アイデアソンとは
アイデアソンとは、多様な参加者を一堂に会し、新サービス・製品や、課題に対する解決策を、短時間で出していくワークショップです。参加者に特定のスキルは不要であり、与えられたテーマに対する関心があれば、誰でも参加できることが特長です。
アイデアソンの目的
アイデアソンは、主に3つの目的で開催されます。
- 新サービス・製品検討
新しい技術や、蓄積されたデータ(オープンデータ・企業内データなど)を活用した新サービス・新製品のアイデアを導出する。
- 課題解決
特定の組織や人が抱える課題に対する解決策のアイデアを導出する。
- 教育・組織変革
組織内で行われるアイデアソンでは、アイデア出しのトレーニングや、多様な人々との共創活動にむけた体験のために行われる。
アイデアソンの流れ
今、多く行われているアイデアソンの流れには、いくつかの型がありますが、ここでは著者も実践しているアイデア創発コミュニティが提唱するアイデアソンの流れを簡単に説明します。
- 1.テーマ説明
参加者の方に今回のアイデアソンで扱っていただくテーマについての説明や、必要に応じてアイデア発想のための情報を提供します。
- 2.ブレインストーミング(ペアブレスト)
二人一組になって、アイデアを出し合います。5分1セットで5セット実施します。
- 3.アイデアの可視化(アイデアスケッチ)
個人ワークで、決まったテンプレートにアイデアを書き出していきます。
- 4.良案抽出(ハイライト法)
参加者同士が出し合ったアイデア全てを見て、面白いと思うものに投票をします。
- 5.アイデアの共有(アイデアレビュー)
投票で上位数個に選ばれたアイデアを発表します。
- 6.発展ブレスト
上位に選ばれたアイデアに対しチームを組み、アイデアをブラッシュアップします。
以上のステップをだいたい4時間前後で実施します。
この流れの中には、参加者の創造性を引き出すさまざまな仕掛け --例えば、アイデア出しをする単位のコントロール(ペアでのワーク、一人でのワークを切り替える)や、創造性を増幅させるフィードバック(プレイズファーストなど)、また人間の集中力を極限に高める時間設定などが組み込まれており、どんな人でも大量な良質のアイデアを出しやすくなっています。
アイデアソン成功のポイント
では、この流れに沿って当日アイデアソンを進行すれば、いいアウトプットにつながるか?というとそうではありません。実際に、いいアイデアを出し、そしていいアウトプットにつなげるためには、当日のファシリテーションも重要ですし、またアイデアソンの実施前に検討すべきことが多くあります。ここでは、後者について少し触れます。
アイデアソンの実施前に検討すべき重要な1つ目の項目として「アイデアソンのテーマ」があります。どんな課題を解決するアイデアが欲しいのか?といった、アイデアソン自体のゴールを決め、そしてその中からその時に扱う最適なテーマを、入念に検討する必要があります。アイデアソンやワークショップに対して「たくさんの人を集めてアイデアを出してもらえば、いいアイデアが出るだろう」という思い込みがありますが、良質なテーマ(問い)を設定することで初めて、主催者が求める良質なアイデアを得ることができます。
アイデアソンの実施前に検討すべきもう一つの重要な項目は、「アウトプットの扱い」です。アイデアソンでは最終的にアイデアが数個に絞られることが多いですが、その数個を誰がどのように扱うのか?また、中間時点で出てきた数百のアイデアをどのように利用するのか?など、「アイデアの次のタスクでどう扱うのか?」具体化しておく必要があります。あくまでもアイデアソンは、1つのタスクにすぎません。出てきたアイデアをうまく成果につなげるためには、プロジェクトや既存の業務プロセスの中に埋め込んで活用することが必要です。
教育・育成
ここでは、アイデアソンの当日の運営を行うファシリテーターの育成についてご紹介をします。
研修等で学びたい方向けに、アイデア創発コミュニティが「アイデア創発ファシリテーター講座参考1」として、アイデアソンの中で使う各種ツール等を体験しながら学ぶ研修を提供しています。各手法の裏にある創造性に関する深い知識も得ることができます。(筆者もこれで学びました。)
また独学で勉強されたいという方は、Slideshareなどで、すでにアイデアソン当日の運営に関するノウハウ等は公開されています参考2。また、各所で行われているアイデアソンに参加者として参加することで、ファシリテーターのノウハウを学ぶことも可能だと思います。
NTTデータにおける取り組み
NTTデータでは、今回ご紹介したアイデアソンに取り組んでいます。UX Designや人間中心設計の知見を組み込み、新サービス開発プロジェクト等の中で実施しています。以前の記事注にてご紹介した共創ワークショップと合わせて、継続実施していくことで、さまざまなステークホルダの方々と共創による新たな価値創造を実現していきたいと思います。