意味します。IoTの具体的な産業活用例としては、モノやサービスをネットワークで繋ぐ「Industrie 4.0参考5」と呼ばれる取り組みがドイツで行われています。工場内のさまざまな物同士を繋げて会話させることで、自律的かつ最適なコントロールが可能となるでしょう。「状態別メンテナンス」は、センサーによって劣化具合を細かく正確に把握し、状態に合わせて最適なメンテナンスを行っていく考え方です。従来の"5年経ったら部品交換"といった時間管理のメンテナンスと比べて、交換コスト削減と安全性向上が期待されています。デザインイノベーションを通じて高度にIT化された製造ラインが実現されれば、顧客単位にカスタマイズされた製品やサービスが次々と生み出されていくと考えられます。