1.歴史的背景 ~生物の進化でみるセンシングの意義と価値~
昨今の熾烈なビジネス競争を生き抜くには、生物進化の歴史にヒントがあると考えている。約40億年前に原始生命が誕生し、その約35億年後(約5億年前)にカンブリア爆発が起こり、生物が進化した。
この生物進化のトリガーの一つと考えられているのが「目」の獲得である。「光」という外界の物理現象の一つを感受できるようになり、世界や自分の状態のセンシングが可能となった。獲物を見つけたり、敵を発見して逃げたり、外界に対してアクチュエートしていく機能を持つことで、生物競争が激化する中で、多種多様な種が生まれ、消えていった。
これは現在のIoT時代におけるヒト・モノ・環境をセンシングするネットワークの発展状態に近いものがある。つまり、現代で生き残るためには、他社が見えない情報をセンシングし(目の獲得)、それを知的に処理し(人工知能の活用)、適切な行動(制御、あるいは経営判断)をとることが必要になる。
そのベースとなるセンシングとして、「人の脳を観る」ことが一つの解だと考えている。
2.ニューロマーケティングへの期待
マーケティング担当の課題として、「アンケートやインタビューによる調査は主観評価のため、データの精度に限界がある」や「記憶に基づく評価のため、動画のリアルタイムな印象や、きめの細かい評価を行うことが難しい」などが挙げられる。
従来のマーケティング手法では、企業・ブランドイメージやメッセージが伝わったかを測るためには、モニターの主観や記憶に依存した評価が中心だったため、多くの企業のマーケティング担当は「消費者がどう受け止めたか」を、より理解することに強い関心を抱いている。
時として消費者自身も気づかない「無意識の印象や選好」を明らかにできるという、脳計測の特徴を活用して脳からアプローチする価値は大きい。
3.「脳情報解読技術」×「人工知能」組み合わせで実用化した世界初サービス『NeuroAI® D-Planner』
脳科学的手法を用いたマーケティング分野への応用手法(ニューロマーケティング)は、国内外でさまざまな取り組みが行われてきた。しかし、空間解像度や得られるデータの豊富さ、実験の内容と実施者のレベル、計測・解析・結果の解釈の科学的妥当性、指標のブラックボックス化など、さまざまな問題点が指摘されてきた。
NTTデータグループでは、情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)のfMRI参考で計測した脳活動パターンから認知内容を解読する技術をベースに、純粋科学として「信頼」でき、かつ最先端の脳情報解読技術を利用して、これまでの調査手法で取れなったリッチな情報を広告主のプロモーション戦略に活かせるサービスとして「NeuroAI® D-Planner」を立ち上げた。
特徴
- CM視聴時の脳活動を計測・言語化することで視聴者の意識・無意識含めた知覚の可視化
- CM制作意図と比較することで従来のアンケートでは測れないGAP把握が可能
- CM効果に、クリエイティブの何が寄与しているか、または何を改善するべきか示唆する情報を提供
これまでなかなか定量化できなかった「広告の質」、つまりクリエイティブの側面を、脳情報を観ることで客観的に可計測化し、それに基づいた改善や次期宣伝戦略の立案を行っていくという、マーケティングコミュニケ―ションのPDCAサイクルの改善支援を目指して取り組んでいる。
4.人理解のテクノロジーでビジネス価値の飛躍的な向上を
今後、あらゆる事業領域で、脳科学を応用した「人理解」のテクノロジー「ニューロテック」の活用が進み、それがビジネス価値向上へとつながっていく。なかでも、ニューロマーケティングは、企業のマーケティング活動や意思決定には欠かせない新たな情報元を提供するでしょう。NTTデータはこのニューロマーケティングの先駆けとして、脳科学を社会全体の問題解決と質向上に役立てていきます。
参考文献
- 参考functional Magnetic Resonance Imaging(機能的核磁気共鳴画像法)脳の酸素血流量の変化を捉える測定方法
- NeuroAI® D-Planner(外部リンク)
- 「NeuroAI® D-Planner」はNTTデータの登録商標です。