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2016.5.12技術トレンド/展望

電力自由化・取引市場拡大と電力フォワードカーブの重要性

電力小売全面自由化が2016年4月1日より開始されました。今回は、規制緩和された電力業界において非常に重要な指標となる「電力フォワードカーブ」についてご紹介します。

電力システム改革と環境変化

前回の記事参考1でもご紹介した通り、資源エネルギー庁は電力システムの改革を推進しています。平成28年4月1日時点で経済産業省によって登録された小売電気事業者は約280社にのぼっており参考2、供給会社のスイッチングをした方もいるのではないでしょうか。では、その小売電気事業者はどこから電気を調達しているのでしょうか。全ての事業者が自社で発電をしているわけではありません。電気の調達にはいろいろな方法があります。

【図】

    図1:電力取引フロー

    • 自家発等:一般事業会社で発電設備を持っている会社など。

    電力小売の自由化によって別業種が続々と参入していますが、従来の業態ベースで大まかに表せば、電力は図1のような流れで需要家に供給されます。それぞれの事業者は、相対取引もしくはJEPX(Japan Electric Power Exchange 日本卸電力取引所)での市場取引によって電力を購入・販売するか、自社から直接需要家へ販売しています。

    では、日本ではどのくらいの電力が市場で取引されているのでしょうか。実は、JEPXでの取引量は、国内の販売電力総量の約2%程度しかありません参考3。電力自由化先進国である欧米の市場では、市場の流動性、市場・商品種類(スポット、先物、オプション、スワップ等)ともに豊富であり、リスクヘッジや収益確保のために市場を活用したパワーマーケティングが積極的に行われています。日本でも電力システム改革に合わせて時間前市場が刷新されたり電力先物市場の新設に向けた検討が行われていますから、小売自由化の背景も相まって今後市場の流動性が増すことが想定されます。

    電力先物市場

    日本の市場取引量が低い理由としては、決済時に現物受渡しが必要(※先渡市場取引では一部差金決済も可能)なため、市場参加者が限定されることなどが挙げられます。そこで登場するのが、電力先物市場です。先物取引は市場価格変動リスクヘッジの場として、特にヨーロッパで広く活用されており、基本的には差金決済で現物の受渡しが行われないことが主な特徴です。

    【図】

    図2:現物取引量に対する先物取引量の比率

    出典:資源エネルギー庁参考4

    • 比率は、2011年の年間先物取引量を年間電力消費量で除したもの。
    • ドイツの比率はオーストリアを含む。
    • アメリカはPJMについて計算。先物取引量は1月、9月、10月のデータが欠落しているため、2012年1月のデータを加え、12/10を乗じた。
    • イギリスの先物取引量にはEndex Futureで扱われているオランダ・ベルギー取引分を含む。

    日本においても、燃料費調整制度や総括原価方式が撤廃され、さらに自由化によって競争が激しくなってくると、透明性の高い将来電力価格の発見やリスクヘッジの場、さらには現物取引を主としないブローカー業務やスペキュレーション目的の投資先などとして電力先物市場のニーズは拡大していくと想定されます。そのような規制緩和が進んだ電力業界で必要とされてくるのが、電力フォワードカーブです。規制緩和先進国の欧米では、フォワードカーブを元に保有ポートフォリオの評価を行いリスク管理やプライシング等を日々行っています。

    電力フォワードカーブとは

    電力フォワードカーブとは、現在時点における将来の電力価格カーブのことを指しており、先述した電力先物市場での活用のみならず電力ビジネスに関わるさまざまなステークホルダーにとって重要なキーファクターとなり得ます。

    電力フォワードカーブの具体的な活用シーン

    • リスクヘッジ:電力先物でリスクヘッジを図る場合のヘッジ効果判断や、デリバティブ商品のプレミアム、キャップ/フロアー価格の判断
    • 調達戦略:市場電力価格の低下予見から、発電所調達量と市場調達量を調整してコスト削減
    • 設備投資/メンテナンス計画:コンタンゴ(期先高)時に発電設備増設、バックワーデーション(期先安)時にはメンテナンスを実施
    • 電源種調整:ベースロード電源の焚き増し、焚き減らし
    • 予算作成:予算ポートフォリオ作成時の想定予算算定や、中長期の経営戦略策定の材料
    • 販売戦略:販売料金設定や新料金メニュー設計時の収益シミュレーション材料
    • 自社モデル検証:自社モデルでのフォワードカーブ算出結果と比較し、妥当性の確認やモデル修正
    • ポートフォリオ評価:現在の保持ポジションに対する将来収益やリスク量の評価

    上述した例は、フォワードカーブを参照・利用してリスク量、収益、コスト等を可視化することがベースとなっています。

    NTTデータ・フィナンシャル・ソリューションズでは、新電力大手のイーレックス社と協業して、電力フォワードカーブ作成ツール【eREX PowerCompass参考5CurveBuilder】をWebサービスとして展開しています。為替価格、原油価格、気温情報などから、イーレックス独自のプライシングモデルを利用して電力フォワードカーブを生成します。日本の電力先物市場は15ヶ月先までのものが検討されており、欧米でも3~5年先までのものが主流となっていますが、本ツールは向こう20年までのカーブが生成できることが特徴となっています。

    電力業界への新規参入が進み、市場の流動性が高まるにつれて、電力フォワードカーブの重要性は益々高まっていくことでしょう。

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